空間を空間で表現すること
皆さんコメントありがとう.前回のエントリーの続き.
いくつかはっきりした点.どうも僕自身が,「建築」「美術」「美術館」という制度にこだわりすぎていることがわかった.それと,前回のエントリーは何も「谷口展」を擁護しようという目的ではなく,そもそも建築展というものが,なぜ,またはどのように存在するのかを考えてみようと思っただけ.
mosakiさんたちの《来場者の種類に関わらず建築展なるものは,その対象となる建築・建築家の空間・思想・背景……∞がそこへ空間として表現されていてほしい》《建築展は,子供から老人まで,ユニバーサルに受け入れられるような,建築に対する意識をより拡張させられるような,そんな意識を必ず持っていてほしい》という定義を聞くと,その意味で「谷口展」への批判が行われたことはよく理解できる.しかし,この両者を同時に満たすことを必要条件だとすると,その展示に建築家自身が直接的に関与することは難しいだろう.
前者の定義で気になることは,《空間として表現されていてほしい》という点.sugawaraさんの《インスタレーション系への移行》というのも同じような意識かもしれない.しかし,僕自身はこの点には少し懐疑的.mosakiさんの定義では,建築そのものが空間であるとするならば,それを更に空間に置換し直すことを要求することになる.もちろん,空間で置換することを否定するわけではないけれど,もう少し違った形に変換するべきではないかと思う.実際に見ていないからなんともいえないけれど,1つの例かもしれないOMA展は,空間というよりもテキストをつくっているように思う.一方で,《模型が実作よりも建築家の理想世界を表す》という文脈であれば理解できなくもない.しかし,この場合は展示そのものが(建築)作品であるということだろうから,少し文脈が異なる.《建築に対する視点が,対象視から環境視に移行している》というのもおもしろい指摘だけれど,mosakiさんの定義はそれとは異なる背景にあるだろう.どちらかというとmosakiさんが紹介しているFOA展が,この移行を象徴しているのではないだろうか.
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建築 | Posted by satohshinya at June 21, 2005 7:26 | Comments (4) | TrackBacks (0)
STAR WARS episode III
『スター・ウォーズ シスの復讐』が,先々行オールナイトとして6月25日に公開.既に公開中のアメリカでの評判は,V→IV→III→VI→II→I.『帝国の逆襲』『新たなる希望』に続くならば期待は十分.
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recommendation | Posted by satohshinya at June 21, 2005 6:03 | Comments (3) | TrackBacks (1)
1000000人のキャンドルナイト
「1000000人のキャンドルナイト」が18,19,20,夏至の21日に行われます.20時から22時まで,電気を消して,ロウソクの灯りで過ごしましょう.
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recommendation | Posted by satohshinya at June 17, 2005 23:21 | Comments (1) | TrackBacks (1)
建築展における困難
hanaさんの「怒髪点!〜MoMA谷口吉生のミュージアム」を受けて.hanaさんの怒りはよくわかる.しかし,それではいかなる建築展であるべきだったのか?
NY展と日本展について,その企画はMoMAのテレンス・ライリー氏と谷口氏によるもので,展示構成に至るまで完全にコントロールされたはずだから,もしこの怒りがオペラシティのキュレーターに向けられたものだとするならば,それはお門違いではないだろうか? むしろ怒りは,この2人に向けられるべき.その意味では,個人的な感想としては,よくも悪くも非常に谷口作品的な展示であったと思う.《建築展に来るようなひとは谷口さんの仕事,知ってるっつーの.》という前提に立つか立たないかが,まずは大きな違いだろう.おそらく2人はその前提に立っていない.《NYと同様,谷口さんをあまり知らないひとが多く見に来るという想定》だったろう.
そこで,疑問の1つ目.そもそも建築展は誰が見に行くの?
今はどうだか知らないが,今はなきセゾン美術館で建築展をやっていた頃,通常の美術展よりも建築展の方が来場者が多いと聞いたことがある.美術展の場合は対象者の興味が美術に限られてしまうが,建築展の場合はデザインや美術などに興味を持つ人も含めて幅広く見に来る可能性があるらしい.そうだとすると,建築家の仕事を知っている人が来るという前提は疑うべきではないだろうかと思う.しかし,本当に誰が見に行ってるのか?
2つ目の疑問.《建築展における新鮮な情報,新鮮な視点,新鮮な展示方法》とは?
今回の谷口展に関していえば,元々がMoMAの企画.彼らは建築に関する模型やドローイングを美術品だと考えている.確かにMoMAの建築コレクションは美術品的な価値がある(歴史的評価を抜きにしても).これらを美術品としてそのまま展示するという方法.例えば森ビルの展示.かつてのセゾンにおけるコルビュジエ展,アアルト展などもこれ.
その対極にあるのが,建築家が美術作品を作ってしまうもの.例えばみかんぐみの展示.建築家が空間を扱う職業であることを考えると,そのバリエーションとしてインスタレーション作品を作ってしまうのはよくわかる.クルト・シュヴィッタースの『メルツバウ』が最初のインスタレーション作品と言われていて,そもそもインスタレーション自体が建築的な行為であったということを示している.
そして,《建築展における新鮮な情報,新鮮な視点,新鮮な展示方法》を目指したであろうもの.図面とドローイングを展示用に再製作・再構成するもの.例えば金沢でのSANAA展(写真は長尾亜子さん提供.コンペ当選案の1/20模型).

ギャラリー間などの建築専門ギャラリーでは,この手のものがよくある.1つ目のヴァリエーションかな?
更にこの場合は,建築家としてのマニフェストへと発展することが多い.例えばOMA展.模型やドローイングを美術品にするわけでもなく,展示自体を空間的な作品にするわけでもない.強いて言うならばコンセプチュアル・アートみたいなもの.2つ目のヴァリエーションかな?
そして,最後の疑問.そうまでして,なぜ美術館で建築展は開かれなければならないのか?
誰か一緒に考えてください.
建築 | Posted by satohshinya at June 10, 2005 10:29 | Comments (6) | TrackBacks (3)
同じ都立だけれどこっちの方がよっぽど現代美術館
「超(メタ)ヴィジュアル」(東京都写真美術館)を見た.写美の地下にある映像展示室でやっているのだが,この場所が時々意外な展示を行う.美術館の名前は写真だが,このフロアでは映像に関係する作品が展示される.先日もOTAKU展が行われたばかり.今回は開館10周年記念による特別展としてコレクションが展示されているのだが,その辺(例えば東京)の現代美術館よりもよっぽど質の高い作品が集められている.
岩井俊雄氏の『時間層2』は何度も見たことのある作品だが,やはりすばらしい.最初期の作品でありながら,非常に高いレベルで完成している.もう1つの岩井作品(題名忘れた)は立体視による作品で,これも気持ちよい.名和晃平氏の作品も気持ちよい(というより気持ち悪い).名和氏の作品は,先日見学に行った竹中工務店東京本店新社屋のエントランスロビーにもあったのだが,どうせならこちらを置いてほしかった.竹中の作品はつまらない.minim++の『Tool's Life』も楽しい.ほとんどふざけた作品しか作らないタムラサトル氏の近作もある.石野卓球氏の『The Rising Suns』のプロモーションビデオ(田中秀幸氏)も,ついつい見とれてしまう.他にもiPod photoを用いた作品として,何人かの作家のアニメーション作品が展示されている.新しい使い方だ.その中に,なぜか舞城王太郎氏の例の山手線漫画が全て収められている.山手線以降のものも含まれていて,55枚(?)による大作として(多分)完成している.本屋で直筆の絵を見て回るのも楽しかったが,iPod photoをクルクル回しながら小さい画面で見るのもまたふざけていておもしろかった.
この展示は今週末までが前期で,部分的に展示替えをして後期が開催される.行っても損はない.
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美術 | Posted by satohshinya at June 2, 2005 6:37 | Comments (1) | TrackBacks (0)
矢内原美邦・金森穣
ニブロール主宰である矢内原美邦氏のプロジェクトを2つ.ニブロールは,前に東浩紀氏が絶賛していて見に行ったことがある.荒削りながらも確かにおもしろかった.
『public=un+public』
映像の高橋啓祐氏とのユニット「Off Nibroll」による公演.ここでは動画を見ることもできる.今日から29日まで.
『3年2組』
個人プロジェクト「MIKUNI YANAIHARA Project」の第1弾であるエンゲキパフォーマンス.先日完成した吉祥寺シアターにて.
Noism05芸術監督の金森穣氏もプロジェクトが2つ.過去のNoism作品のエントリはこちら.
『Triple Bill』
Noism05の新作.今回は金森氏ではなく,3人の振付師を招いて行う新しい試みによる公演.また,冬のツアーも発表された.
『金森穣 ノマディック・プロジェクト2』
こちらはNoism05の出演ではなく,「ザ・フォーサイス・カンパニー」の安藤洋子氏をはじめとする様々なダンサーを集め,金森氏自身も出演するプロジェクト.やはりこちらの方がお薦めか?
recommendation | Posted by satohshinya at May 27, 2005 10:10 | TrackBacks (1)
阿部初美
『エルドラド』
『クァクァ』をやった阿部初美さん演出によるドラマ・リーディング.鈴木理江子さんも出演します.これも「日本におけるドイツ2005/2006」の関連企画.
《ドイツで注目を集めている若手作家,マリウス・フォン・マイエンブルクの『エルドラド』(2004年ドイツ初演)という作品です.舞台はイラクやアフガンを思わせるような紛争地域に,再開発で利益を得ようとやってきた人物たちの話.今,世界で何が起きているのか,人間にとっての幸せや欲望とは何なのかなどを考えさせられるような作品です.》
recommendation | Posted by satohshinya at May 26, 2005 21:51 | TrackBacks (0)
荒々しいリアリティ
「シュテファン・バルケンホール:木の彫刻とレリーフ」(国立国際美術館)を見た.日本ではあまり馴染みのない作家だが,僕はフランクフルトのMMKで偶然見たことがある.それ以来,興味を持っていた作家だったが.まさかこんなにまとまった個展を日本で見ることができるとは思わなかった.「日本におけるドイツ2005/2006」の関連企画ということで実現したらしい.
主な作品は木彫による人物像であるのだが,舟越桂氏の作品が洗練してゆくのに対し,バルケンホール氏の作品はとても荒々しい.それなのに,妙なリアリティが存在している.その絶妙なバランスを持っていることが,これらの作品を魅力あるものにしているのだろう.
喜び勇んで大阪で見たわけだが,実は10月から東京でも開催される.ぜひ見に行ってほしい.ちなみに,大阪の美術館は最悪だった.東京の方がまだましかな?
美術 | Posted by satohshinya at May 18, 2005 7:39 | Comments (2) | TrackBacks (0)
テナントビル
明日まで内藤礼氏の個展「地上はどんなところだったか」がギャラリー小柳で開催されている.以前は同じビルの1階にあったギャラリーが,知らないうちに8階へ移動していた.実は1度見に行ったのだが,1階が別の店舗になっていたため,ギャラリーごと移動してしまったと思い帰ってきてしまった.その後によく調べてみたら,同じビルの中で引っ越しをしていたらしい.
以前のギャラリーも,銀座の大通りからそのまま入ると真っ白な空間があるというミニマルで不思議なものであったが,それよりも今回のギャラリーの方がかなりよい.当たり前のテナントビルを改装しただけなので,特別に天井の高さがあるわけではない.むしろ横に広がりのある展示室が気持ちよい.下地を剥き出しにした床や柱と,真っ白にはめ込んだ壁や天井のバランスもよい.照明も壁際に蛍光灯と白熱灯のレールがきれいに並んでいる.誰が設計したんだろう?
内藤礼氏の作品は,相変わらずの非常に繊細な作品.その分,ちょっと展示空間が強すぎるので,うまく噛み合っていないような気もする.もう少し作品に合わせた繊細な空間か,普通の美術館のような無個性な空間の方が,作品が際立つように思う.何れにしても見て損はない.
美術 | Posted by satohshinya at May 13, 2005 7:34 | Comments (4) | TrackBacks (1)
三島賞の文庫
三島賞受賞作2冊の文庫が出た.中原昌也氏の『あらゆる場所に花束が……』と舞城王太郎氏の『阿修羅ガール』.
中原氏の作品はまだ読んだことがないが,これは受賞当時からの話題作.単行本の怪しい中原氏による装丁画が変わってしまっているのが残念.
『阿修羅ガール』は舞城氏の作品の中では中くらいの出来.まあ,気持ちは分かるけど,やや構成を意識しすぎていて破綻が少ない.こちらも単行本の佐内正史氏の写真から,山口藍氏の絵に変わって,大分雰囲気が変わっている.『世界は密室でできている。』(こちらは舞城氏の装丁画)に続いて文庫化が相次ぐ舞城作品だが,『阿修羅』には,単行本に入っていない短編も併載されている.というわけで,こちらで読むことをお薦め.
他にも三島賞受賞作には,青山真治氏の『ユリイカ EUREKA』もある.ご存じのとおり,青山氏自身が監督した映画の小説化だが,なかなかおもしろい.そうえいえば,3氏によるこんな本もある.
本 | Posted by satohshinya at April 26, 2005 6:44 | Comments (2) | TrackBacks (0)
