これは一級品@riehen

DSC08433.jpg

クレーの美術館ではさんざん文句を書いたけれど,この美術館は違った.「Fondation Beyeler(バイエラー財団美術館)」は1997年に開館したレンゾ・ピアノの設計による一級品.特に自然光を採り入れる全面光天井については,よくやっているの一言ことに尽きる.

「アート・バーゼル」開催中のバーゼルは「Art City Basel」と銘打ち,どこの美術館も通常とは異なる開館時間が設定されていて,ここも毎日20時まで開館していた(通常は水曜日のみ).有意義に時間を使おうと閉館間際にここを訪れたのだが,それが失敗だった.実際に訪れたのは19時過ぎで,もちろんヨーロッパの夏はそのくらいの時間でも十分に明るいのだが,この美術館の本当の醍醐味を味わうためにはやはりもう少し日の高い時間に行くべきだったと思う.そんな時間であったが,マニアックな天井のおかげで形容しがたい薄らぼんやりとしたホワイトキューブが生み出されていて,近代美術の展示には相応しい展示空間だった.コレクションも一級品ばかり.特にジャコメッティや,真っ白い空間に展示された真っ白なアルプ(だったと思う)の作品など,彫刻の展示におもしろいものがあった.企画展はマティスの「Figure Color Space」展.さすがによい作品が並んでいる.
強いて文句を書くならば,やや建物が長いために,全てがこの光天井システムであったとしても単調さを回避することができていない.妻側の庭が見える場所は特徴的な展示室となるが,それ以外は天井高が一定のため,部屋の広さを変えるくらいしかできることがない.調べたところによると,展示点数の増加により2000年に12メートル分の増築を行っているそうで,もしかするとその分が余計に建物を長く感じさせているのかもしれない.
展示室だけでなく,美しい庭園が拡がる周囲にも見事な佇まいを見せている.一方で想像以上に近接していた前面道路に対しては,豪邸を囲む閉鎖的な壁(塀)が延々と続いてしまっており,それが残念であった.また,塀や建物自身に用いられている赤っぽい石だが,柱にまで貼っているマニアックなディテールはともかく,訪れるまでは正直言ってそれほど魅力的な素材には見えなかった.しかし実際に訪れて通り沿いに周辺を歩くと,地元産なのだと思うが,そこかしこに同じ石が使われていることがわかる.その延長として通りに面する塀があると思うと少し納得できる.
ちなみに「バイエラー」と「ヴィトラ」とバーゼルは三角形の位置関係にあるが,2つの美術館も下記のようにバス(要乗換)で連結している.
・Vitra Design Museum → Fondation Beyeler
  at 9:47, 10:47...
   Weil (Vitra) Bus 55 → Weil (Läublinpark)
   Weil (Läublinpark) Bus 16 → Riehen (Weilstrasse)
  at 10:30, 11:30...
   Weil (Vitra) Bus 12 → Weil (Marktstrasse)
   Weil (Marktstrasse) Bus 16 → Riehen (Weilstrasse)
・Fondation Beyeler → Vitra Design Museum
  at 9:57, 10:27, 10:57, 11:27...
   Riehen (Weilstrasse) Bus 16 → Weil (Läublinpark)
   Weil (Läublinpark) Bus 55 → Weil (Vitra)

美術 | Posted by satohshinya at August 12, 2006 2:14


TrackBacks




Comments

「バイエラー」を再訪問.「Eros - Rodin und Picasso」展が開催中で,真っ赤に塗った展示壁面の使用が印象的だった.
増築について建物を子細に調べてみたけれども,それらしい跡が見つからなかった.本当かな?

Posted by satohshinya at November 21, 2006 11:15 PM