ジャコメッティ兄弟@paris

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10年以上前にはじめてパリへ行ったとき,マレ地区を散歩していて「Musée National Picasso(ピカソ国立美術館)」に出くわした.何の予備知識もなく,ガイドブックも持たずにパリへ来ていたため,こんな辺鄙なところにもピカソの美術館があるなんて,さすがにパリだなと感心したことがある.更に館内に入り,展示されていた作品のすばらしさに圧倒されてしまった.帰国してから,それがパリでも有名な美術館であることを知った.

ここも17世紀の館を機能転用しており,ロラン・シムネの改修により1985年にオープンした.2階から入り,展示室内のスロープを上がった3階が企画展示室.「Picasso / Berggruen Une collection particulière」展を開催中で,コレクターHeinz Berggruenのコレクションを紹介していた.下階は常設展示で,制作順にピカソの名作が並んでいる.順路は2階からはじまり,いかにも邸宅の居室といった雰囲気の展示室(第4室)に初期の作品が並ぶ.続く1階はやや天井の低い展示室(第9室)があって,中庭のようなスペースにガラス屋根を架けた大きな展示室(第12室)に出る.1階でも企画展「Picasso Xrays」展を開催中で,タイトル通りピカソの立体作品のX線写真を展示していた.企画展示室を含め,部分的に壁面が艶ありの白色であったことが印象的だった.床に艶がある美術館は少なくないが,壁に艶があるのはおもしろい.
しかし,この美術館の一番の見所は地下にある.ヴォールト天井を持つ石の壁に囲まれた展示室(第16室)に,中期から後期の作品が並んでいる.最初の訪問の記憶でも,この展示室のことだけははっきり覚えている.天井は高いどころかむしろ低く,部屋の中央に柱が何本も立っていて,まったく展示室には向いていないように思えるのだが,なぜか印象深い展示室が成立している.どんな作品にも似合うわけではないだろうが,自然光もなく(多少入っているが),巨大なボリュームもなく,ホワイトキューブでもない展示室の1つの可能性を示しているように思える.(参考リンク:平・断面図常設展示室の全パノラマ,美術館紹介照明の解説
ふと常設展示室に吊されている照明が気になった.線で構成された彫刻のような照明が非常によいと思っていたら,これがジャコメッティの作品であった.開館の際に,イスやテーブルとともにジャコメッティが設えたらしい.ここでまたも勘違いをしていたのだが,ジャコメッティという名前を見て,てっきりアルベルト・ジャコメッティだと思っていたら,後からよく調べてみると弟のディエゴ・ジャコメッティの作品であることがわかった.兄の助手やモデルを務めるとともに,家具の製作者でもあったらしい.10数年前と同様に,またもや無知であったというところか.

美術 | Posted by satohshinya at January 11, 2007 0:26


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Comments

いつもPARIS特集読ませてもらっています。
どこかのガイドブックより詳細な情報がたくさんあっって、住人である僕が参考にさせてもらっています。

独逸に住んでいながらも、欧州での慎也さんの興味の中心が巴里にあるというのが面白いですね。
巴里建築ガイドとか沢山あるので、改修に絞った巴里ガイドでも作ってみましょうか?

Posted by sugawara at January 11, 2007 8:54 AM

特にパリが興味の中心というわけではないですが,確かに書くべきいろいろなものがあることは確かだし,特にしっかりと改修したものが多いことも事実ですね.
「巴里改修ガイド」ぜひ作ってみてください.

Posted by satohshinya at January 12, 2007 2:24 PM