ウィンドウショッピング@basel

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ようやくバーゼル編に突入.世界的なアートフェアである「Art 37 Basel(アート・バーゼル37)」に行く(気の早いことにwebは既に来年の情報を掲載中).会場は「Messe Schweiz」の2つの展示場.基本的にはお金持ちがアートを買いに来る見本市を,入場料を支払って一般の人々がウィンドウショッピングするというもの.

日本にも同様なアートフェアとして「アートフェア東京」(かつてはNICAFという名前だった)があって,会場内も同じように大きなメッセ空間を壁で細かく仕切ったブースが並んでいるだけなので,一見すると同じような雰囲気に思える.しかし,展示されている作品の質が高いことと,それを本気で買いに来ている人たちが半端でないほどお金持ちに見えることが決定的に異なっている.だからこそ世界中のギャラリーから最新の作品が集まってきて,それを見るだけでアートの最新動向がわかるということになるらしいが,会場があまりにも広いために見ているだけでクタクタになる.もちろん商売がメインであるのだから商品がよりよく見えることも考えていると思うが,同時に少しでも多くの商品を並べる必要もあって,最適な環境で作品を鑑賞するなんていう状況からはほど遠い.ちなみにこのギャラリーが並んでいたのがHall2で,Hans Hofmann設計により1954年にオープン.
もう1つの会場であるHall1は,Theo Hotz設計により99年にオープンしたもの.ここでは「Art Unlimited」展をやっていて,ブースに納まらない巨大な作品が並べられていた.これも売ってるものなのかも知れないけれど,美術館以外に誰が買うのだろうかという代物ばかり.インスタレーションやメディア・アートが多く,作品毎に壁で仕切られた部屋を持つか,部屋と部屋の間の通路に面して展示されているかのどちらかで,雰囲気としては横浜トリエンナーレ(特に1回目)のような感じ.つまり囲われたホワイトキューブを必要とする作品と,囲い込まれた場を必要としない自立した作品に分けられていて,やはりメディア・アートは囲い込まれた単なる暗い部屋が用意されていた.残念ながら「アート・バーゼル」だからといって特別な展示方法が採られているわけではなかった.よい作品も中にはあったが,共通したテーマや場所との関係といったコンテクストが全くなく(商品を並べているだけだから当たり前だけど),ただ脈絡もなく作品が並んでいるだけなのも残念だった.その中に石上純也氏のテーブルが展示されており,日本人建築家の作品であったためか,後でこの作品を見た人たちからいろいろと質問を受けた.さすがに話題となっていたようだけれども,これってアートなのかな?
屋外展示まであって,写真の噴水もパブリック・アートの1つ.さすがに話題のアートフェアなので,いろいろと報告記事・写真も多いので関連リンクを紹介(京都造形大の研修報告Unlimitedの報告女性起業家の報告お金持ち向けの情報).
ちなみに会場となったメッセは2012年に向けてH&deMが再編成を行うようである.バーゼルには彼らの事務所があり,お膝元だけあって大きな仕事だ.完成したらすごいもの(悪い意味で)になりそう.

美術 | Posted by satohshinya at August 3, 2006 13:28


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» Art Unlimited from フランスアート界底辺日記
Excerpt: 今回はART BASEL 2006の企画のひとつ、Art Unlimitedのレポート。 Art Unlimitedとは、ART BASEL...

Tracked: August 13, 2006 6:47 PM




Comments

NICAFはいったことあったので
アートバーゼルもいってみたいです。
美術の文化的価値と価格という経済価値が
パラレルに存在する場所として興味がそそられます。
「お金持ちの情報」というのが笑えます。

へぇ、これぐらいの値段なのか?
買えないな、というか買わないな(笑)
みたいなノリで楽しめそう。

テーブルはアートではないですかね?
個人的にはアートだと思ってました。
でもなんか隙間うまくつついている感じが
うまいなと思います。

Posted by hy at August 4, 2006 4:38 AM

テーブルについては作品を見る前に,構造的な仕掛けと作者が建築家であることを知っていたこともそう思った要因かもしれないけれど,やっぱり家具デザインだろうと思ってる.
アートの定義については難しいけれど,このテーブルを見ると,どうしてこのようなものが成立しているのだろう? どのような仕掛けになっているのだろう? といった疑問は生じるけれども,これを見た後に自分や周囲の環境に対して考え方が変わったり,見え方が変わったり,そういった働き掛けはしてくれなかった.
このテーブルが機能的がどうかというのももう1つのポイントかもしれないけれど,これでも十分にテーブルとして使えるよね? そう考えるとこれは十分に家具デザインとして成立していて,むしろ非常に優秀な家具(建築)デザインに思えてしまう.
まあ,確かに隙間を突いているという気もするけれど.

Posted by satohshinya at August 7, 2006 10:58 AM