対称@frankfurt

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「Liebieghaus Skulpturensammlung(リービークハウス彫刻コレクション)」は古代彫刻を展示する美術館なのだが,興味深い2種類の展示室を持っていた.ここも1896年に邸宅として建てられた建物を1909年から美術館として使用している.

エントランスホールに入ると左側に開館時に増築された展示室があり,そこにはフローリングの床に木で作られた彫刻だけが並んでいる.右側には,最初の展示室とシンメトリーな関係に1990年にScheffler & Warschauer設計によって増築された展示室があり,そこには石貼りの床に石で作られた彫刻だけが並んでいる.何れの展示室も壁は真っ白く,天井からは自然光が入り,そんな空間に無造作にいくつもの作品が並んでいる様は,まるで現代美術のインスタレーションにすら見える.
やや短絡的なアイディアではあるし,たまたまシンメトリーに建てられる敷地があったということかもしれないが,おもしろい展示空間だった.林立する作品群が鑑賞する場としてふさわしいかどうかはわからないし,同じ素材の作品だけが並ぶことがよいのかどうかもわからないが,このような彫刻を展示する美術館としては非常におもしろいのではないだろうか.企画展は「Die phantastischen Köpfe des Franz Xaver Messerschmidt」展を開催中(作品・展示室写真英文プレスリリース).

美術 | Posted by satohshinya at January 17, 2007 13:31 | TrackBack (0)

普通の邸宅@frankfurt

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まさに邸宅をそのまま美術館に改装している「Museum Giersch(ギエルシュ美術館)」は,それほど特徴のない美術館だった.

1910年頃に建てられた邸宅を用い,2000年に開館した比較的新しい美術館.ライン・マイン地域のアートを対象としているだけあって,展示してある作品も地元作家によるものといった風情で,特筆すべきところがない.1階は邸宅をそのまま使っているようで(パーティーに貸し出していたりもする),2階から4階までの企画展示室はさすがに床がフローリング,それ以外は真っ白な展示室となっているのだが,なんだかきれいすぎて素っ気ない.おまけに展示照明は人感センサーに反応して点灯するようになっていたりする.「Marie-Louise von Motesiczky」展を開催中.作品を保護するためか窓にはシャッターが閉まっていたり,そういったことも含めて,元の空間を生かした展示空間となってはいない.古い邸宅を改装すればどんなものでもよい美術館になる,というわけではないようだ.

美術 | Posted by satohshinya at January 14, 2007 16:01 | TrackBack (0)

中央に位置する不思議な展示室@frankfurt

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フランクフルトにはマイン川沿いにミュージアム通りと呼ばれる通りがあって,10館もの美術館・博物館が並んでいる.その中で最も大きなものが「Städelsches Kunstinstitut und Städtische Galerie(シュテーデル美術館・市立美術館)」である.

クラシカルでシンメトリーな外観の建物に,やはりシンメトリーな展示室が拡がっている.2階に19,20世紀の作品,3階に14〜18世紀の作品とさまざまな年代の作品が展示されている.1817年設立,78年に現在の位置に移転したが,第二次世界大戦の被害に遭い,1963年にJohannes Krahn設計によって再建された.その意味では特別に古い建物というわけではない.展示室はフローリングまたは黒い石,壁はさまざまな色に塗られているヨーロッパでは典型的な美術館.中央の階段を上がると,真っ青に塗られた壁に絵が架けられており,展示室とも思える不思議なスペースに入り,そこから各展示室へと分かれていく(階段室写真).美術館の後方側面にはグスタフ・パイヒルにより1990年に増築された企画展示室が増築され,2階の展示室で接続しているのだが,展示替えのために使用されていなかった(おそらく増築部分の展示室写真).写真は裏庭で,右が本館,正面が増築.(参考リンク

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2つの企画展が常設展示に挟み込まれるように行われていた.「Fokus auf Jan van Eyck: Lucca-Madonna」展は,アイクのただ1点の絵にフォーカスを当てたもの(作品・展示室写真).「Martin Kippenberger: Arbeiten bis alles geklärt ist - Bilder 1984/85」展は,97年に夭折し,近年テート・モダンで回顧展が開かれるなど注目されているKippenbergerの個展(作品・展示室写真).といっても展示されていたのは84,85年に描かれた数点の作品だけで,あまりおもしろいものではなかった.Kuppelsaalと呼ばれるドーム状のトップライトを持つ中央の展示室で行われていたのだが,ここもまた円形に下へ吹き抜けているロビーのような空間であった.そのためか作品に集中しにくく.展示室としてはちょっと不思議なスペースだった.
この美術館の裏にはStaatliche Hochschule für Bildende Künsteという芸術学校があって,かつでピーター・クックが教鞭を執っていた際に設計したガラス張りの学食があるらしい.現在は,ベン・ファン・ベルケルが学科長のようだ.

美術 | Posted by satohshinya at January 14, 2007 0:32 | TrackBack (0)

おいしいデザート@heidelberg

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「Heidelberger Kunstverein(ハイデルベルク・クンストフェライン)」はDieter Quast設計により,1990年に「Kurpfälzischen Museums(クアプファルツ博物館)」と一体の建物として作られた.旧市街の中央通りに面した元邸宅,現博物館の入口を潜り,中庭を通り抜けた先に建つ建物の左部分がクンストフェラインである.

博物館と共通のエントランスを通り,受付カウンターも含まれるHalleと呼ばれるメインの展示空間に入る.ここでは「Politsche Wahrheiten」展(フライヤー)が開催中.Halleのロフト状の2階からブリッジで渡るPlattformという小型スペースでは,「100 Tage=100 Videos」展(フライヤー)と題して100日間で100本のビデオ作品を日替わりで上映していた.地下にもStudioという展示空間があるが,展示替え中で入ることができなかった.70年代的と思えるようなデザインの展示空間は,天井や壁面にもガラスを多用している.自然光が降り注ぎ,天井の高さも高い現代美術向きの空間ではあるのだが,サッシが太く,ブリッジのデザインも野暮ったい.Plattformという小展示スペースもおもしろい試みだが,スペースのデザインに工夫がほしい.中庭の雰囲気はとてもよいのだが,展示室のガラス壁面は外部と特に関係を持っていない.つまりはあまり感心しない美術館だったが,中庭にあるレストラン(のデザート)はとてもおいしい.(参考リンク:図面レストラン紹介
ちなみにクアプファルツ博物館は,考古学の展示とともに絵画の展示も行う美術館とも呼ぶべき場所である.写真はハイデルベルク城.

美術 | Posted by satohshinya at January 11, 2007 19:01 | TrackBack (0)

ジャコメッティ兄弟@paris

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10年以上前にはじめてパリへ行ったとき,マレ地区を散歩していて「Musée National Picasso(ピカソ国立美術館)」に出くわした.何の予備知識もなく,ガイドブックも持たずにパリへ来ていたため,こんな辺鄙なところにもピカソの美術館があるなんて,さすがにパリだなと感心したことがある.更に館内に入り,展示されていた作品のすばらしさに圧倒されてしまった.帰国してから,それがパリでも有名な美術館であることを知った.

ここも17世紀の館を機能転用しており,ロラン・シムネの改修により1985年にオープンした.2階から入り,展示室内のスロープを上がった3階が企画展示室.「Picasso / Berggruen Une collection particulière」展を開催中で,コレクターHeinz Berggruenのコレクションを紹介していた.下階は常設展示で,制作順にピカソの名作が並んでいる.順路は2階からはじまり,いかにも邸宅の居室といった雰囲気の展示室(第4室)に初期の作品が並ぶ.続く1階はやや天井の低い展示室(第9室)があって,中庭のようなスペースにガラス屋根を架けた大きな展示室(第12室)に出る.1階でも企画展「Picasso Xrays」展を開催中で,タイトル通りピカソの立体作品のX線写真を展示していた.企画展示室を含め,部分的に壁面が艶ありの白色であったことが印象的だった.床に艶がある美術館は少なくないが,壁に艶があるのはおもしろい.
しかし,この美術館の一番の見所は地下にある.ヴォールト天井を持つ石の壁に囲まれた展示室(第16室)に,中期から後期の作品が並んでいる.最初の訪問の記憶でも,この展示室のことだけははっきり覚えている.天井は高いどころかむしろ低く,部屋の中央に柱が何本も立っていて,まったく展示室には向いていないように思えるのだが,なぜか印象深い展示室が成立している.どんな作品にも似合うわけではないだろうが,自然光もなく(多少入っているが),巨大なボリュームもなく,ホワイトキューブでもない展示室の1つの可能性を示しているように思える.(参考リンク:平・断面図常設展示室の全パノラマ,美術館紹介照明の解説
ふと常設展示室に吊されている照明が気になった.線で構成された彫刻のような照明が非常によいと思っていたら,これがジャコメッティの作品であった.開館の際に,イスやテーブルとともにジャコメッティが設えたらしい.ここでまたも勘違いをしていたのだが,ジャコメッティという名前を見て,てっきりアルベルト・ジャコメッティだと思っていたら,後からよく調べてみると弟のディエゴ・ジャコメッティの作品であることがわかった.兄の助手やモデルを務めるとともに,家具の製作者でもあったらしい.10数年前と同様に,またもや無知であったというところか.

美術 | Posted by satohshinya at January 11, 2007 0:26 | Comments (2) | TrackBack (0)

コピー&ペースト@vaticanæ

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「Musei Vaticani(バチカン美術館)」には13の美術館が複合しているそうだ.更にシスティーナ礼拝堂などの14の部屋が含まれる.何も情報を持たずに訪れたのだが,その迷宮のような館内にいささか参ってしまった.ルーヴルでは館内の案内図が無料配布されているため,それに従って必要なところを見学することができた.しかし,ここにはそのようなものはなく,全体像を把握することができないまま,館内表示板だけを頼りにさまようしかなかった.もちろん,最初から全体を回ることはあきらめていて,主な目的はシスティーナ礼拝堂であったのだが,これが入口からもっとも遠い場所にあった.今更ながらwebを見ると,そのことがよく確認できる.

残念ながら,この美術館に展示されている作品を正しく鑑賞できたわけではないので,今回の話題は2つだけ.退館時に下ってゆくダブルスパイラルの階段がある(参考リンク:動画あり).エントランスが最近改修されたそうなので,てっきりこれも新しいものだと思っていた.なぜならば,このスパイラルと見上げたトップライトが,あまりにもライトの「グッゲンハイム美術館」(1959)に似ていたからだ.なんだか質の悪いポストモダン建築のように思えてしまった.しかし調べてみると,そうではないことがわかる.この階段はGiuseppe Momoによって1932年に作られたものらしい.つまり,こちらの方が先に作られていたようだ.更に調べると,こんなページも見つかった(続きもある).
そしてシスティーナ.ご存じのように礼拝堂にはミケランジェロによる天井画と壁画がある.礼拝堂の空間と作品が一体となったインスタレーション,なんてことを期待しながら見に行ったのだが,礼拝堂に描かれた天井画と壁画という関係以上のものではないように思えた.むしろ見事に修復されてしまった作品は,時代を感じさせてくれないほどに鮮やかすぎるように見えた.それよりも,「システィーナ」とググってみると,ここがトップに表示されるのが笑える.ここには3/5という半端なスケールによってシスティーナ礼拝堂が再現されているそうだ.ハラミュージアムアークに行く際に何度も前を通るのだが,1度も入ったことがない.今度入ってみようかな? 更に日本人による飽くなき探求は続いているようで,ここでは実際のスケールの礼拝堂を,しかも陶板画により作り出そうとしているそうだ.その意味では,これらの作品が礼拝堂の空間と切り離せないものとして認識されているとも言えるのだが,はたしてどんなものだか.

美術 | Posted by satohshinya at December 19, 2006 23:08 | TrackBack (0)

巨匠の美術館@firenze

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フィレンツェには多くのフィリッポ・ブルネレスキによる建築があって,ファサードの連続アーチが有名な『捨て子養育院』もその1つだが,そのアーチの上が「Galleria dello Spedale degli Innocenti(捨て子養育院美術館)」になっている.

とはいっても,これはブルネレスキが設計した美術館というわけではなく,養育院の談話室であった場所を機能転用したもので,それ以外はユネスコなどが利用している.狭い階段を上がり,木組みの見える天井が高く細長い展示空間にボッティチェッリの絵画などが展示されているだけで,特別な美術館というわけではない(参考リンク:内部写真).確かに子ども向けのスケールというよりは,美術館の方がふさわしいかもしれない.建物は必見だが,美術館としてはそれほどではない.
「Galleria degli Uffizi(ウッフィツィ美術館)」「Galleria dell'Accademia(アカデミア美術館)」には行けず.

美術 | Posted by satohshinya at November 27, 2006 23:16 | TrackBack (0)