備忘録 050906

 夏もほぼ終わりに近づいてきました。ションボリです。今年の夏はかなり満喫していたので寂しい……。

 と思っていたところに、衆議院解散・総選挙という夏の終わりのビッグイベント(?)が舞い込んできました! と、喜ぶものでもないんですけど。総選挙を1回するのに1000億かかるという説や500億かかるという説がありますが(もちろん税金)、いったい本当はどれくらいかかるんだろか。
 まあでも面白いですよね。普段まったくテレビを見ないんですが、毎晩テレビの前にかじりついて、各党の党首討論、論客討論をゲラゲラ笑いながら見ています。ものすごいエンターテインメントぶりですよこれ。小泉首相は「総理の任期が終わったら、あとはみんなで勝手に考えれば?」みたいなニュアンスの発言をしてしまって大ブーイングを浴び、民主党の岡田さんは今回のマニフェストに将来的に消費税を3%上げるということを書かないのは卑怯だみたいな指摘に「これだけ私が公の場で発言してるんだから、マニフェストに書いてあるも同然だ」と開き直る。公明党は靖国問題について「総理の公的な靖国参拝はやめていただきたい」と、この大事な時期に明言しちゃうし(まあ別に全然いいですけど)、共産党と社民党は絵空事を相変わらず並べ立て(消費税を0%にするらしい・苦笑)、国民新党と新党日本はいまだもってどんなスタンスなのかハッキリせず。

 んー、悩む。


<最近行った色々>
・8/1【夏行事】神宮花火大会@神宮球場
・8/2【上映会】綿井健陽×広河隆一×高遠菜穂子@文京シビックホール
・8/5【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@下北沢club Que
・8/10【観覧】鈴木邦男×松尾貴史×斉藤貴男@新宿ロフトプラスワン
・8/11【お笑い】ピース単独ライブ~ジェシカ・パンディ~@新宿シアターモリエール
・8/12【ウクレレライブ】角森隆浩@吉祥寺曼荼羅2
・8/13【夏行事】バーベキュー@多摩川
・8/21【お笑い】千鳥のスーパートークパーティ@新宿ロフトプラスワン
・8/27【テクノ】メタモルフォーゼ@伊豆サイクルスポーツセンター

<最近観た映画>
・綿井健陽『Little Birds』(再)@文京シビックホール
・ロン・ハワード『シンデレラマン』(試写)@よみうりホール
・カール・ドライヤー『裁かるるジャンヌ』(再)
・ロベルト・ロッセリーニ/ジャン=リュック・ゴダール/ピエル・パオロ・パゾリーニ/ウーゴ・グレゴレッティ『ロゴパグ』(初)

<最近読んだ本>
・中村文則『土の中の子供』(初)
・渋沢竜彦『エロティシズム』(初)
・高橋哲哉『靖国問題』(初)
・小林よしのり『新ゴーマニズム宣言SPECIAL靖国論』(初)
・日本ビジュアル・ジャーナリスト協会『フォトジャーナリスト13人の眼』(初)
・野村浩也『無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人』(初)
・目取真俊『魂込め』(初)
・又吉栄喜『豚の報い』(初)


 書きたいことはたくさんあるんですけど……。


 まず宣伝。プロマリンバ奏者・三村奈々恵さんのインタビューテクノDJ・田中フミヤさんのインタビューやりました。サッカーファンはぜひ読んでみてください。音楽ファンも。


 <最近読んだ本>のとおり、靖国問題について、対極にいるおふたかた(高橋氏と小林氏)の著書をそれぞれ読みました。これが非常に面白かったんですが、“立ち位置が違うと、同じ物事に対してこれだけ見方や解釈が違うのか”と本当に驚かされ、むしろ靖国問題うんぬんよりもそちらのほうが興味深かった。

 ようするに靖国問題は“A級戦犯を祀っているのは対外的にもよろしくない。そこに首相が公式訪問をすると、日本が過去に行った侵略戦争を肯定することになる”“首相が公式訪問をすることは、日本国憲法第20条で定めている、政教分離(特に第一項の「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」)に違反するのでは”、というのが代表的な論点なんですが。

 前者に関しては“A級戦犯というのは東京裁判で勝手に戦勝国が戦敗国である日本を一方的に裁いたものであって、実際のところはA級戦犯と呼ばれる人たちが行ったことは国際法にも大日本帝国憲法にも触れていない”という反論。
 それに対して“日本が戦後復帰するきっかけとなったサンフランシスコ講和条約の第11条に「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする」と明確に記されているから、東京裁判を否定することはサンフランシスコ講和条約を否定することになり、よって戦後復帰でここまできた日本そのものを否定することになる”という議論が続きます。
 さらにそれに対して“サンフランシスコ講和条約の「裁判を受諾し」の部分の訳がそもそも間違っている。「Japan accepts the judgements」は正確に訳すと「日本は諸判決を受諾する」だから裁判を受諾したわけではない”という議論が続くわけですね(苦笑)。

 後者に関しては“政教分離というが、「追悼」というものを宗教儀式なくして行うのは不可能ではないか。政教分離とされているアメリカ合衆国だって、大統領は演説の前に聖書に手を置いている。むしろ宗教儀式のない国家追悼施設を別に造ったとしても、それは第二の国家神道となっていくのではないか。そう考えたら靖国神社には御剣と御鏡が祀ってあるだけで、位牌や遺骨があるわけじゃなので、唯物論の中国共産党が何か言ってきても「モノがないんだから指摘すること自体間違ってるんじゃないの?」と言えばいい”という議論になるわけで。

 ……と、ざっと書いただけでもわかるように、水掛け論なんですね。もちろん正しい歴史認識や事実確認は必要ですが(小泉首相のように、靖国神社のことを話してるのに「仏様」という言葉を使うとかっていうレベルの無知はもう致命的に恥ずかしい)、そこからはもう個人個人で考えて、自分なりに結論を出すしかないと思います。
 なのに何故ここまで大きな問題になってしまっているかというと、靖国問題が外交カードに使われてしまうからなんですけどね。もちろん国内でも政治的な切り札として使われる。現在の自公連立体勢もこのポイントだけは意見が真っ二つに分かれているので突きやすい。

 なんでもかんでも利権、利権、のこの世の中は、自分で考えて判断する余裕も与えてくれないんだなあとションボリしました。

乙女日記 | Posted by at 9 6, 2005 18:45


TrackBacks

» 情報を可視化する from simon
Excerpt: 政策を選択することと、投票する行為が一致し、政治がわかりやすくなったと思いますが...

Tracked: 2005年09月09日 00:54




Comments

靖国が連立を引き裂く要因とも考えられますが。公明が自民を捨てる日を見るに、自公連立がかかえる構造が、日本のかかえる構造的な問題に通じている気がする。

Posted by simon at 2005年09月09日 00:02

わお。久々にコメントがついた(笑)!
まだ読んでくれてる人がいるとは……ありがとうございます。

リンク先のテキスト、とても興味深いです。
特に最後のパラグラフに関しては私もまったく同感。
でも公明党ってそれでいいと思うのです。ただし連立してる政権が暴走しないように抑止力になる立場でいられれば、っていう話なんだけどね。

最近そうでもないからなあ……。

全然関係ないけど、宮台さんのテキスト民主党がとるべき道とは何か(インタビュー)も面白いです。

Posted by mai at 2005年09月09日 16:21

あ。そのテキスト最近ここで素通りした。意外とブログ界も狭いですねぇ。笑

Posted by simon at 2005年09月09日 23:31

小林よしのりの沖縄論と靖国論はたまたま
うちにあったので読みました。
知らないことだったのでなかなか
興味深い知識をえられ楽しめました、
とまぁかなりお気楽なコメントです(笑)

以前、レムが現状の資本主義の世の中で
建築は関係が持てていない、それは建築という
文化ジャンルに資本主義的価値という利権が
もう見いだされていない、そのため極端な話、
建築が世ために役立てていないのではと感じて
ませんかというようはことを話して、
僕はあーそうだなと思ったりしてた。

靖国論とか読んで思ったのは宗教は文化ジャンルの
中では資本主義ととても密にからんだものなんだと
よく考えると当たり前のことに気がついたな。

Posted by hy at 2005年09月11日 09:54

一・二行目のコメント。
僕も何か書こうと思ったけど・・・。
書けかけませんでした。

その勇気に敬礼。

誰かが言ってくれてすっきりしてます。

Posted by sugawara at 2005年09月12日 08:07

> simonさん

前にも書いたように、私はあんまり他の人のブログとか読まないんですよね(たくさんありすぎて・笑)。
だから思想系や政治系のトピックについては、実際に会って話を聞いた人のブログしか読んでないんだけど、最近はもう議論の場に出てくる人たちって決まっちゃってるので、けっきょくはブログ界も繋がってるんだなあと最近思いました。

> hyどの

ね、この2冊は特に(お互い逆方向に)偏ってるから面白いよね。建築はもう資本主義的にみて利権に絡めないってこと? それは“芸術か商品”になってしまっているってことなのかしら? なんかね、建築からとても遠ざかってしまったので、そろそろまた勉強したいんだけど、そういうレムの意見みたいな本でオススメある? あったら教えてください。建築だけじゃなくて、建築と社会とのかかわりとか、歴史のなかで建築が担ってきた役割みたいな本……あるかな?

宗教は資本主義というか、利権の道具とされてしまうところである意味悲惨だなあとは思います。

> sugawaraさん

一・二行目のコメントってsimonさんのカナ? どんどん言いたいことを言っちゃって下さい(笑)! いろんな人のいろんな方向、色んな立場からの考えを聞くのが趣味なので。

Posted by mai at 2005年09月12日 17:21

レム本のおすすめは僕よりshinyaさんのほうが
適格でよいと思います(笑)

個人的にはかなりベタですが、
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/customer-reviews/-/books/4887062338/250-9186880-7403420
これは多くの人に建築に興味をもってもらう本としておすすめですね。あとはa+u 2001年1月号とかは考える幅と言うものはいろいろあるんだなと絵仕立てで楽しめます。

前述のコメントに関して、そのレムの講演会というのは最初はふむふむと聞けたのだが話がどんどん経済、政治の方向へ拡散していくにつれてうさんくさく感じてしまって、あまり楽しめなかっただんですよ。でも詐欺師にみえてもどこかで彼の何かを信じてしまうのが彼の伝説をつくりあげるんだけど何が信じてしまう理由なのかを考えると彼が当時つくりだした住宅や数々の建築はモノとしてとても評価できるからなんだと気付きました。

ようは僕は出来上がったモノのみに興味がありモノのもつ力みたいなものを信じている。だから30前にしても形がないものを扱う政治、経済などにはなかなか目が向かないだな〜と思っていたけど、それって大半の人からみたらモノに取り付かれた病みたいものだよと気付かれた今日このごろ(笑)

ナイキは自社工場をもたず生産はアウトソーシングのみでクリエイティブのみを抱え、いかに人を動かすがモノづくりで重要なのだと伝えているのではとある方から教えていただたりもしました。

Posted by hy at 2005年09月15日 02:00

hyさんが第一に薦めた本僕も読みました。
建築専門の記者ではない瀧口さんの視点は彼を神格化していなくって良かった。 多忙な、多彩な建築家。
あと、その本の中にある伊東さんのコメントは面白かったです。

宗教の話にもどれば、建築家の宗教が積極的にその作品とリンクしていること。
キリスト教、特にカトリックは形式を重んじる。ある形式の中でデザインして、そしてそこから少し離れると言う進め方方をするんですね。今の事務所もそうです。つまり「形式ありき」の作り方。

一方で、抽象的な世界である近代建築を推し進めた人たちに、「ユダヤ人」が多かったりする。ユダヤ教には偶像崇拝が存在せづ、礼拝に空間形式を持たない。旧約聖書という文字=理論だけがある。そんなモチベーションがなきゃあんなのなかなか作れない。

宗教=思考=建築

乱暴にまとめてるけれど、この話は結構本当で面白い。

神道、大乗仏教、禅宗辺りを勉強してみようかな?
日本人として。
maiさま、帰国したらお勧め宗教本、教えてください。

Posted by sugawara at 2005年09月18日 06:32

> hyどの

オススメしてくれた本、さっそく買ってきた! まだ最初のほうしか読んでないけど、とても読みやすいし、著者の視点が明快で楽しいね。スピード感もウキウキする。本の全体的な質感もいいなあ。楽しませていただいています。

「出来上がったモノのみに興味がありモノのもつ力みたいなものを信じている」っていうのは本当によくわかる。私は学生のときにまさにそうで、出来上がったモノに対して色々とそこに辿り着くまでの思考の過程とかを(たとえば講評会で問われたり、発表したり)こと細かく説明したりすることに興味が全然なかったの。「ここにあるモノがすべてなんだから、それを見てよ」みたいに思ってて、先生たちにそれが伝わらないのは単に自分の力量がないからだって思ってたなあ。

だから建築家が建築をひとつ造って、それに関して何度も講演したり、本を出したりして説明することに関して「難しい言葉を色々並べてはぐらかしてるだけで、けっきょくモノに説得力がないだけじゃん」と思ってたんだけど(特に磯崎さんとかね・笑)……最近は遠くからなんとなく眺める立場になってみて「あ、おもしろいな」と思うこともある。まったく思わないこともある(笑)。そこの線引きは簡単で、作り手が発する言葉が建築に対してのエクスキューズや補足じゃなくて、言葉の延長線上にモノがカチッと乗っていて、そこにしかポジションはないっていうくらいそれが的確なの。

……と、どんどん抽象的なイメージになってしまって申し訳ないですが(苦笑)、hyくんが言ってるナイキの例とかも本当によくわかるし、hyくんのその“モノフェチ”みたいな感覚は才能だと思うので、どんどん磨いていってほしいなと、いち市民は思っております(笑)。

政治や経済もけっきょくモノづくりと同じだと思うんだけど、その話は長くなるのでまた別の機会にね。


> sugawaraさん

それぞれの宗教が人間の空間把握に大きな影響を及ぼしているっていうのは本当に興味深いことですよね。時間を遡れば遡るほどその影響が強くて、19世紀後半くらいからはそれに社会の構造も色濃くプラスされてるんじゃないかなあと思って、そういう本を探しているんです。

とりあえずタイトルからして大変わかりやすい、五十嵐太郎氏の『戦争と建築』(晶文社)を読んでみようかなと思います。なにか面白そうな本があったら教えてください!

宗教本ですか……私も日本の思想は全然勉強していないのでわからないですねえ。古事記は必読! ってくらいしかオススメできません(苦笑)。最近、靖国について色々読んでいるので、神道は学んでみたいと思いますね! 個人的に思想、宗教に関していえば老子(タオ)、荀子(性悪説)、ショーペンハウアー(ペシミズム)、プラトン(イデア)あたりが好きです。加島祥造氏の『タオ』(筑摩書房)は特に好きだなあ。ショーペンハウアー『孤独と人生』(白水社)も名著!

Posted by mai at 2005年09月20日 18:20

「はぐらかしている」なかなか辛辣で刺激的です。OMAや磯崎さんは、はぐらかしてナンボやと思ってそうですがね。笑。
建築家って基本的にぶきっちょ。実質的な表現で説明する必要性と感覚的な側面が露出してしまう猟奇性に苛まされながら、固定したものをポンッと出す。これって、元々つじつまの合わないスケールを無造作に並べて、ケラケラとはぐらかしながら、誰も見たこと無い境地へ連れ込むこと。それがきっと楽しいんだろうと思っている。
えっ、それって不器用か?。tkmyを見れば分かるなんて言ったら、怒られそうだけど。tkmyも俺を見ろって感じだしね。maiさんの感覚に近いんじゃないの!?その前に、自分が不器用って言いたいだけだったりして。全く自慢できる事じゃないなぁ。

Posted by simon at 2005年09月22日 02:15

> simonさん

「はぐらかし」ても全然いいんだけど、ほら、磯崎さんとかって難しい言葉を並べる癖があるでしょ? そこのところがとても嫌いだったのです。あれほど頭のいい人だったらもっとわかりやすい言葉で説明できると思うのに、なんでわざわざ難解にして、受け取る側を選ぶようなこと(←これは学生当時、私が勝手に思ってただけなんだけど・笑)をするんだろうと思っていて。
その点レムはわかりやすいし、ケラケラとはぐらかしてる感はすごくあるよね。磯崎さんもよくよく聞くとケラケラしてるんだけど、入り口はとっつきにくい。

とはいえ、坂さんみたいに解析系で理路整然と説明されちゃうと情趣に欠けるというか、色気がないというか……(笑)。難しいですね。

建築家が不器用かどうかはわからないけど、つじつまの合わないことっていうか、いろんな次元のものを統合しないといけない、本当に大変な仕事だと思います。そこを突破して、ピューンと異次元(?)に引っ張っていってくれる建築はセクシーで快感です(笑)。

って……どうしてこういう話になったんだっけ? 面白いなあ。

Posted by mai at 2005年09月22日 22:58