鈴木邦男×大塚英志

 続き。


 鈴木邦男×大塚英志トークショーは新右翼VS左翼、ということで面白いことになりそうだなと思っていたんですが……とにかく大塚氏がものすごい早口で、鈴木さんが口を挟むスキをまったく与えない怒涛の喋りっぷりだったので、特に前半はまったく議論にならず……残念。大塚氏は『サイコ』や『木島日記』等でいまやすっかり若者のあいだでも人気のオタク、サブカル系の人っていう認識だったんですが、本当はこっちの左翼思想的なことを語るほうが本職? 本筋? な人なんですかね。かなり熱いうえに、見た目も暑苦しい(苦笑)。先述したとおり、のっけから護憲論や天皇制廃止について機関銃のように喋っていらっしゃいました。最初の10分くらいまではすごく面白かった。言うこと全部が的を得てるし、合理的な考え方だし、「なるほど、そういう考え方もあるのか!」と思うことも多い。しかしながら、話すスピードに慣れてくると(あと鈴木さんの絶妙な切り替えしによって)、わりとツッコミどころ満載な持論だっていうことと、言ってる内容が延々とループしてることに気付いてしまって、30分をすぎたところで食傷気味でした。

 大塚氏は護憲論者なんですが、それについて実際に行動を起こした(?)企画本みたいのを出しているんですね。『私たちが書く憲法前文』『読む。書く。護る。―「憲法前文」のつくり方』『「私」であるための憲法前文』の3冊なんですが。これは何かっていうと、一般市民(小中高生、サラリーマン、主婦等々)に日本国憲法の前文を書かせているんです。「改憲や護憲と言ってるけど、まず国民それぞれが憲法について考えなければいけない。そのためには最低でも自分なりに日本国憲法前文を書けるくらいの国語力が必要で、それすらできない、もしくはやろうとしないバカ(←本人の言葉ママ)が改憲だの護憲だの論じるのはおかしい話だ。そんなバカな政治家たちを選出した国民にも責任があるし、前文が書けないくらいレベルの低い人間が多すぎる。だったらそんなバカばっかりのいまの時代で、憲法を改正することは何の意味も持たない。むしろ悲惨な結果になるのは目に見えている。よって護憲」という考えだそうで。「そこまでバカバカ言わなくてもいいんじゃないのぉ~?」とは思いますが、彼の言いたいこともなんとなくわかるような気もします。ただ、ちょっと彼の“インテリ選民意識”は鼻につきました(笑)。ちょっとアメリカ人っぽい発想なので大きい声で主張するのはイヤなんですが、「あきらかにデブで汚らしいオタク丸出しの、セルフプロデュースができない人間が色々言ってもあまり説得力がないなぁ~」みたいな。
 ちなみに鈴木さんは「“前文を書いてみよう!”っていうところで大塚さんは改憲派なのかな? って思ったんだけど、そういうことだったんですよね。で、僕が思ったのは(大塚氏がその前にさんざん「前文を一般市民に書かせてみたら、けっこういいものがたくさんあった」と言っていたのをふまえて)この一般市民が書いた前文は、なんだか全部いまの日本国憲法前文に引きずられてる気がするんですよねえ。面白いのがない。だからいまの前文のままでいいじゃんってことを護憲派の大塚さんはこの本で証明してるんだとアマノジャクな読み方をしたんだけど……違ったんですね(笑)」と、おもいっきり皮肉ってました。

 天皇制廃止については「なにも天皇を引きずり落とそうとかじゃなくて、憲法で天皇制を言及することをやめればいい。ようするに8条までは必要がない。天皇家はそのまま代々続いていけばいいし、古来からの歴史的な伝統としての位置づけでいいんじゃないか。国政に関わるということに反対なだけ。というのも、天皇制が憲法で言及されていることによって、政治家も国民もそこにすがってしまっている。具体的には国民が“小泉はバカで嫌いだけど、今上天皇は嫌いじゃない。むしろ好感を持てる”と思うことで、その意識があるせいで政治家はどんどんダメになっていくし、国民も“まあ首相はダメでも天皇いるし”みたいな感覚で政治家に対して諦めている部分がある。“首相=国の代表”という意識、つまり首相がいちばんトップという意識にならないかぎり、このままダメな政治家たちが増え続けていくだろうから、そういった意味で天皇制を廃止すべき」とのこと。これは私もまったくもって同感でした。本当にそのとおりだと思った。この感覚と発想はとても大事だし、日本人の国民性をよく捉えているなあと感心しました。


 長文おわり。

行ってきました♪ | Posted by at 5 13, 2005 16:38


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Comments

なんとなあ、このサイトの存在をシリマセンでした・・・!

Posted by non at 2005年05月13日 18:54

……いや、いちおう大学のだからさ。
研究室の他の人のブログと比べて、あまりに浮いてるからアレなんですけど。おそらく研究室にとっては迷惑かと(笑)。

右上の「→takamiya studio BLOG」から、他の人のもいろいろ見てみて! 建築とかアートとかの面白いエントリが読めるので!

Posted by mai at 2005年05月13日 19:10