『モンスター』

 昨日、渋谷シネマライズで『モンスター』を観てきました。フロリダに実在した連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスのドキュメンタリー映画で、主演のシャーリーズ・セロンがこの映画のために13キロの増量をしたのとブサイクメイクで話題を呼び、アカデミー賞主演女優賞とゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞した作品ですね。

 いやー、すごかった。そして重かった(特に女性が観るほうがキツイと思う。どうしても生物のつくりとして“受身”にしかなり得ない女性にとってはかなりキツイ)。

 なんといってもシャーリーズ・セロンの徹底した役作りっぷりが圧巻。シャーリーズ・セロンだっていうことを知らないでこの映画を観たら、絶対にわからない変身ぶりです。容姿もさることながら、佇まいとか、英語の訛りとか、もう本当にスゴイ。口をあんぐり開けてしまうくらいに。相方のクリスティーナ・リッチも相変わらず凄まじい演技力で、目つきなんて本気でレズビアンでしたよ。このふたりの渾身の演技(とはいえ、演じすぎてないところがまたスゴイ。事実を丁寧にトレースしてるんだろうなという印象)が、この作品がドキュメンタリーであるという事実を、映画が始まった瞬間から終わる瞬間まで強烈に提示してくるので、もうなんか本当に重くて重くて、その圧迫感で吐きそうになりました。

 不遇な家庭に生まれ、生きていくためには娼婦として道に立たなくてはいけなかったアイリーンが、自分を愛してくれる存在に出会い、自分にエクスキューズを無理矢理つけて殺人を犯してしまう事実。女を買うような男は殺してもいいという自分に対してのエクスキューズは最後の最後で彼女を押し潰し、本当は人を殺めることは絶対にしてはいけないとわかっていたんだけれどと恋人に許しを請う姿は、もうなんていうか、私のなかでの道徳観やら善悪の概念やらを根本から揺さぶってきて、映画が終わった時点で少しパニック状態に陥りました。
 で、昨日からずっとそのことについて考えていて、結局その善悪とか道徳とか倫理とかについての結論は出てないんですが(むしろ考えれば考えるほど精神が掻き乱されてパニクる)、文明を持つほどに進化してしまった人間には教育が必要なんだなということは痛感しました。

 アイリーンみたいな境遇の女性が生きていくためには本当に売春しかなかったんだろうか。なぜ売春しか手段がないのか。これは単に教育を受けていないために最低限の教養がなかったというだけだと思う。実際に映画の中でもアイリーンがカタギになろうと就職活動を試みるも、教養がまったくない彼女にはできる仕事がないんですね。
 識字率が80%にも満たないアメリカ(ちなみに日本はほぼ100%、キューバは97%)の社会構造が生んでる現実は本当に悲惨で、実際にアイリーンみたいな女性はたくさんいると思う。先日のアメリカ合衆国大統領選挙の開票結果でもあきらかなように、貧困の差と同じくらい知的レベルの格差が生じていて、そのために人権までもが侵されているわけですねアメリカは(よその国にかまってるヒマはないと思うんですけどね)。
 で、最近の日本で起こっている事件をみると、どうしても似たような印象があって。なんていうか、あまりにも安易な殺人とか幼児虐待が多すぎて、そしてその事件が起こった近辺の人間のインタビューとかを見ると、どうしても無知というか知的レベルの低さを感じずにはいられないんですね。なんとなく日本も物質社会に起こり得る知的レベルの格差が出てきてるんじゃないかと。目に見えないスラム化みたいな。それが非常に心配です。

 ……えーと、話がまたカオス状態になってきそうなんでまとめると……国民には“読み・書き・計算・タイピング”は最低限義務付けること! そして男子にはマスターベーションの仕方も教える! (と、買春が減るかなあ〜と思ったんですケド)

ちーねま | Posted by at 11 18, 2004 18:03


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