『ヤマトタケル』読書会

 先週は“『ヤマトタケル』読書会”なるイベントに行ってきました。これは何かというと、一水会顧問の鈴木邦男氏の著書『ヤマトタケル』を、氏を囲んでみんなで読もうというものです。

 ヤマトタケルはもちろん古事記、日本書紀に出てくる我が国のヒーロー、景行天皇の皇子である“やまとたけるのみこと”ですが、古事記と日本書紀では若干(というか、だいぶ)違うイメージで描かれています。そもそも古事記では“倭建命”、日本書紀では“日本武尊”と、表記からして違うし。
 かんたんに言うと、『古事記』は宮中だけで読まれた物語なのでかなりフランク、『日本書紀』は中国正史みたいのを日本も作ろう! ということで、意図的に神々や皇族をキレイに描いた歴史書なので堅い。そんなことはまったく知らなかった私は、ずっと昔に『日本書紀』だけ読んで「全然おもしろくない」と『古事記』は読まなかったわけで……もったいない。『古事記』はかなり面白いので、興味があったら読んでみてください。その前に阿刀田高氏の『楽しい古事記』をザーッと読むとさらにわかりやすいと思います。

 前置きが長くなりましたが、読書会です。

 ご存知のように鈴木邦男氏は右側の人間なのですが、そういった右の人間にヤマトタケルを描かせるっていうのは画期的だと思いました。現代書館が出してる、このFOR BEGGINERSシリーズはかなり面白い企画ばかりでオススメ。文章と絵が6対4くらいなので読みやすいし、前田哲男氏が「日本の軍隊」を書いてたり、竹中労氏が「大杉栄」を書いてたりしています。三浦実氏の「吉田松陰」も面白かった!

 読書会ではこの『ヤマトタケル』に対する鈴木氏の思い入れ等を聞きながら、学生さんが音読して感想を述べあったりするんですが、まあすでに読み終わっていた私は新しい発見もそんなになくてイマイチ。いちばん好きだった「魔性の女・美夜受比売」っていう章は読まなかったし。
 本のなかにクリムトの『ユーディット?』が載ってて、「鈴木さんクリムト好きなんですか?」「うん、マイちゃんも?」「普通に好きなんだけど、ユーディットだけはものすごい好き! 一緒に琳派展見に行きましょうか、クリムト2つしかないみたいですけど」とか言って、邦男さんがクリムト好きっていうことがわかったのが新発見ですかね。あ、あとボツになったエロい挿絵を見せてもらいました。あ、それから挿絵を描いてる清重伸之氏は右嫌いのわりと左寄りの人らしく(笑)、この本を作るにあたって一度も顔をあわせなかったんだけど、原稿を書いたあとに挿絵入りで返ってくるゲラに挑戦的な(っていうか、清重氏の思いみたいな)吹き出しがあったりして面白かったと言ってました。それをふまえて読み直してみたらかなり面白い。

 そのあとの雑談で、なんで神話って人種も土地もぜんぜん違うところから発生してるのに、似たような話が出てくるんだろうねという話になりました。これは私も古事記を読んでて思ったんだけど、ギリシャ神話に出てくる話と同じような概念がけっこうあるんです。
 美夜受比売はヘレネみたいなもんだし、弟橘比売命はアンドロメダみたいだし(アンドロメダは助かったけど)、雄略天皇はゼウスみたいにどうしようもない女好きだし、描かれてるキャラクターがことごとく重なるんですね。これはすごく不思議。やっぱり人間は遺伝子レベルで繋がってるってことでしょうかね。

 ま、とにかく機会があったら『ヤマトタケル』、読んでみてください。基本的には古事記のヤマトタケルの解説ですが、なぜか梅原猛や鶴見俊輔、右翼の中村武彦や平泉澄のことも書いてあるし、あげく邦男さんと野村秋介氏のツーショット写真まで載ってます(笑)。野村氏めちゃくちゃカッコイイ。

 ……とか書くと、またshinyaさんをハラハラさせちゃうわけですね♪

行ってきました♪ | Posted by at 9 22, 2004 18:29


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Comments

いや、もうこれくらいではハラハラしませんよ。せめて、この関係にLinkされるときには、maiのtopページが正しくLinkされることを祈るばかり。間違ってもtakamiya studioのtopページがLinkされるようなことは……。

Posted by shinya at 2004年09月22日 20:05