MoMAは50%

オペラシティで開催されている「谷口吉生のミュージアム」に関連した講演会に行ってきました。以前のエントリーで、高宮さんが見たMoMAを書いたのですが。今回は、槇さんと谷口さんが見たMoMA。槇さんの直感で、辞退するつもりだった谷口さんを、ぎりぎりでとどまらせたなんて、逸話を聞いていたので、この二人の話は是非聞きたかった。人の話を聞きに行くのは、99%が事実の反芻で、1%の狂気を期待していくわけですが、今回は谷口さんが「50%しか満足していない」と言ったのが、それでした。笑
お二人の真っ正面に座り、モダニズムを壮観した気分に浸りながら、入り時間になる。矢萩喜從郎さんが、まず谷口建築を解説。シンケルやミースに通じる理性的な態度や、門構え、にじり口、座といった日本的な解釈、絶対水平や鏡面性が特徴の深さのない水面。ご自分で撮影されたと思われる写真を交えて、自分の解釈を、誤解をおそれず話されていました。一番、印象的だったのは、ブルーモーメントに輝く豊田市美術館をファインダー越しに見たとき、「理性と日本的な感性の溶解」に見て取れ、大変美しかったと。スライドとセットだったので、感動。
次に、槇さんの視点での評価。展覧会を見て分かるように、多くのメディアから讃辞を贈られている点は、40%は建築家がよかったから。残りは、MoMAだったから。なぜか。グッケンハイムとは違って。と言っていいほど、アメリカ人にとってMoMAは特別であると。自身がNYで働き始めて、まずMoMAの会員になったほどであり、移民文化のアメリカの先進的なコミュニティは教会しかなかった。次にデパートやボールパークができ、それから美術や演劇がついてきた。その中でも象徴的なものがMoMAであると。彼ら自身の幸福感であり、先進的なサンクチュアリとまで。このコメントからも、アメリカの身体感覚が根付いていた槇さんがMoMAのプライド、戦略からいっても、勝ち取る可能性を感じていたのだと。槇さんとしては今回の計画は、何よりアーバンデザインがすぐれていて、18世紀から現在にいたるまでの建築が集積している場所で成立させている今回の計画を高く評価されてました。
それを聞いていた谷口さんが開口一番、僕は話がうまくないと前置きをし。既存の保存、改築の復元、新築が複合した難しい計画だったと。そういう提案をしたのが自身ではあるのですが。内部にある作品との拮抗を望まないMoMA。MoMAが所蔵する作品は世界中どこでも見れるから、NYが館内からどう見えるのかというのを慎重に考えた。知ってはいたが、この謙虚で紳士的なコメント。んー背筋も伸びてる。また、あの特徴的な門構えは、中と外との連続性を意識した窓の枠でもあると。アベニューからのひきがないので、内部空間を豊かにしたかったと。建築を学んだのは都市の理想を語られた60年代。しかし、日本の都市の猥雑な風景を見て、どちらかというと閉じることに興味があったのかも知れない。矢萩さんが日本的な解釈のことを述べられていたので、日本的な事は意識していない。どちらかというと避けていると。一方で、非対称 線的 うすあかり コンポジション。モダニズムと共通するものを、そういった日本的な空間構成に感じると。
それを聞いていた槇さんは、内部空間に興味のあったroom to roomの磯崎さんや回遊性の谷口さんと比べれば、もうすこし楽観的だったと。門やにじり口もしない。ヒルサイドでもわかるように、隅入りを好むと。谷口さんとの違いをコメントされてました。
最後に、質疑応答。「どこで筆を止めるのか」谷口さんは、どんどん単純化していく。ぎりぎりまで純粋化して(作為が)残るか残らないかのぎりぎりのところで止めるとコメント。「敷地から何を得るのか」槇さんが、ア プリオリな欲求を確認するために敷地を利用することもあると。

建築 | at May 12, 2005 19:10


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Comments

講演会にいけれてうらやましいです。仕事の関係上、私は行く事ができませんでしたが、図面を見る限り、私と考え方や表現の手法などとても似通る部分があり、展示会で楽しませていただきました。

Posted by archfusion at May 15, 2005 11:09 PM