プロジェクトの強度が決定する瞬間

以下は、下書き。痕跡。四枚稿を機会を見てアップします。

多摩ニュータウン縮小計画
ー諏訪2丁目団地の再生を通してー


プロローグ・「背景」
縮小と言っても、まちの魅力を目減りさせることを目的としたものではない。

人口減少時代に突入する岐路にあって、従来的な「人口の増加」と「経済の増進(地価の高騰)」という前提は崩壊した。また、街を構成する建築は、ハードウェアではなく、ソフトの問題によって、たった30年で滅失期間をむかえている。現在まで、適切な空間の大量供給とその統合を可能にしてきた「機能」=「空間」という真理が欺瞞にすり替わってしまったと言えよう。すなわち、まちに投資する理由も、構築するすべをも失っている状況にある。しかし裏を返せば、新しい前提にたって、誘導力のある建築を目指すことが可能な時機と言えはしないか。

参照:社会資本整備審議会住宅宅地分科会 基本制度部会報告案参考資料 資料12 滅失住宅の平均築後経過年数によると、滅失期間は31年。諏訪2丁目団地は入居から35年経過、88年から建替え運動の継続。

第一幕・建築がひらいていく流れ=「ストーリー」
「新しい建築型」が、「多摩ニュータウン」と「住まい手」を「なめらか」につなぐ。

01・「新しい建築型」の必要性
開発主体であった都と公団の撤退により、全体を調整する視点を持たない民による投機的な開発の本格化や、住民主体による建て替え運動がなかなか実を結ばないことから、郊外のスケール感をキープしたまま街を改善していく「共有できる凡例」=「新しい建築型」を必要としているという仮説は有効と考える。

02・「多摩ニュータウン」にとっての障害
31万人サイズの街であるが、実際は19万人にとどまっている。学校の廃校が進み、増加する遊休地。初期投資を回収出来ないうえに、維持管理が膨らむ一方である状況から、適正なサイズに制御することが必要。

03・「住まい手」にとってのバリア
多摩ニュータウンにおける3DK・近隣住区は、未開の地をを開くための単位であったが、家族という関係を象徴したモデルともいえるnLDKという、規範から逸脱した空間の使いこなしを受けいれない3DKや、近隣住区のシンボル的な存在である近隣センターの衰退という現状が、単位の解体を要求している。また、3DKと近隣センターは、多摩ニュータウン全体に通じる単位でもある。

04・「なめらか(Flux)」という概念
切れていた・切れてしまった関係をつないでいくこと

まちを展開していくには、運営主体が必要。従来は、公(施行する/従う)や民(生産者/消費者)というような二項対立的なものでしかなかった。
地域レベルの人口動態や開発主体の傾向の情報を集約し、公開しているのは多摩のNPOである。また、多摩に建つ大学が学術的な視点からのサポートを試みている。隔たりを埋めていく主体が定着しつつあると言える。それらがサポートする問題は日常から制度の調整まで、幅広く期待されている。その層を社会学的には中間集団と呼ぶ。そのような背景が加速し、空間や街への欲求が高まり、住まい手(空間の使い手)による空間のカスタマイズ。その集積といった相乗効果が生まれ、街と住まい手の関係がつながっていく。建築は従来的に、そこにある状況をつないで、新しい関係を生むことを試みてきた側面を持つ、その性質を「多摩ニュータウン」と「住まい手」の距離にまで拡張し、切れてしまっている関係を「なめらか」につなぐことをインテンションとしたデザインを試みる。

参照:ised@glocom - ised議事録 - 1. 設計研第5回: 近藤淳也 なめらかな会社

第二部・問題の解決と誘導を見据えた統合=「デザイン」
「新しい建築型」を構成する要素。

01・郊外の制御
人の集まり具合を高める。街のユーザビリティの低い地域を自然に還す(経済の枠組みを一旦はずす)。

02・ランドスケープの調停
地形を整地し、南北もつなぐ。ポジティブスペース(中庭)を挿入。

03・なめらかな構造
ケとハレの演出。(襞を内包した構造体である壁によって分断された手前空間と奥が、一体的にも、身体を切り替えるようにも、使い手によって見いだしていける空間)

エピローグ・「要望」
完成した建築が具体的にどのような場を実現しているか。

01・コミュニティの再生
「多摩ニュータウン・住まい手(空間の使い手)」それらの隔たりを充填していく中間集団の存在が強化されていく風土の実現。

02・都市の理想
郊外は都市の周縁として立地しているが、急激な人口増加を背景にした乱造を制御するために、都や公団が調整、開発を行ってきた。その資産として、土地が個人に帰着していない環境が自然に生まれている。
ニュータウンは都市の理想を具現化する流れにたち、誕生したが、都市における個別の建て込みが強化されるまちづくりを解放する「大きな建築型」となる可能性を持つ。

建築, new town | at February 7, 2006 5:40