弱い身体の集積とその可能性

例の偽装問題。スタンドアローン(社会と切断した状況)から、いきなり(現実)社会に引っ張り出された様な態度を取っている。おまけに死にたいとまで。どういった背景から、ふきこぼれた事件なのかは分からないが、もはやテロと言っていい。「一個人」が、ネットを媒介にし、既存の図体を転覆させる可能性を持っているというテンションが、身体感覚の中で起きる次元まで。もう、そこに来た。誰かが具体的に指図したのでもなく、いつのまにか成立した方程式に従い、「たった一人」の単純な作業の繰り返しによって、計り知れない規模の不安へ増進させた。
パトレイバーの押井シリーズに描写されている、平和ぼけした日本人が、町中を走る装甲車や戦車に「何かの演習か?」と、何も疑わない脊髄反応しか示さない身体感覚が、今回の事件の深層と一致している気がする。金箱さんが言うように「建築は建築主の財産であるとともに社会資本としての役割を持ち〜」という理念は知っていただろうが、正論やおおきい物語は通じない次元、別に建築だから起きた事件ではない。今回は、悪意に到達する以前で、防ぐことが出来たが、同じようなタイプの事件がチャンネルを変えて、出現する可能性はあると思う。
先ほども書いたが、彼は死にたいと口にしているようだ。ショックだ。大枠はうまくいっているようだが、局面の破綻をつなぎとめることができない社会。そこまで追いつめられている。株価の高騰に浮かれているようでは、かさばらない身体へスライドしているとはまだ言えない。
ネットの持つ身体感覚が悪いとも読み取れる文言を書いたので、ネットにある可能性を記述したい。私は死なない僕は死なない。これらは社会との接続状況を表現していると言ってもよい。どちらも今年出版された本のタイトルやトピックになっている。(後者はもうネットで公開している。)何が、言いたいか。どういう形式でも、回線でも、いいから社会と接続する状況があるべき。今回の事件のように、切り離されるとオリジナルの回路を自動生成してしまうからだ。今までは、社会をもじった会社や学校、町内といった集団との接続が信じられるとされてきたが、誰の目にもうまくないところがあるのは事実で、コミュニティは細分化し、家族の中にまで分断線がやってきている。個の充実を謳い文句とした、80年代以降の教育を受けた僕らには当然の流れであり、し向けられた結果とさえ思える。
ネットの可能性に急ごう。ブログ開設数は400万近く。最近、SNSの代表格でもあるmixiの加入者が200万人を超え、一日一万人のペースで増加している。切断された横の繋がり(いわゆるコミュニティ)が、データの裏付けを超え、実感を伴い、再生しつつあることはうれしい状況だ。右肩上がりなのは、その無意識なテンションに賛同しているからだろう。そのテンションも意図的に企画されたものではない、そういうのが今の風潮。しかし、これから到達する地平が見えないというのはよくない。というか、さらに利用者が増えるのであれば、準備、言説を用意する必要があるだろう。isedなどがやっている活動の目的はそれにあたる。
ネットに滞在すれば気づくが、礼儀や作法というのがやはりある。始めて訪れるブログにコメントをおとす時、「はじめまして」と添える行為が、それだ。ブログ以前の2chでも、あの体裁の中での作法があるし、それ以前の個人サイトや、メーリングリストの時代からある身体。加えて、ネットに自分のキャラクタが滞在すること=ハンドルネームや実名で、誰の介入もなく言葉を連ねる。それに反応するように、リンク、トラックバックされる。これら作法や対話は、形をかえたコミュニティの原型であろう。ネットに接続するきっかけを、ブログやSNSが拡張し、コミュニティの再生成に繋がっている状況は、ある集団、ある社会との接続手段をつくっていることへ。場所がそこにできる。
強い身体を持つ人間であれば、僕は死なないと、本をだすことができるだろうが、弱いメディア(媒介者)が生まれているこの状況は、おおきい物語で紡ぎきれない生成し続ける社会という輪郭、その先端を強化していることに成っている。と、言いたい。

参照LINK
ARTIFACT@ハテナ系ー「強い人」と「弱い人」
強度不足を指摘されたマンションの住民の方の書くブログ

blog | at December 11, 2005 5:57


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Comments

そして東浩紀は、こんなことをやっている!?

Posted by satohshinya at December 14, 2005 4:10 AM

知らんかった。2chとはぁ。しかも、あいかわらずふとい。
25日行こうかな。たしか昨日からチケット発売。

Posted by simon at December 14, 2005 5:49 AM

17日は残念ながら行けません。25日も。後ほど報告願います。

Posted by satohshinya at December 14, 2005 10:01 AM

Posted by simon at December 23, 2005 10:16 PM