北欧の報告-その1

北欧に行ってきました。

古典的な建築様式と近代建築の過渡期を生き抜き、
北欧の近代建築の道を切り開いたEric Gunner Asplund
いち早く近代建築を自分の道具の中に融解させ、
形態操作としての『近代建築』を乗り越えようとしたAlvar Aalto
この二人の作品を中心にSwedenとFinlandを巡ってきた。

先ずはSwedeのEric Gunner Asplund。
・森の火葬場
・映画館「Skandia」
・Bredenbergs百貨店(だと思われる)
・Stokholm市立図書館
をみた。
その中で良いと思ったのは『森の火葬場』と『Stokholm市立図書館』。

■『森の火葬場』のはSigurd Lewerentzとの共作で
ランドスケープと建築の融合が評価されている作品。
公園のような場所にいくつもの建物が建っていて
移動と共に移り変わる視界が 周到に計画されている。

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この場所については僕が改めて何か書くことはないと思いつつも、一言。
高台になっている広場から『復活の礼拝堂』までの経路は
圧倒的な凄みを持っていた。
歩いていくと

視界が開けた芝生の空間

移動によって小さい葉の塊がチラチラする空間

列柱のように高く林立する空間

壁のように生い茂った木が威圧感をもって連続する空間

『復活の礼拝堂』

とつながっていく。
樹種の変化でここまで空間の質が劇的に変わっていくのかと関心。
地面の上に粒子のように広がっていく墓達が、
実はただ芝の上に直接打ち込まれただけであることにも驚く。

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『聖十字礼拝堂』内部では、表面に対する濃密な操作が行われていた。
中心に据えられた「棺置き場兼火葬装置入り口」に向かって
床の石版が吸い込まれていくように面割されている。
その石版の表面にはドットが打たれていて、
棺への テクスチャーとしての流れを示している。
建築の内部形態としては棺に向かって微妙な傾斜が付けられているんだけれども
形態と言うよりも、執拗なまでの表面操作が空間に流動性を与えていた。

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祭壇前のフレスコ画も面白い。
おわんの一部のように湾曲し、空間を包み込むような壁面が額となっている。
そこには全方向に向かって、複数の消失点を持つ絵があった。
線遠近法ではなく、環境視としてのリアルな視覚システムが意識されている表現だった気がする。

■『Stokholm市立図書館』
見所は中心にある円形の大空間のダイナミズムだろう。
空間の表面素材と化した「群本」と、雲のように上部に連続的に広がる白い壁面の「起伏」。
この要素が、屋内としては突出している空間の大きさを確実に観察者に計測させる。
あと、一見、建築家の欲望だけで構成されたかのようなこの建築が
非常に機能的に作られていることに感心した。

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Eric Gunner Asplundについては、最近写真集兼開設本が発売されたようなので
興味のある方はそちらを見ていただけると良いと思います。

■『聖MARK教会』
森の教会の共作者Sigurd Lewerentzの『聖MARK教会』。
この建築もとても面白かった。
主な素材はレンガなんだけれども、そのレンガの可能性を徹底的に追求している建築。
壁面のレンガは、スケール操作、空隙、異素材との関係、定規としてのレンガ・・・・・・・
といった様々な視点で実験的な操作が行われている。
レンガの一つ一つが、大きな解像度で強い印象を形成しているようで、
本当に印象派のボテッとしたタッチのように扱われていた。
LewerenztはAsplundの影に置かれてしまう傾向があるが、
もっと評価されて良い建築家だと思う。

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■『Stokholm近代美術館・建築博物館
『Stokholm近代美術館・建築博物館』では前からすきだった『Lars Englund』の展覧会が。
迷わず高価な作品集を買う。
この偶然のおかげでその夜は美味しいビールが飲めました。

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Finlandについてはまた次回に。

-Swedenで見た建築--------------------------------
・森の火葬場 / Eric Gunner Asplund, Sigurd Lewerent
・映画館「Skandia」/ Eric Gunner Asplund
・Bredenbergs百貨店/ Eric Gunner Asplund
・Stokholm市立図書館/ Eric Gunner Asplund
・聖MARK教会 / Sigurd Lewerent
・コンサートホール / Ivar Tengbom, Andres Tengbom
・Stokholm市庁舎 / Ragnar Ostberg
・Stokholm近代美術館・建築博物館/ Rafael Moneo
・王宮、その他観光地


Architecture Space / 建築, Travel / 旅行 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 4, 2005 7:18


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