復興のデザイン – spiralの講演を終え / JP only

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昨日(2011年8月28日)の表参道スパイラルでの講演会では
拙い語り口ながら、数多くの方々が感想や質問をくださった。
本当にありがたいことです。

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計画の内容と合わせてお伝えしたかった事が主に二つあった。
・復興に求められているのは「繋がりのデザイン」である。
・建築家の「本当の職能」について。

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■復興に求められているのは「繋がりのデザイン」である。

僕らが進め、入居が始まった陸前高田の木造応急仮設住宅は、
住田町+住田住宅産業開発の「木造仮設住宅ユニット」がその中心である。
このユニットは地元住田町の技術と想いの結晶である。
「東京から来た建築家」が行ったことは、適切なインフラの取捨選択と
各住居の配置計画である。
ささやかなこの「配置計画」こそ、最適で最大のデザインだと思っている。

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今回の最終形として完成したこの仮設住宅地。
それは新築の集合体で有るのに、むかしからそこにあるような
集落の様な風景を持っている。
その集落「らしさ」は見た目でだけでなく、住人間に生まれるコミュニティーまでも
そうなるような「建ち方」のルールを埋め込んでいる。

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被災地も含め、地方には素晴らしい資源、人・もの・ことがあふれている。
それを外部の視点で評価し、再配置し、一体化する。
大がかりな何かを外から持ち込むのではなく、
客観的な視点で地方資源を「繋ぐデザイン」。
それがいま復興に求められているデザインだと思う。

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■建築家の「本当の職能」について。
「建築家」が関わると、デザイン性について語られがちですが、
本計画では、ハード(建築や家具など)を通じ、ソフト(人々や物の関係)を
構築することを目指しました。

この大きな震災を前に、多くの建築家たちは外で呆然としている人が多い。
それは、建築家達の真面目さが、逆に手を止めてしまうこともある。
一方で、社会が求める「社会性」とはかけ離れた場所で
「奇をてらった建築」を作り続けてきたことにも大きな原因がある。

本計画は今の「建築家」という肩書きにしては派手さに欠け、
関わり方も「横から目線」の地味なものです。
しかし、今回の様な「繋ぐデザイン」が多くの建築家が参加できるし
長期に及ぶ復興支援には必要なデザインだと思う。

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紀元前一世紀に、ローマの建築家ヴィトルーヴィウスが
名著「建築書」を書いています。
その頃、建築家は「建物」だけでなく土木、機械など
身の回りにあるものを与条件の必要に応じてデザインしていました。
「真新しいものを創造する」事も大事ですが、
与条件を的確に読み取り、デザインのスタイルだけでなく、その対象までも変化させる。
それが建築家やアートディレクターの本当の職能であると再認識させられました。


■プロジェクトデーター■■■■■■■■■■■
名称:陸前高田市の仮設住宅
場所:日本岩手県陸前高田市
戸数:60件
木造仮設ユニット開発:岩手県住田町+住田住宅産業株式会社
施工:住田住宅産業株式会社
マスタープラン:菅原大輔/SUGAWARADAISUKE + 原田勝之/ ARCHITECT LOUNGE
写真:太田拓実


http://sugawaradaisuke.com/
http://twitter.com/sugawaradaisuke

Architecture Space / 建築, Emergency Support / 災害支援, Urbanism_City / 都市, Works / SUGAWARADAISUKEの仕事 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 8 29, 2011 16:16


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