仏蘭西のArchitectとStagiaire

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今週は一週間あっという間に過ぎてしまった。
年末と言うこともあるのだけれども、それ以上に
今週は毎晩のようにfete(パーティー)があったから、そう感じるのかもしれない。
なぜ毎晩のようにfeteがあったかと言うと
所員1人と2人のstagiaire(研修生)が事務所を去るからです。

フランスの設計事務所は日本の設計事務所と比べて
人の入れ代わりが非常に多く
うちの事務所でも、だいたい3ヶ月おきに壮行会のfeteがあります。

それはフランスにおける設計事務所の契約形態によるところが大きく
日本のような終身雇用より、プロジェクトごと、短期間ごとの契約が多い。
と言うのも、雇用者は能力のある人しか必要としていないし
Architect(アーキテクト・日本語訳の建築家とは異なるニュアンス)は
興味のあるプロジェクトがないと去っていく。
また、色々な事務所で多くのプロジェクトに参加すること自体が
Architectの価値をあげるということも理由に挙げられます。
いかにも『契約社会・フランス』と言う感じだが、
これはヨーロッパ全土で共通のようです。

今回JAKOB+MACFARLANEを退社するのは、
3年半勤務していたオーストリア人のArchitecで
かなりの数のプロジェクトと、事務所のグラフィックデザイン全てを統括していた。
元々ファッション関係出ということもあって、美術関係に精通し
個人的 (PETRA MAIER)にも既に活動している。
来年はオーストラリアの設計事務所に勤務し中東のプロジェクトに関わるらしい。
色々な国で暮らしたいという彼女にとって、そろそろ生活環境(国)の換え時らしい。

人の入れ代わりが多いもう一つの理由としてstageと呼ばれる研修制度がある。
フランスでは、ほぼ全ての職業に
stage(スタージュまたはapprentissageアプランティサージ)があって
ケーキ職人や料理人、心理カウンセラー、整体師、そして建築家にも
一定の研修期間が定められている。

建築学科の学生の場合、Stagiaire(スタジエール・研修生)は社員のように勤務し、
図面を引き、業者の打ち合わせも行ったりする。
正社員の1/3の賃金も保証されていて、
自分の職業で果たす社会的責任も感じることが出来る。
その後に学生の総決算diplome(卒業設計)に取り掛かることができ、、
卒業した時点でArchitectの免状を手にすることが出来る。
この制度のおかげで全ての新卒者は即戦力として仕事につくことができるし、
雇用者側も日本の新人研修のような再教育の期間を省くことが出来る。

素晴らしい制度である反面、『建築』ではあまりにも現実的なことを
学生時代に知りすぎてしまって
新しい思考回路や発想が育ちにくいというのはあるようだ。

どちらにしても今回事務所を去っていく人々の健闘を強く祈っている。

写真は勤務後のお別れ会の様子と
後日 fete(パーティー)で 食べたraclette(ラクレット)と言う料理。
raclette(ラクレット)はチーズを小さい容器でやわらかくし、
ジャガイモ、ハム、ベーコンなどと一緒にいただく。
みんなでワイワイ、ガヤガヤと食べる料理で日本でいう鍋料理かもしれない。

Architecture Space / 建築 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 12 20, 2004 10:08


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