巴里の素材

僕が勤務する事務所は、2003年の設計競技で「Helold-100 Logements-」という
集合住宅を獲得した。巴里19区に建設予定。
現在、この敷地内で地質汚染が発覚し、土壌改良の検討も含め建設が先送りになっている。

敷地の土の話をしているときに、この物件を担当しているPhilippeが面白いことを教えてくれた。
巴里の地下には無数の空洞があるということ。
と言うのも、巴里の地下は『石切り場』となっていて、巴里に建つ建築物はその石を積むことで作られているという。観光名所となっている共同地下墓地『カタコンブ(catacombes)』も元々は石切り場跡だそうだ。
古い(土着的?)建築物はその地方で良く取れる素材によって作られる。これが、各地方の町並みの色や素材感を決定しているのは常識だけど、大都市巴里の町並みが、『周辺で取れる素材』ではなく、『地下にあった素材』を直接地上で再構成することで成り立っていると聞かされて驚いた。
つまり『巴里の町並み=巴里の地下の色』という事実。

現在、新しい建築物を建設する場合、『石切り場跡』の空洞はコンクリートで充填され、後に新しい建築物の基礎が打たれる。そして、その上に載る新しい建築物にはグローバルに流通する素材、鉄、コンクリート、ガラスが使われる。
『土着性』を賛美するわけでもないし、これを素材の問題に単純化して考えるつもりは全くないけれど、巴里の建築物が持っている土地との親密な関係が、新たな建設によって少しずつ失われていることに寂しさを感じた。

Architecture Space / 建築, Dialy / 日常, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 7 24, 2005 19:47 | TrackBack (0)

14 juillet

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7月14日は、フランス語で『Le Quatorze Juillet』。
つまり、フランス革命を祝う『fete de national』でした。
今年はフランスにおける『ブラジル年』 と言うこと、
軍事パレードでブラジル国旗が登場したり
夜はサンバと共に花火が打ち上げられたり。

フランス滞在 一年目で、パリで行われる一通りイベントを経験しているので
二年目は「どのイベントをどのように楽しもうか?」という余裕が出てきた。

今回は写真家の洋司さん、MICHEL KLEINのデザイナー、コウジさんたちと
「CHAMPS DE MARS公園」で花火待ちのピクニック。

花火もきれいだったけれど、公園に集まった群集が物凄い迫力。
キューブに刈り込まれた樹木に挟まれた、軸線を持つ広場には、
フランス式庭園のテクスチャーのように人の頭が広がっていた。
日本の花火大会もすごい人出だけれども
『見渡せる場所 』(=広場)の存在は、群集の迫力を増幅して
群集×自分 という形で興奮をも増幅している気がした。
ちょうど「競技場に居るような状態」と言ってもいいのかな。

『見渡せる場所 』(=広場)の存在は、
デモをすぐ行ったりする熱狂的なフランス人(パリ人)の国民性を
構成している一要因なのかな?とボンヤリつぶやいた7月14日。

Dialy / 日常, Event Lecture / イベント, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 7 20, 2005 15:48 | Comments (3) | TrackBack (0)

巴里の夜景

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数日前に誕生日を迎えました。
幾つかのメッセージが届いたり
同僚と昼食にワインを飲んだりして
とても良い日々でした。

写真は午後9時のCHAMP DE MARS公園。
つまり『夜景』 です。

このような気候であることもあり
最近はとても良い気分。

Dialy / 日常, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 7 4, 2005 7:30 | TrackBack (0)

安藤案も建設中止

ここで僕がプロジェクトの行く末を心配するには訳がある。
その理由として、DES HALLESの設計競技のゴタゴタに加え
安藤忠雄さんが設計競技で勝った美術館を含む
Seguin島の再開発自体が
ここ
にあるように簡単に中止になってしまったことが挙げられる。

Seguin島の件は、フランスの大富豪PINAULT(PRINTEMPSFNACの所有者)と
Boulogne市との方向性の不一致が原因だが、
フランス国内におけるの様々なレベルでのオーガナイズの悪さを
非常に良く(も悪くも)象徴している。

Architecture Space / 建築, Art / 美術, News / 新着情報, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 5 30, 2005 9:36 | TrackBack (1)

国際設計競技に勝つ

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JAKOB+MACFARLANEにおける僕の初担当プロジェクトが
国際設計競技で1位を獲得した。
現在、プロジェクトの実現に向け、市との調整が始まっている。

それに合わせて、Pavillon De L’Arsenal(日本で言うギャラリー間)で
上位11案のプレゼンテーションと模型が展示されている。
そこにはFuture Systemsやフランスの若手建築家Manuelle Gautrandの名前もあった。

設計競技の概要をさっと書いてみると、
セーヌ川左岸再整備プロジェクトの一つで、
国立図書館近くの川岸に
昔、倉庫として使われていた12000平米の建物が建っている。
セーヌ川に開きながら、商業施設、文化施設等、レジャープレイスを
この建物の躯体を活用して構築するのがパリ市からの要求。
躯体を利用するのは、セーヌの水運で発展してきたした「パリの記憶」を
オブジェクトとして継承しようとするものだ。
内部の諸施設は、今後の市との協議で変更があると思う。

圧倒的な敷地の特性(セーヌ川との関係)と
特殊な既存躯体を残した改修計画と言った強いコンテクストに導かれ、
どの案も方向性が非常に似ている。
躯体は、セーヌ川に平行して細長く伸びており、
川の直角方向には4つのスパンを持っている。
「川と直角方向の4スパンに異なる機能、または形態をパラレルに並べた案」
もしくは、
「躯体を皮膜でまるごと包み込み、その皮膜が設定条件によって変形していく」
というのが、だいたい全ての案が持っている方向性。

僕らの案は後者に属していて、動脈のように躯体から皮膜が盛り上がり
そこが館内の動線や屋上レストランのサービススペースになるというもの。
JAKOB+MACFARLANEの作品Restaurant GEORGE(Centre Pompidou内)の
床面の一方向への形態操作を、屋根面・外壁面の3次元方向への形態操作に
拡張したものだと言えるのかもしれない。

パリ市内、もしくは周辺の巨大プロジェクトが立て続けに、
変更、中止されているだけに僕らのプロジェクトの行く末が心配だ。
「この案は実現するのだろうかと」と不安になってしまう。

Architecture Space / 建築, Event Lecture / イベント, News / 新着情報, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 5 30, 2005 8:42 | Comments (3) | TrackBack (1)

BACCARAT GALLERY-MUSEE

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NOUVEL(ヌーベル)事務所の山添ナオリさんが薦める
『BACCARAT GALLERY-MUSEE(バカラ美術館)』へ。

昔、大金持ちが、芸術家や作家、音楽家のために
サロンとして開放していた邸宅を改修したもの。
設計は『Phillipe Starck(フィリップ・スタルク )』
鏡やスケール操作を多用した空間は、
『ハイパー・リアル・ゴージャス』と言う感じで、
本物の高級品で作られたディズニーランドのよう。

『本物の高級感 / 似非ゴージャス』の境界とは何なのか少し分からなくなる。
スタルク特有のギャグセンスでこれらの境界を積極的に曖昧にすることで、
現在流行のブランド建築の『意味』と言うか、『在り方』を
『高級』の意味と共に問い直しているのであれば、頭が上がらない。

彼に限ってそんなことはないかな?

ちなみに僕の腕時計は彼のデザインです。

Architecture Space / 建築, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 5 22, 2005 21:50 | TrackBack (0)

LA NUIT DES MUSEES

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5月14日、『LA NUIT DES MUSEES(ラ・ミュゼ・ニュイ)』に行ってきた。
『NUIT(ニュイ)』はフランス語で、『夜』とか『夜間』という意味で、
つまりは、午後の7時から夜中まで無料(一部は有料)で美術館が開放されるというもの。
閉館時間は美術館によって異なる。

パリ市のみのイベントだと思っていたんだけれども、
公式サイトを見ると、フランス国内どころか
ヨーロッパ中で同時開催されているようだ。

僕は『INSTITUT DE MONDE ARABE(アラブ世界研究所)』
『MUSEE DU LOUVRE(ルーブル美術館)』を見る。
『INSTITUT DE MONDE ARABE』の展示室に入るのは今回が初めて。
北側立面の『機械仕掛けの日よけ』は確かにカッコイイと思うが、
全体を見ると『現代の有数の名建築』といわれるほど
良い建築家なのかは正直分からない。

『MUSEE DU LOUVRE(ルーブル美術館)』では『ハンムラビ法典』を見た。
『目は目を、歯に歯を』の語源になったものだ。
『報復のための暴力的な教え』だと思われがちだが
報復合戦を抑えるために、最小限の『報復』を許可したものだとか。

『事実』とは、何時の時代も『解釈』と『伝達手段』の上で
儚く揺れる、曖昧な存在だ。

Event Lecture / イベント, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 5 22, 2005 21:27 | TrackBack (0)

東京とパリの夜景

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恥ずかしながら、今回の一時帰国で始めて『森美術館』に行った。
『東アジアの現代美術』展が行われていたが展示もほどほどに
六本木ヒルズの展望台、『東京シティービュー』へ。

『東京シティービュー』から見る東京の夜景はなんともロマンティック。
光のない海と皇居、
遠くでゆっくりと回転するお台場の観覧車、
夜空に刺さるように聳え立つ新宿副都心、
そして街の心臓のように温かく光り輝く東京タワー。
色々な『光』を手がかりに、東京の形態を立体的に把握していく。

『光』の状態を見ていて思ったのが「東京」と「パリ」の違い。
何が違うかと言うと『光』の分布が違う。

パリを見下ろすと、
MUSEE DE LOUVRE
SACRE-COEUR
TOUR EIFFEL
AVENUE DE CHAMPS ELYSEES
NOTRE DAME
などといった市内の中心施設(と呼んでおく)が
薄暗いパリの中で、点となって強い『光』を放っている。
この点と点を繋いでいくことによって
簡単に街の構造を理解することが出来る。

一方で、東京は全体が均一に光を放ち面的に繋がっている。
海、皇居、観覧車、副都心といいた、微妙に異なる『光』の状態を見付け出し、
これを注意深く紡いで、初めて街の構造が理解できる。

『光』の状態は都市が持つ「構造」の強弱を
そのまま表しているような気がする。
夜の『光』はそのまま人々の『活動』の分布に繋がっているはずだから
東京では、均一、かつ同時多発的に『活動』が行われているのかと
『メガシティー東京』のパワーに驚く。

Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 5 17, 2005 21:46 | TrackBack (0)

PARIS COLLECTION

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現在、PRET-A-PORTER(プレタロルテ)の『PARIS COLLECTION AUTOMNS-HIVER 2005』
が開催されています。
PRET-A-PORTERとHAUTE COUTURE(オートクチュール)、合わせて年4回開催される
『PARIS COLLECTION』 ですが、いくら巴里に住んでいても
普通に生活していると、この「ファッション界最大のお祭り」に
接することなく過ごしてしまうのが事実。

今回は巴里滞在10ヶ月目にして初めてこれを見に行きました。

幾つかのDEFILE(ファッションショー)に
INVITATION(招待状)なしで挑戦したんですが
何とかCHLOE(クロエ)だけは見ることが出来ました。

雪がチラツク会場の前で、
ファッション関係の学生と思われる人にまぎれて警備員と交渉。
開場30秒前になだれ込むように開場入りし、立ち見でこれを見る。

開場の雰囲気にタダタダ圧倒される。
ファッション雑誌をパラパラ見ながら
『女性のファッション(服、鞄、靴など)は面白いなー』と思う程度だったのですが
服、モデル、メーク、開場、音楽・・・・・・・・・
この数十分のDEFILEのためだけに、全ての要素が周到に用意された空気の中、
洋服の可能性のようなものを感じた。

物であったり、音であったり、
その『場』を作る全ての要素をある方向に向かって、かみ合わせることが出来れば
本当に面白い状況が起こるものだと当たり前のことながら実感しました。

Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 3 7, 2005 10:12 | TrackBack (0)

巴里の空

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下を向いて歩いていたら、空が見えました。
『ドキ』っとして、
本物の空を見上げた、そのときの写真。

Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 1 27, 2005 9:55 | TrackBack (0)

改修工事

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先日、去年からはじまった事務所内の改修工事が終わった。
模型室のぼろぼろなった床や壁を剥がし、
表面を平滑にし、白と灰色のペンキを塗っていくというもの。

写真は工事中ではなく、完成した状態。

長い年月の間に何度も改修されているこの部屋には
過去の痕跡が昔の窓枠や扉の建具として残っている。
これらの目地が徹底的に消去されることで、
室内は起伏のある一枚の表面のように仕上げられる。
そこでは、
天井についているはずの『蛍光灯ユニット』が一方の壁に無造作に立てかけれら、
もう片方の壁を、居住空間には使われない『工事用照明』が照らしている。


それだけの事なんだけれども、
これらの『ズレ』の集合が
一般的に『ホワイトキューブ』と呼ばれるものとは決定的に異なる
『抽象的』な空間を生み出している。

普段、慣れ親しんでいる場所が変化したので
特別に気になっているだけかもしれないと思いつつも、
『おもしろい空間』を大掛かりな操作を施さずに作ることは可能なんだなーと
改めて実感する。

現在は、この場所には大きな机がひとつ置かれ
そこで、JAKOBとMACFARLANEがひたすらスケッチしています。

Architecture Space / 建築, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 1 24, 2005 8:51 | TrackBack (0)

新年

プロジェクトの締め切りを複数抱えていたので
(コンペと、実施設計などなど)
新年最初の書き込みが今日になってしまいました。

今年もこんな速度(週一回程度)での書き込みになりますが
よろしくおねがいします。

Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 1 17, 2005 9:52 | TrackBack (0)