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田原総一朗×花田紀凱×矢崎泰久

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 ちょっと前の話になってしまうんですが、9月8日に“月刊「創」プレゼンツ「メディア・市民・国家」”というイベントへ行ってきました。場所は新宿ロフトプラスワン。このイベントは1部と2部があって、↓のような題材とメンツでした。

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第1部(雑誌論)
【出演】田原総一朗(ジャーナリスト/『オフレコ!』責任編集長)、花田紀凱(『WiLL』編集長)、矢崎泰久(『話の特集』元編集長)

第2部(メディア論)
【出演】森達也(映画監督・作家)、鈴木邦男(一水会顧問)、斎藤貴男(ジャーナリスト)

【総合司会】篠田博之(『創』編集長)
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 第2部に関してはまあいつものメンツでいつものとおり。前日に作家の見沢知廉さんが飛び降り自殺で亡くなってしまい(見沢さんといったら一水会にいるときにやってしまったスパイ粛清事件ということで)、しばらく鈴木さんを中心に見沢さんのことを色々とお話しました。
 本当に惜しい人を亡くしてしまった。見沢さんの著書『天皇ごっこ』や『囚人狂時代』は文学として精度が高くて私も大好きなんですが、『調律の帝国』で三島由紀夫賞を逃してから、どうやら精神的にもしんどかったそうです。見沢さんがペンネームの名字を“見沢”にしたのは、自分の書いた本が本屋に並んだ時、隣に“三島由紀夫”がくるためだったそうで。彼の三島由紀夫に対する情熱は計り知れない。10月3日に新宿ロフトプラスワンで追悼会を大々的にやります。

 第1部のメンツは新鮮でした。矢崎さんはロフトプラスワンのヌシみたいなものなので(笑)見慣れてるんですが、田原さんと花田さんはメディア界の人間にとっては雲の上の存在。かなり期待して行きました。会場も超満員。このイベントのブッキングは衆議院解散の前に行われていたらしく、まさかこんな絶妙なタイミング(この週末が衆議院の総選挙でした)で田原さんの話が聞けるなんて!
 とはいえ、トークショーはほとんど“田原さんに嫉妬する矢崎さん”で終始してしまったのが残念。70歳を過ぎて創刊した『オフレコ!』を田原さんが宣伝し、それに対して矢崎さんがイチャモンをつける、それを隣で花田さんがフフフンと笑っているっていう状況で……んー、もうちょっとなんとかしてほしかった。

 いくつか印象に残ったことを。

 もう選挙から2週間ちかく経つし、キョーレツなメディア戦略(というか、まるでバラエティ番組のようだったけど)で圧勝した自民党に唖然としすぎて各党のマニフェストなんてみなさん忘れてしまったかもしれませんが、“郵政民営化”(による“小さな政府”)をひたすらド派手に叫ぶ自民党のマニフェストに比べて、民主党のマニフェストは年金一元化や子ども手当てなどの一見地味な政策を“8つの約束”として提案するものでした。これを田原さんは「守りのマニフェストになってしまった」と言ってました。これはたしかにそうだなと。
 よくよく読んでみると別に守り体勢ではないんだけど、テレビではマニフェストをいちいち細かく取り上げることなんてしないわけで、そうすると岡田代表が党首討論なんかで言っていた「消費税率を3%あげる」(これはマニフェストに書かれていません。そのことについて「なんでマニフェストに書かないんだ」と指摘された時に「これだけ私がいろんなところで明言してるんだから、マニフェストに書いたも同然じゃないですか」と言っていた岡田代表には失望しました)というイメージだけが印象付けられて、守りどころか逆にマイナスになってしまいました。
 今後、このマニフェスト(と、それに連動するメディア露出)というものをいかに操縦できるかが選挙では重要だということを、民主党は思い知らされたんじゃないかと思います。

 もうひとつは「現実と理念」という話。各党がかかげる外交政策(おもに戦争に関するもの)について、靖国参拝賛成・反対、改憲・護憲、集団的自衛権の是・非などなど、問題に対する解決策を二項化する傾向にあるけど(それは論壇も同様)、実際には現実と理念の微妙なバランスがあるわけで。憲法9条が良い例で、もちろん理念としては非武装、しかし実際には最低限、個別的自衛権は必要。という話になってくると、解決策を二項化することに無理がある、ということでした。これはまったくもってそのとおりで、論壇でいつも壁にぶちあたるポイントなんですね。んー、難しい。

 以上、イベントレポでした。また長くなっちゃった。

行ってきました♪ | Posted by at 9 22, 2005 19:44 | TrackBack (0)

備忘録 050906

 夏もほぼ終わりに近づいてきました。ションボリです。今年の夏はかなり満喫していたので寂しい……。

 と思っていたところに、衆議院解散・総選挙という夏の終わりのビッグイベント(?)が舞い込んできました! と、喜ぶものでもないんですけど。総選挙を1回するのに1000億かかるという説や500億かかるという説がありますが(もちろん税金)、いったい本当はどれくらいかかるんだろか。
 まあでも面白いですよね。普段まったくテレビを見ないんですが、毎晩テレビの前にかじりついて、各党の党首討論、論客討論をゲラゲラ笑いながら見ています。ものすごいエンターテインメントぶりですよこれ。小泉首相は「総理の任期が終わったら、あとはみんなで勝手に考えれば?」みたいなニュアンスの発言をしてしまって大ブーイングを浴び、民主党の岡田さんは今回のマニフェストに将来的に消費税を3%上げるということを書かないのは卑怯だみたいな指摘に「これだけ私が公の場で発言してるんだから、マニフェストに書いてあるも同然だ」と開き直る。公明党は靖国問題について「総理の公的な靖国参拝はやめていただきたい」と、この大事な時期に明言しちゃうし(まあ別に全然いいですけど)、共産党と社民党は絵空事を相変わらず並べ立て(消費税を0%にするらしい・苦笑)、国民新党と新党日本はいまだもってどんなスタンスなのかハッキリせず。

 んー、悩む。


<最近行った色々>
・8/1【夏行事】神宮花火大会@神宮球場
・8/2【上映会】綿井健陽×広河隆一×高遠菜穂子@文京シビックホール
・8/5【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@下北沢club Que
・8/10【観覧】鈴木邦男×松尾貴史×斉藤貴男@新宿ロフトプラスワン
・8/11【お笑い】ピース単独ライブ~ジェシカ・パンディ~@新宿シアターモリエール
・8/12【ウクレレライブ】角森隆浩@吉祥寺曼荼羅2
・8/13【夏行事】バーベキュー@多摩川
・8/21【お笑い】千鳥のスーパートークパーティ@新宿ロフトプラスワン
・8/27【テクノ】メタモルフォーゼ@伊豆サイクルスポーツセンター

<最近観た映画>
・綿井健陽『Little Birds』(再)@文京シビックホール
・ロン・ハワード『シンデレラマン』(試写)@よみうりホール
・カール・ドライヤー『裁かるるジャンヌ』(再)
・ロベルト・ロッセリーニ/ジャン=リュック・ゴダール/ピエル・パオロ・パゾリーニ/ウーゴ・グレゴレッティ『ロゴパグ』(初)

<最近読んだ本>
・中村文則『土の中の子供』(初)
・渋沢竜彦『エロティシズム』(初)
・高橋哲哉『靖国問題』(初)
・小林よしのり『新ゴーマニズム宣言SPECIAL靖国論』(初)
・日本ビジュアル・ジャーナリスト協会『フォトジャーナリスト13人の眼』(初)
・野村浩也『無意識の植民地主義―日本人の米軍基地と沖縄人』(初)
・目取真俊『魂込め』(初)
・又吉栄喜『豚の報い』(初)


 書きたいことはたくさんあるんですけど……。


 まず宣伝。プロマリンバ奏者・三村奈々恵さんのインタビューテクノDJ・田中フミヤさんのインタビューやりました。サッカーファンはぜひ読んでみてください。音楽ファンも。


 <最近読んだ本>のとおり、靖国問題について、対極にいるおふたかた(高橋氏と小林氏)の著書をそれぞれ読みました。これが非常に面白かったんですが、“立ち位置が違うと、同じ物事に対してこれだけ見方や解釈が違うのか”と本当に驚かされ、むしろ靖国問題うんぬんよりもそちらのほうが興味深かった。

 ようするに靖国問題は“A級戦犯を祀っているのは対外的にもよろしくない。そこに首相が公式訪問をすると、日本が過去に行った侵略戦争を肯定することになる”“首相が公式訪問をすることは、日本国憲法第20条で定めている、政教分離(特に第一項の「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」)に違反するのでは”、というのが代表的な論点なんですが。

 前者に関しては“A級戦犯というのは東京裁判で勝手に戦勝国が戦敗国である日本を一方的に裁いたものであって、実際のところはA級戦犯と呼ばれる人たちが行ったことは国際法にも大日本帝国憲法にも触れていない”という反論。
 それに対して“日本が戦後復帰するきっかけとなったサンフランシスコ講和条約の第11条に「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする」と明確に記されているから、東京裁判を否定することはサンフランシスコ講和条約を否定することになり、よって戦後復帰でここまできた日本そのものを否定することになる”という議論が続きます。
 さらにそれに対して“サンフランシスコ講和条約の「裁判を受諾し」の部分の訳がそもそも間違っている。「Japan accepts the judgements」は正確に訳すと「日本は諸判決を受諾する」だから裁判を受諾したわけではない”という議論が続くわけですね(苦笑)。

 後者に関しては“政教分離というが、「追悼」というものを宗教儀式なくして行うのは不可能ではないか。政教分離とされているアメリカ合衆国だって、大統領は演説の前に聖書に手を置いている。むしろ宗教儀式のない国家追悼施設を別に造ったとしても、それは第二の国家神道となっていくのではないか。そう考えたら靖国神社には御剣と御鏡が祀ってあるだけで、位牌や遺骨があるわけじゃなので、唯物論の中国共産党が何か言ってきても「モノがないんだから指摘すること自体間違ってるんじゃないの?」と言えばいい”という議論になるわけで。

 ……と、ざっと書いただけでもわかるように、水掛け論なんですね。もちろん正しい歴史認識や事実確認は必要ですが(小泉首相のように、靖国神社のことを話してるのに「仏様」という言葉を使うとかっていうレベルの無知はもう致命的に恥ずかしい)、そこからはもう個人個人で考えて、自分なりに結論を出すしかないと思います。
 なのに何故ここまで大きな問題になってしまっているかというと、靖国問題が外交カードに使われてしまうからなんですけどね。もちろん国内でも政治的な切り札として使われる。現在の自公連立体勢もこのポイントだけは意見が真っ二つに分かれているので突きやすい。

 なんでもかんでも利権、利権、のこの世の中は、自分で考えて判断する余裕も与えてくれないんだなあとションボリしました。

乙女日記 | Posted by at 9 6, 2005 18:45 | Comments (11) | TrackBack (1)