アートプロジェクトについて 宍戸遊美レクチャー(その1)

2008年12月12日(金)、2008年度第4回ゼミナールとして、アーティストの宍戸遊美により、「アートプロジェクトについて」と題したレクチャーが行われた。以下はそのレクチャーに対するレポートである。

アーティスト宍戸遊美さんのレクチャーについて
杉田達紀
卒業制作
 舞台は沖縄であった。なぜ沖縄に決めたかという理由は一つ目に基地問題、二つ目に『自分の育った場所と違う所で何が出来るか』というものだった。基地問題はまさに沖縄の問題であり、そのこととアートというものの関わりを考えるのは、難しいことだと思う。そして、沖縄でも過疎化している商店街で昔は米兵のための繁華街であり手作りの看板などが並ぶ所を選んだというのは、町おこしの意味もあり、自分の成果が表に現れやすくていい場所だったと思う。
 店の中に作品を飾るのではなく、通路に作品を置くというものだった。多分空き店舗の中に作品をおくとあまり奥まで入って行きにくいが通路ということでそこを通る人が気軽に作品にふれることができコミュニケーションも広がるのではないか。子供たちとの交流はこの卒業制作が成功した一番の要素であったと思う。
 その場の全ての環境を受け入れて作品を製作して行くということは、場所が変わると作品も変わってくるということであり、無限にアートがあるということを表している。そしてどんどんと新しいプランが生まれてくるのである。時がたつごとに子供達が増えプロジェクトが発展して行く。
 この商店街が成り立っている理由として小学校があるからと考え、宍戸さんは5年生のワークショップを受け持つことになる。ワークショップが出来たのもコミュニケーションの力でたまたまこのクラスの担任の先生がアートについて興味があったからである。いろいろな人との交流は何よりも大事なことだと思う。どんなに力量があってもコミュニケーション能力がなかったらその力を発揮できないと思う、今就職活動をしている中でも同じことが言えるであろう。
 そのワークショップで感じたことは記号化された教科書で制限が多すぎるというものだった。確かに今まで特に違和感のなく教科書を使っているが、制限が多すぎるという考えは賛成できるもので、もっと自由な発想が重要であろう。
 バショカラプロジェクトでは、
場所探し(自分だけの場所)→つくる→言葉を書いてみる→仕上げる
というながれのものである。
 本当にみんな自由な感覚でものをつくっていて『自由』という言葉がぴったしと当てはまる授業にみえ、子供達の感性を高めるものに思えた。自分の小学校時代にはこのような授業は無かったが、子供達が普段どのようなことを考えているのかなどが浮き彫りになるとてもいい授業であると思う。このように『自由』な授業が今後の子供達には必要かもしれない。

アートプロジェクトの話を聞いて
光永浩明
 アートプロジェクトが具体的にどんなことをやっているのかという興味があったので、今回のゼミに参加させていただきました。話の中で、僕は宍戸遊美先生の体験談が一番関心をもちました。まず、自分が社会に出たらどうしたいのかを考え始め、経済の先生の「町おこし」がきっかけで沖縄でアートプロジェクトをやろうとした点です。僕はそれを大学受験の時に「自分は大学に入って何がしたいのだろう」と考えていた頃を思い出しました。その時は建物の構造に興味があってそのことについて詳しく知りたいと思ったので、短大の建設学科に入学しましたがそれらを重ね合わしてみたら、やはり「自分が社会に出て何がやりたいのか」というように自分を見つめ直す時期があるんだなと思いました。受験の時に、外見の雰囲気で見た限りで実際は分かりませんが、東大のような難関大学に合格する目標があっても、その後自分が何をしたいのかまだ決めていなかったり、考えたこともないという人が割と多くいたので、自分はどのようにして社会に貢献していくかが決まった時に人は少し成長していくものなんだなと思いました。
 学生時代にアートプロジェクトを自分の地元ではなく、沖縄を選んだのはすごいなと思いました。きっかけで行こうと思ってもそう簡単に行ける所じゃないし、しかも往復で5回で宿泊がタダなのだから僕には到底マネできないなと思いました。場所が1960年代のベトナム戦争時に大繁盛した中部の古座十字路の商店街にしたということで、写真を見た限りだと閉店していることもあってか暗くて不気味な雰囲気だなという印象がありました。そのマイナス要因になる雰囲気をアートによってポジティブに生まれ変わり、人が全くいなくても明るい感じで全然違うなと思いました。ちょっと意外だったのが作業している時やそうでない時でも町の人に声をかけられたら話すということです。作業をしている時はその作品に集中したいという勝手なイメージがあったので、話かけられたら話すというのは僕の中では意外でした。同時に、こうして町の人とコミュニケーションをとるんだなと思いました。
 続いて沖縄のある小学校で、1.場所探し、2.つくる、3.言葉に書いてみる、4.仕上げで構成されている「バショプロジェクト」というビデオを見せてもらって、小学生ということもあり、作品が十人十色でその子の性格がよくでていて面白かったです。最後にゼロタテの作品を見せてもらったんですが、残念ながら途中で寝てしまいました。しかし安らぎがあった感じがしました。
 こうしてアートプロジェクトの話をしてくれて、これらは建築関係と共通している所があると思います。宍戸先生も同じように思ったかも知れませんが、僕も建築を勉強する前は単に建物だけを造っていて、住民に関わるのも建物を建てるための説明会程度のものだと思ってました。しかし、住民とのコミュニケーションを取ることによって、新しい建物や未来を作っていくんだなということが分かり、アートプロジェクトも地元のコミュニケーションがなければいい作品ができないんだなと思いました。
 建築という分野にとらわれず、アートプロジェクトという別の視点から見つめるのも大事なことなんだなと思いました。

アーティスト 宍戸遊美さんのレクチャーを聞いて
小石直諒
 12月12日、アーティストの宍戸遊美さんのお話を聞かせていただきました。内容としては「アートプロジェクトについて」ということでした。
 一番初めに関わった卒業制作のアートプロジェクトでは、師事していた先生の影響もあり沖縄で町おこしのため、「CUVAプロジェクト」というものを企画したそうです。このプロジェクトでは当初、空き店舗などを利用させてもらう予定だったそうですが、やはり見ず知らずの人に貸すというのは商店街の人達にとっては難しかったのだと思います。そのため、商店街の通りをメインに作品を作ったそうです。製作過程では、学生や商店街の人達とコミュニケーションをとるために、
1.地元の人に話しかけられたら、作業中でもそうでなくても、必ず話す。
2.毎朝起きたら、商店街を掃除する。
ということを行ったそうです。1に関しては、他所からきた人が地元の人達とコミュニケーションをとるためには重要な要素になるのではないかと思います。2に関しては、掃除をすることで商店街という場所を使わせてもらっているので、掃除という行動も地元の人達から好感を得るためには、いいものだと思います。このような行動をしていたこともあり、2回目以降は空き店舗や住居を利用させてくれるようになったそうです。また、打ち上げの際には作品に対して様々な意見を出してくれるようになったということで、ごく小さな地域での事かもしれませんが、地域と密着して行うアートプロジェクトになっていたのではないかと思いました。このことは、TAPのときと同様に、住民たちがいる場所を提供してもらうときには、非常に重要な要素になると思います。
 このプロジェクトの一端で、小学校で授業をする機会があったということでしたが、このとき思ったことは教科書に書いてあるものは抽象絵画の技法についてばかりでつまらないということでした。そこで“にじみ"と“フィンガーペインティング"技法を使って、『自分の気持ち』をテーマに絵の具との対話を促すことをし、少しでも楽しいと思ってもらうようにしたそうです。
 「バショカラプロジェクト」では、小学生に学校のなかで好きな場所を紹介してもらい、それについて作品を作ってもらうというものでしたが、小学生たちは楽しそうに取り組んでいました。「CUVAプロジェクト」でも「バショカラプロジェクト」でも、小学生を対象に行っていますが、最近では図工(美術)があまり好きでない生徒も少なからずいるからということもあると思います。実際にこれらに関わった小学生たちは楽しそうに取り組んでいたので、今後はこのような授業が必要になってくるのではないかと思いました。
 最後に、今回のレクチャーを聞いて、建築にしてもアートプロジェクトにしても、『コミュニケーションをとる』ということは、非常に大切なことなのだなということを実感しました。

アートプロジェクトについて 宍戸遊美氏レクチャー
鈴木直樹
 今回レクチャーをしてくれた宍戸遊美さんは、最初にアートプロジェクトに参加場所は沖縄という、東京生まれの宍戸さんには異郷の地だったのではないかと思いました。参加理由としては予備校の先生が沖縄サミットに作品を出展していたということだったのですが、宍戸さんも言っていましたが基地問題、気候・方言などの環境問題があったにも係わらず沖縄でやったのはすごいと思いました。
 そこでアートプロジェクトをしていくと、子供たちとの「コミュニケーション」や雨漏りを利用した「マイナス要因をポジティブに」変化させたりと、自分たちが予想もしてなかったようなことが起きても、そういった問題さえも楽しく取り込んでいくというところにもアートプロジェクトの魅力というのがあるのかなと思いました。
 ホームステイ先の小学校でワークショップをした時に、一番最初に子供たちに自分の気に入っている場所を案内させるという「場所さがし」をしてみるとそれぞれが思い思いに違う場所を選んだのでとても驚いた。さらに「つくる」「ことばに書いてみる」「しあげ」といった段階を経て子供たちの作品が完成していった。やはり子供というのはすごく自分の感覚や感性が豊かだと思ったし、しかし作ったものを言葉にしてみるとなると少し難しそうに見えました。最後に子供たちに作品を作ってみてどうだったかを聞いてみて「気持ち良かった」という言葉に宍戸さんはとてもうれしかったと言っていて、ワークショップをやった側としてこれ以上の褒め言葉はないと思いました。
 その後コマンドNでやった氷見市を映像作品とするプロジェクトである“ヒミング”では終わった後でもヒミングアートセンターと呼ばれるものが出来、アートプロジェクトをやったことの成果が形となって残ったものではないかと思いました。
 今現在、宍戸さんは絵の方は描かずに外へ出てコミュニケーションをとって、人に会いに行くことが大事だと言っていましたが、それはきっと建築についても言えることではないかと思いました。モノづくりをする人というのは中にこもってばかりでは何も生まれないと思うし、外に出て見えなかったものに触れていくことにより何かが広がっていくに違いないと思いました。また、宍戸さんが予備校時代とは違うモチベーションを持って描いた絵を見てみたいと思いました。

美術=アートプロジェクト・宍戸遊美さんの講義を聞いて
高木彩名
 アートプロジェクトについてのお話を聞いて、直島や犬島のように、島という環境の中で島全体を巡ってアート作品に触れるものや、十和田市現代美術館のように道路沿いにアートが置かれていたり、取手のように団地からたくさんの作品がつくられていたり、宍戸さんの小学校の映像作品や、秋葉原のTVの映像ジャックなど、様々な場所と規模で、さまざまなアート作品があることを知った。
 直島や犬島に行って、瀬戸内海の海で、綺麗な景色で、アートに触れるのも楽しかったが、宍戸さんの話を聞いて、映像ができていく様子など、映像作品をみてアートプロジェクトへの興味がより大きくなった。アートプロジェクトは場所にあった提案や人によって作品が変わっていき、地域の人とのコミュニケーションによって新しいものが生まれ、表現するものがたくさんあることが面白いと思った。知らない土地へ行き、知らない人から何かを学ぶのも、そこから何かを作り出すのも自分の世界を広げていくきっかけなのだと思った。
 宍戸さんのように絵から映像へ表現を変えて、小さなアクションで広い世界へ繋がるのではないかという話を聞いて、違うモチベーションをもって、考えを広げていくことでまた違う面白いものが見つかるのではないかという楽しさがあると思った。自分の知らない世界や自分がやりたいと思っていることに対して、積極的に行動することが大切なのだと感じた。
 映像をつくるためにたくさんの人と関わり、コミュニケーションを通じてアートをつくっていくことは絵とは違うものがあるのだと感じた。コミュニケーションを通じて、映像が完成していき、アート作品になるのをみて、小学校のプロジェクトも、富山でのプロジェクトもコミュニケーションがあったからできたものだと感じた。
 街づくりをするとき、アートでの街づくりも、建築での街づくりも人とのコミュニケーションを通じて立ち上げることができる。その環境によって、人によって、作品の表現が変わってくる。コミュニケーションはどの分野においても、ものをつくるためには大切なものだと感じた。

宍戸さんの講演を聴いて
布施美那
 コマンドNというグループで活動されている宍戸遊美さんのお話を伺いました。初めに、彼女の生い立ちの話から、学生時代のお話からでしたが、卒業制作のために訪れたという沖縄においての活動はとても魅力的なものでした。
 卒業制作のために沖縄のとある商店街でアートプロジェクトを行ったそうです。そこはかつては沖縄に駐在した米軍兵たちによって栄えていた繁華街だったそうですが、宍戸さんが訪れたときには少し寂しい感じだったようです。しかし、そのような場所だったからこそ、そこに活気を取り戻すことができるかもしれないプロジェクトをやることに、意欲を湧かせてくれたのかもしれません。宍戸さん自身も、初めに見に行ったとき、いい印象だったとおっしゃっていました。
 しかし、学生という立場ではまだ社会に出たこともないし、プロジェクトのために空き店舗を借りる交渉が、つまりは店の人とのコミュニケーションをとるということが難しかったようです。そのような場面でも、通路を使ってart展示を行うことによって、そこから徐々に店の人、街の人、子供たちとコミュニケーションをとること、触れ合う機会が増えていったそうです。当時、宍戸さんたちはあるルールを持っていたそうです。それは、“話しかけられたら話を聞く”ということと、“毎朝商店街を掃除しよう”全てを受け入れてやっていこうということでした。これは簡単なことのようでとても難しいことだと思います。私なら、自分の住む場所ではないところで、もし自分の地元でも、積極的に人と話すというのには躊躇してしまうかもしれません。もしかしたら、自分のバックグラウンドを何も知らない人たちの前でだからこそ、そのときの自分の感じたままに動けるということもあるのかもしれませんが。
 このようなコミュニケーションの甲斐あって、プロジェクトの2回目以降には、「これだったら場所を貸してあげようか」など声をかけてもらえるようになったといいます。そしてもっと生活の場に入り込むためにホームステイを行ったそうです。商店街が成り立つためには子供たちが大事という風に考え、小学校でワークショップも行ったそうです。
 私にとって宍戸さんが沖縄で行っていたことは刺激的で、とても羨ましく思うことばかりでした。自分も同じようなことをやってみたいけど、どのように踏み出したらいいのかわかりません。学生で、ここまでのことをやり遂げたというのはとても羨ましかったです。

宍戸遊美氏のレクチャーを通して
柄孝行
 宍戸遊美氏のレクチャーを受け、アートプロジェクトについての自分なりの理解を深めた気がした。アートプロジェクトに関しては、以前ゼミでも取り扱ったものであったため、少し知識はあったものの、行動に移すための準備になにがいるのか、行動に移す際なにをはじめに行えばいいのかなど疑問点は多く残っていた。しかし、東京造形大学の卒業制作としてアートプロジェクトが認められ、予備校時代の恩師の誘いもあり沖縄に単独で行き、多くのプロジェクトをとおして現在に至っている話を聞いて、抱えていた問題の多くは解決できたように思える。
 中でも沖縄のコザ十字路近くの商店街で行ったプロジェクトと、小学校の授業の一貫として行ったものが印象的であった。商店街では空き店舗の一角をお借りして、商店街の人々とコミュニケーションをとりながらのプロジェクトの進行、ありとあらゆる要素(プラス、マイナス)をかかえながらいかにしてプロジェクトを作り上げるかなど、多くの問題を抱えながらも成功をさせた過程がとても印象的で、また沖縄の人々の寛大さ、親しみやすさなども同時に感じた。作品を作り、はじめは興味があまりない人々が徐々に興味をもち、プロジェクトのメンバーと交流をしはじめ、あらたなコミュニティを形成していく。名前も知らない人同士が協力していく過程はアートプロジェクトの影響力を多いに感じられた。また、小学校のプロジェクトでは『子供たちの自分の一番好きな場所を作品として表現してもらう』という趣旨をコンセプトに掲げ、場の調査やその場にこめられた思い、その思いを個人個人で形にして、最終的に発表していくという過程。このプロジェクトでは大人が得る影響が強かった気がした。子供たちがもつ素直さ、また常に興味関心を持ちすぐ手にとって行動に移す。これらを映像で見たときに、今私の中で欠如している部分であるように感じた。これらは一般的に大人といわれる人にも同様に感じられる良い影響ではないかのだろうか。
 アートプロジェクトとは継続していかなければ意味がないことが今回のレクチャーを通して感じた。知らない場に足を踏み入れ、その場の風習や伝統的なものを含んで進行していくプロジェクトを一度自分の身をもって体験してみたいと感じられたレクチャーでした。

表現をアクションへつなぐ
西島慧子
 宍戸遊美氏の「表現をアクションへつなぐことをしたかった」ということにとても共感した。
 表現者として作品を作りだし発表していくことだけに疑問を持ち、何か違うアクションへ繋げることが出来ないかと、取り組んだ卒業制作で行った沖縄アートプロジェクト。内容は、ベトナム戦争時代までアメリカ兵などで栄えていたが、今は地域の人の利用だけでかつての活気はあまり無い商店街で行うアートプロジェクトだ。アーケードなど商店街の自分たちで作り上げていくという人達が集まった手作り感のある商店街。出身の東京から出たことのない宍戸さんが、初めて訪れた沖縄という土地で活動する地域住民とコミュニケーションを取りながら進められていく過程が、作品をただ展示するのではなくアーティストを刺激し一緒に創作されていくことに繋がった。
 地域を活性化していくアートプロジェクトで、一番必要で難しいことだと思う。つまり、活動を行う地域の人の理解と協力をどのようにして得るのかということだ。宍戸さんは、滞在中は商店街の掃除・人に話しかけられたら話を聞くということを続け、まず、受け入れるということを意識したという。お笑い芸人の訓練でも、何を言われても聞き入れ、受け止めることから始めるということを聞いたのを思い出した。コミニュケーションをとる上で、まず相手の事を受け止めることは芸人になる人でも基礎となることに驚いた。日常生活の意識の中で、自分のことを優先してしまい相手のことをないがしろにしていることに気付かされた。自分の世界観には無いものを周りから取入れ、新しいものをつくり出すことが出来るアートプロジェクトではまず、周りを受け入れるコンタクトをいかにとっていくのかが重要なのだと感じた。
 商店街の空き店舗での活動から小学生とのワークショップ。
 『バショカラプロジェクト』
 “小学校のあなたの好きな場所を絵・音・粘土・ビデオ撮影・言葉などいろいろな表現方法で自分の中にある好きな場所のイメージを具体的な物にしてください”というもの。
 教科書から表現方法ばかり習ってきた子供たちが五感を使いながら自由に表現していくのは見ていて楽しかった。
好きな場所が自分の机の上の子が、鮮やかな色彩の作品でとても豊かな世界観が広がっていることが分かったり、学校にある音によって好きな場所を表現した作品によってその子がどんな気持ちでその場所を感じているのか感じとることが出来たり。ありふれた日常生活の空間をそこで過ごす時の気持ちを自分の中で思い出してみる。一人の表現をアクションへ繋いでいくことで周りと共感できるこのプロジェクトは個人の表現の可能性広げていくものだと感じた。
 見過ごされている空間を採掘し新しい価値をアートプロジェクトによってみいだしていく。その活動によって刺激され、その場所の住民や利用者に変化を起こす。表現者も新たな刺激によって表現の範囲が広がっていく。美術館で行われる展覧会と違い、多くの人と作品を共感しながらつくり上げられていくアートプロジェクトの素晴らしさを感じたのと同時にこのような活動に自分も参加したいと思った。

美術=アート
荒木由衣
 今回のレクチャーを聞いて、宍戸さんはアート・芸術を通して、人との関わりを大事にしている人だなと感じました。また、映像についても、言葉はなく、風景と音のみで何かを伝え、感じるという人間の五感に訴えるようなアートを手がけていて、これもアートというものなのだと初めて思いました。そういった意味でも、新しくまた違った世界観を学べたと思います。
 沖縄のプロジェクトも卒業制作についても、学生であるにもかかわらず、自分で資金を集め行動を起こし、実現させていたことに驚き、同時に尊敬しました。そこでも沖縄という地域でのプロジェクトであり、市民との関わりやコミュニケーションが大切になっていきます。そのことに関しても、子供から、年配の方までを巻き込んで、地域全体のプロジェクトにしていたことに驚きました。学生だからといって、最初からできないわけではなく、行動を起こせば、周りの気持ちを動かすことも難しくはないことがわかったと思います。沖縄の土地の雰囲気や宍戸さんの人間性が出ているのか、とても和める作品になっていると感じました。
 “ZERODATE”アートプロジェクトに関しても「コミュニケーション」というものがとても重要になっていると感じました。沖縄と同じように地域全体が参加するイベントになっており、誰でも身近にアート・美術・芸術を体験し実感できるプロジェクトになっています。1番魅力的だと感じたことは、宍戸さんのようなアーティストと気軽に会話を交わせることです。普通のアーティストは、〈雲の上の存在〉となり、なかなか一般人が関わりをもつことが困難だと思います。そんななかで、こういったプロジェクトを通し、子供のうちから、アートを体感できる環境はとてもうらやましく思います。
 今回のレクチャーを通して、芸術というものにももっと興味を持ち、自分から積極的にアートプロジェクトやイベントに参加できたらと思いました。私も、まずは行動をして、人との関わりを大切にしていきたいと思います。

美術=アーティスト
多田早希
 今回の第3回目のレクチャーではアーティスト、宍戸遊美さんのお話をお聞きしたのですが、授業時間と重なってしまったため、お話があまり聞くことができなかったので、宍戸遊美さんが携わっているアートプロジェクトについていくつか調べました。
CUVA Project
 2002年9月に活動が始まり、2005年3月まで沖縄市銀天街を拠点に、5名の東京在住のアーティストと銀天街によって展開されたプロジェクト。
 CUVAとは、悪い夢を食べてくれると言われるバクという動物の名前を逆さにしたら、良い夢を吐き出す手伝いをする動物になるのでは、という発想からCUVAとういネーミングがついた。このプロジェクトはアーティストが銀天街を訪れて、空店舗やアーケード内での展示や、商店街の方々、地域の子供達も参加したイベントを企画するなど、インタビューを繰り返し、見たり聞いたり、話をしたりしながら、その印象やインスピレーションから作品を作っていったそうです。
ZERODATE Art Project
 ゼロダテとは、大館出身のクリエーターが自発的に立ち上げたアートプロジェクトで日付をゼロにリセットし、もう一度なにかを始めるという、世代やジャンルをこえた活動を展開している。2007年には秋田県大館市大町商店の街空き店舗を拠点に空き店舗を約20使用して、120人以上の作品出品者による大型の展覧会を開催したり、2008年のゼロダテではアーティスト・イン・レジデンスという形式でアーティストが旧山田小学校に滞在し大町商店街で制作・展示している。またゼロダテ展は2007年から東京でも開催されており2008年には地域を青森・秋田・岩手にまで広げ「北東北アートネットワーク」と題し、県を越えた文化、芸術的交流を生み出すことで、新しい交流、をすることで広範囲な視点から街の活性化を目指すなど幅広い展開をしているアートプロジェクトです。
KANDADA
 「KANDADA」は「神田×DADA」という意味で、神田の街にダダイズム的視点をインストールしていき、そこから街の創造力を促して行きたいという理念のもとに名づけられ、神田の老舗の印刷会社である精興社の天高4m、約100㎡の1階倉庫をリノベーションしできました。今回のアートプロジェクトでは、オダユウジさんと寺澤伸彦さんによるアートユニット“DIG&BURY”がカンボジアを訪れたときに見た、大量虐殺跡地の殺戮の際に叫び声をかき消すために大きなスピーカーが設置されていた木から着想を得て、それを「矛盾」というキーワードに置き換え、『MAGIC TREE』という作品を中心に、立体や映像作品を通じて来る人に問いかけるというプロジェクトです。
 今回のレクチャーを通していろいろなアートプロジェクトを調べていく中で、旅で得た経験や地域との関わりなどアートというものは形式的なものではなく様々な経験、考えや思い、インスピレーションなどから生まれてくるものだと再認識することができました。そして、自分の身近な場所でも「KANDADA」などのアートプロジェクトが開催されていることを知ることができたので、そのようなプロジェクトに積極的に参加していきたいと感じました。

講演を聞いて
河野麻理
私はこれまでに映像作品というものにあまり接点がなかったので、今回の講演は新たな分野を見ることができとても楽しかったです。今回の講演が終わり、1番感じたのは、「商店街のアートプロジェクト」にしても、「バショカラプロジェクト」にしても1番大切にしているのは、人とのつながり、コミュニケーションだと思いました。そのコミュニケーションがとても大事でたくさんの人との関わりがあったのだという事は映像作品からとても伝わってきて、見た作品はどれもあたたかいものでした。小学生の表現というものは、きっとカメラを向けたりすると正直な表現はできづらいのではないかと感じます。カメラの前では、素直さがかけてしまうような気がしました。なので、その表現を大事にしようとするプロジェクトが台無しになってしまいます。しかし、映像の中には素直な子供とちの表情が溢れていて、あたたかい作品に出来上がっていて感動しました。また、大変興味深かったのが子供たちの考え方です。PCを粘土で作っている子供がいましたが、それを「自然を表現したかった」と言い、緑の絵の具で塗っていたことです。PCと自然とは、かけ離れているというよりむしろ、正反対に属するものなのにそれを結びつけようとするその感性が本当に自由なのだと感じました。周りから見たら、狭いと思われる場所でも、子供には広い=これから先広げる可能性が十分にあるのだというのがすごく共感できました。そんなことまでもわかるバショカラプロジェクトはとても面白いと思いました。そして、映像作品とは、作った人自身が伝えたいことと見た人には、もしかしたら違うことが伝わってしまうかもしれないとも思いました。しかし、そこがもしかしたら魅力的なところであるのかもしれないと思いました。そこにも、人同士のあらゆる感性の違いが生まれ、そして、それを通じてコミュニケーションもまたつながっていくのだと思いました。さまざまなことには、人とのつながりが大事だということが、今回の講演で改めて理解しました。

美術=アートプロジェクト
田中里佳
自分の中でアーティストというのは遠い存在でした。いまいち何をしているのかがわかりにくい物でした。今回のお話を聞いて、今までよりはアーティストについて何か理解できた部分があるのではないかと思う。
地方でのアートプロジェクトを通して自分の知らない習慣や人柄、街にあった提案など新しいことにたくさん出会って、そこから新たな表現や考えが生まれてくる。その地に長くいることで、地元の人たちとの交流が盛んになってより深いところまで理解ができたり、新しい刺激を受ける。自分と年齢の違う人たちとの交流を通して、忘れていたことなど多くのことが吸収できる。自分を表現する上で、さまざまなアプローチ方法が考えられることがとてもよくわかった気がした。
知らない土地にいって何かすることはとても大変なことであるけど、それ以上に吸収することのほうがたくさんあるということなのだと感じた。
私も今まで行ったことのない場所に行ったり、美術館で作品を見たり、違う文化に触れることで、新しい発想が生まれることが多くある。特に美術館を訪れて知識に無いことなどに触れるとなんでもいいから、製作意欲が沸いてくる。
 宍戸さんがおっしゃっていたように、「何かアクションを起こす」というのはとても重要なことであると感じた。起こした先に何があるのかが明確にわかっていなかったとしても、後にプラスになることばかりなのではないかと思う。
前回のレクチャー同様、自分の知らない領域に足を踏み入れることで、新たな発想が広がっていくのだということが理解できた。自分の領域が広がっていくことはとても楽しいことなのでこれからも、いろんな人、知らない街など、積極的に行動していきたいと思った。何においても、きっかけ作りはとても大切なのだと感じた。何かのスタートというのは、知らないところに突如現れるものなのかもしれないと思った。
今回の講演を聞いて、自分の思い、作品をどのような手段で、どのように表現するのかが大切なのだと思った。新しい場所・環境に積極的に行くことで自分の活動領域が広がり、それが制作意欲、新たな表現につながっていくのだということがわかった。
 最後に慎也先生がおっしゃっていたように、表現するものが違うだけで、何かを作り出すという点など建築もアーティストの仲間なのだということに気づいた。どこにいってもコミュニケーションというのは一番大切なものなのだと感じた。もしかしたら一番簡単な行為でありながら、難しい行為でもあるような気がした。

美術=アーティスト
島田梨瑛
 今回のレクチャーで最初に沖縄の商店街のアートプロジェクトについて聞き、手作りで作られたアーケードなどを見てとても面白く、素敵だと感じました。取手アートプロジェクトと同じように普通にそこで生活する人をアートの世界に溶け込ませており、文化、方言や気候などが異なる環境で、アートを通して人が交流できる所が魅力的であると思いました。
 また、アートプロジェクトをする中で商店街の掃除をしていたり、周りの人たちに溶け込むためにいろいろな努力をしていたのだと思い、その行動力がすごいと思いました。建築とアートプロジェクトは周りの人を巻き込みながら作品を作り上げていくところがあり、ほんとうに似ていると感じました。しかし建築の場合、住宅などは一生で一番高い買い物と言われるほどのものであり、専門家が携わらないと作り上げることが困難であるのに対して、このようなアートプロジェクトはいろいろな人たちが自由に作品作りに参加できるのが大きな違いであり、異なるところもあるのだと思いました。
 今までは美術と建築を比較したときに、互いに芸術であり、スケッチをしたり空間を作り出したりと似ている点がたくさんあるとただ表面的に感じるだけでしたが、レクチャーを聞く中で内面的な部分も似ているのだと感じました。美術も作る人以外に見る人や使う人がいなければ成り立たず、人と人とがコミュニケーションを作り上げるために必要なものだと思いました。
 また、映像を見せていただく中で、“バショカラプロジェクト”という所で、子供たちが自分の好きな場所を紹介している風景がとても楽しそうだと感じました。小さい子の発想は私たちにはとても思いつかないようなものがあったり、工夫している点がたくさんあり、いろいろな視点で物事を柔軟に考えていたりするのですごいと感じます。
 私自身、週に一度保育園にボランティアに行くことがあるのですが、やはり小さい子供たちの考え方や空想力は計り知れず、何もないところから作り上げたりするのが上手だと感じます。例えば、サッカーゴールがないときには代わりに棒などを使ったりして、自分たちで作ったりします。また、小さな隙間をダンボールなどを使って秘密基地のようにしたりなど、ちょっとした工夫で自分たちの世界を作っていく行動力や想像力がすごいと思います。なので、このプロジェクトを見ていてすごく納得し、いろいろな年齢層の人と関わり合う事で、自分の視野も広がるのと同時に素敵な空間が作れると思いました。
 映像を見たりお話を聞く中で私が持っていたアートのイメージがもっと膨らみ、美術館などとは違い、見て喜んだり感動するだけではなく、自分が参加したり作品に触れたりするプロジェクトは面白いと感じ、とても興味を持ちました。

アートプロジェクトについて 宍戸遊美レクチャー(その2)

ゼミナール | Posted by satohshinya at December 17, 2008 0:32 | TrackBack (0)