挿入された白い壁@luxembourg

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1882年に建てられたカジノ(ルクセンブルク建築家Pierre and Paul Funckによる)を改築した「Casino Luxembourg(カジノ・ルクセンブルク)」は現代美術の企画展を行う美術館である.改修はアーティストであり建築家でもあるUrs Raussmüllerによって行われ,1995年にオープンした.

ここでもやはり歴史的建造物の機能転用が行われているわけだが,展示空間として部屋の中に入れ子状にホワイトキューブが挿入されていることが特徴的であった.既存の部屋の壁ギリギリに白い壁がめぐっており,部屋と部屋の間や天井などから元の部屋のインテリアが覗いている.これには建物の展示への利用が恒常的に認めらたわけではなかったという背景があるようで,それを利用しておもしろい機能転用の方法を示している.その他にも道路側に向かって,ガラス張りの展示室が増築されている(webには,このパビリオンがジャン・プルーヴェによるものと書いてあるのだが……?).
ここでは「raconte-moi / tell me」展が行われており,12人(組)の作品が部屋毎に展示されていた.Melik Ohanianの映像作品の展示室では,明るい入口から奥の映像が映る部分に向かって,壁に白から黒へグラデーションが掛かっていた.実際には暗い部屋なので気が付く人はほとんどいないと思うが,印刷した壁紙を貼っている苦労の裏には,ホワイトキューブからブラックキューブへの移行をフィジカルに表現したいという意図が感じられた.バーゼルでも見たフランシス・アリスは,このホワイトキューブのあり方を逆手にとって,部屋と部屋の間を展示空間に選び,ホワイトキューブの外側の壁に映像を展示していた.映像といってもスライドプロジェクタを用い,床すれすれに路上生活者を小さく映し出すささやかな作品であり,それがこの展示空間にふさわしいものだった.上記の2つは見ることができないが(笑),webでは展示風景のMovieを見ることもできる.
クラシカルな建物にホワイトキューブを挿入した結果,それと同時に不思議な隙間が作り出された美術館.そういえば青木淳さんの作品にこんなものがあったことを思い出した.
ルクセンブルクにもmuséeskaartがあって,各美術館・博物館が無料になる.全ての情報をまとめたProgramme des muséesはwebでダウンロードも可能.
写真はルクセンブルク内のクレーン.足下は石を積み上げて固定している.ちょっと怖い.

美術 | Posted by satohshinya at September 6, 2006 0:52


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