アートにとって望ましい外部空間とは@luxembourg

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ルクセンブルクにあるデキシア銀行の本社を会場として「My Home Is My Castle」展が開かれていた.もともとロビー部分にギャラリー「Galerie l'Indépendance」が併設されていて,そこと庭園「Parc Heintz」を用いて現代作家の作品が並べられでいた.パナマレンコ,バルケンホール以外は,あまりなじみのないアーティストたちばかりであったが,なかなかおもしろい展示だった.

パナマレンコが置かれたギャラリーは,ガラス張りのロビーに絵を架けるための壁があるといった程度でたいしたものではない.一方の庭園は,もともといくつかの彫刻作品が展示されているのだが,邸宅跡の石積みが残されている趣のあるところで,それを用いた作品もいくつかあった.庭園に設置されている作品は何れも越後妻有を思い起こすようなインスタレーションだったが,中でもクロード・レヴェックのショッピング・カートを積み上げただけの作品は単純ながらも美しいものだった.後で調べてみると,レヴェックは水戸で個展もやっていて,妻有にも参加している(笑).
このような野外展示は場所に負うところが大きく,ここも遺跡が残る雰囲気のある場所なので成立しているような作品もあるし,場所をどれだけうまく利用しているかによって見え方が変わってくる.その意味では,レヴェックの作品は小高くなった高い木に囲まれた場所をうまく使っていた.ところで今年の妻有は行くことができないが,どうだったのだろう? あれも途中から作品を見に来ているのか,妻有の自然を見に来ているのかわからなくなり,作品が気に入ったのか,自然を気に入ったのか混乱してくる.まさにホワイトキューブとは正反対の主張する展示環境だ.そうだとすると,アートにとって最も望ましい外部空間はどのようなものか,という問いは成立するのだろうか? きっと意味がないだろう.つまり,アートにとって望ましい外部空間はデザインできないということだろうか?
この展示の情報はrhythm projectエントリーから得た.そうでなければ,こんな特殊な展覧会には行き当たらなかった.執筆者の遠藤さんに感謝.しかし,日本の銀行で現代美術展なんてやるかね? ちなみに立派なカタログを作っていて,それを会場で無料配布している.たいしたものだ.

美術 | Posted by satohshinya at September 5, 2006 23:24


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