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また落ちたYO!

 石垣島に住む友人が、「内地でこれ報道してる?」と教えてくれました。こちらでは事故当日の17日に毎日新聞と産経新聞に掲載されたようですが、私が見たかぎりテレビでは報道してなかったなあ(といってもテレビをほとんど見ないのでアレですけど)。こちらでは連日ホリエモンと耐震構造偽装問題ですからね。

 コレです(以下、毎日新聞 2006年1月17日東京夕刊より)。

 墜落:米軍機、那覇の東北東沖に パイロットは無事

 17日午前10時ごろ、那覇市の東北東沖約120キロの太平洋上で、訓練中の米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機(1人乗り)が墜落した。防衛庁などによると、パイロットは緊急脱出し、救出に向かった米軍ヘリコプターが午前11時ごろ、洋上を漂流しているパイロットを救助した。嘉手納基地は「パイロットは無事」としている。
 嘉手納基地や第11管区海上保安本部によると、現場は公海上で、米軍の訓練空域。周辺には南北約8キロ、東西に約1・8キロにわたって油が浮いているという。
 沖縄県基地対策課のまとめでは、同県内で昨年1年間に発生した米軍機のトラブルは63件あり、うち26件がF15戦闘機。【三森輝久】

※補足
 墜落機は嘉手納基地の第44戦闘中隊に配備。宜野座漁協によると、現場はソデイカ漁やパヤオ漁の漁場で、組合員も漁に行く場所。琉球新報は連日この事故について、詳しく報道しています。


 これを受けて、

【17日(事故当日)】
・沖縄担当大使は、嘉手納基地のジュアス司令官に遺憾の意を表明し、徹底的な原因究明や再発防止策を取るよう電話で申し入れた。
・沖縄県は米軍に厳重抗議し、墜落原因解明まで同型機を飛行中止にするよう要請。
・沖縄地域調整事務所のフランクリン海兵隊大佐は「不安を与え申し訳ないが、第18航空団の所属機であり、詳細については把握していない」とし、「一般論としては原因究明に60日間かかる」と述べた。その上で「乗組員の安全のためにも、飛行訓練を継続する必要がある」と語り、墜落事故の原因究明までの間の飛行中止を拒否する姿勢を示した
・外務省の梅本和義北米局参事官は17日、ラーセン在日米軍副司令官に電話し遺憾の意を表明。原因の徹底糾明と再発防止も申し入れた。ラーセン氏は「事故発生は遺憾で、原因の究明と再発防止に最大限努める」と答えた。

【18日(事故翌日)】
・米軍再編協議について米国防総省でラムズフェルド国防長官と会談した額賀長官は会談後の記者会見で墜落について「会談では直接の言及はなかったが、ラムズフェルド長官からは、横須賀の事件をはじめ、いろんな不祥事があったことについて遺憾の表明と弔意が示された」と話した。
・中城湾港第11管区海上保安本部は18日午前、F15戦闘機の墜落事故の現場付近で回収した物品を米軍に引き渡した。同本部が米軍側に回収品について問い合わせたところ「引き取りたい」との返答があった。
・米軍嘉手納基地は18日、事故後中止していた同型機の飛行を19日から再開することを明らかにした。沖縄県は「県民への配慮に欠ける。あくまで中止を求めていく」と反発している。
・飛行再開について米軍嘉手納基地のチャック・エニス大佐は「事故のあった17日から2日間飛行しなかったのは事故発生時の通常の措置。沖縄県民に配慮したのではない」と説明した。
・嘉手納町議会は18日、事故原因の究明まで同型機種の飛行停止と航空機整備の徹底、それにF15戦闘機部隊の撤去などを求めた抗議決議案を原案通り全会一致で可決。
・県漁連は18日午後、緊急の漁業制限等対策小委員会を開き、墜落地点の「ホテル・ホテル訓練水域」を全面解除するよう関係機関に求めることを決定。漁連が米軍の訓練水域の全面解除を求めるのは初めて。委員会終了後、記者会見した西銘会長は「那覇防衛施設局から事故情報の提供もない。原因が究明されないままの飛行再開は無神経だ」と憤った。

【19日(事故から2日目)】
・19日、米軍嘉手納基地はF15戦闘機の飛行を再開。午前9時ごろにエンジンを始動する音が響き、約45分後からF15が爆音とともに次々飛び立った。嘉手納基地は「全機体の点検を行い、安全が確認された」と飛行再開の理由を説明している。
・墜落事故を起こした嘉手納基地のF15戦闘機の同型機が訓練飛行を再開したことについて、政府は米軍が安全管理を徹底する姿勢を示したことを挙げ、事故原因が究明されないままの飛行再開を容認した
・西正典那覇防衛施設局長は原因究明までの飛行中止を求めていたが、19日の定例記者懇談会で姿勢を転換。米軍側が飛行の安全に万全を期すとしていると説明した上で「原因究明までは相当の期間を要する。操縦士の技量の維持、日米安保の任務達成のため、どうしてもF15戦闘機を使わざるを得ない。事情は理解できるので了解した」と説明した。

【20日(事故から3日目)】
・沖縄県知事は20日、米軍が県の飛行中止要請を受け入れずに19日から同型機の飛行を再開したことについて「大変な不満を持っている」と憤りを表明した。同知事は、事故原因が究明されるまで同型機の飛行を中止させるよう、23日に麻生太郎外相、額賀福志郎防衛庁長官、安倍晋三官房長官らに要請する。


 気になるところに色をつけましたが(ツッコミどころ満載)、どう考えてもこれは理不尽だと思います。ホリエモンも耐震構造偽装問題も大事だけど、これもすごく重要ですよね。米軍再編が進んでいるこの時期はなおさら。

 「原因究明に60日間かかる」と断言しているのに、2日後から飛行再開。「乗組員の安全のためにも、飛行訓練を継続する必要がある」と、意味がまったく分からない理論でごり押しし、「事故のあった17日から2日間飛行しなかったのは事故発生時の通常の措置。沖縄県民に配慮したのではない」と言い放つ傲慢なアメリカさんに、日本政府はサクッと“事故原因が究明されないままの”飛行再開を容認……しちゃうんですか。

 ……しちゃうんですか。

 ……しちゃうんですか。

乙女日記 | Posted by at 1 20, 2006 18:00 | Comments (2) | TrackBack (0)

ご臨終メディア

 simonさんのところで、ちょうどこの話になっていたので、別の場所に書いたテキストを貼り付けておきます。

<以下、貼り付け>

 宮崎勤が最高裁で死刑判決を受けましたが。

 リビングから聞こえてくるテレビの音声だけをボーッと聞いていて、なんの番組だか知らないけど、「宮崎勤被告が所有していた大量のビデオに関して、ほんのごく一部だけが幼児ポルノなどの異常なモノだったということで、逆にとても恐くなりました。(わりとノーマルだったことに対して)私たちの身のまわりで、もしくは自分たちの心にも闇が潜んでいる可能性がある、ということで」みたいな(ベタで陳腐な)内容を中年男性らしき声のコメンテーターかなんかが言っていたんですね。

 ……え? それテレビで言っちゃうの?

 と思ったわけです。その浅はかさは何なんだと。それに同意しているメディアの人間たちもいったい何を考えているんだろうか。

 発言の後半はまだいいとしても(発想の乏しさに唖然とするのは置いておいて)、前半の“宮崎勤被告が所有していた大量のビデオに関して、ほんのごく一部だけが幼児ポルノなどの異常なモノだったということで”。これおかしくないですか?

 当時、各メディアはこぞって宮崎勤が性的な異常者であって、部屋には幼児ポルノのビデオが何千、何万本もあったと騒ぎ立てていましたね。たしかにテレビに映ったガサの映像には、ビデオテープが入った大量の段ボール箱を運び出す警察の姿が見られたわけですが、そのほとんどのビデオテープが幼児ポルノだとメディアは決めつけて報道していたわけで。私たちも当然「そうなんだー、やっぱりねえ」と感じていたわけで。

 で、前に森達也氏と話をしてて「あれってほとんどが普通のビデオだって知ってた?」と聞かれて「えー、マジですかー?」と半分以上疑ってたんだけど、今回のこの報道で「やっぱりそうだったんだ! ……っていうか、それをテレビで言うわけ?」と驚愕したのです。しかも発言したコメンテーターはその“実は普通のビデオだった”というところに意見の軸を置いてるわけで。ほんと驚愕。過去にどんな報道をされていたのかとか忘れちゃったのかな?


 宮崎勤はもちろん異常者だし、姑息で卑怯だと思うし、死を与えられるほどの罪を犯したとは思いますが、この人がこんなことを言ってはいけないだろうと、さすがに左翼でもなんでもない私でも思ってしまった↓ 我らが純ちゃんは今年も爆走しています。

・連続幼女誘拐殺人:宮崎被告の「死刑は当然」 小泉首相

 まったくどいつもこいつも安易だ。松陰先生の本でも読もう。

<貼り付けオワリ>

乙女日記 | Posted by at 1 18, 2006 13:33 | Comments (7) | TrackBack (0)

備忘録 060105

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。今年の目標は“力を抜く”にしました。惰性で生きていきます。ということで、お正月は携帯の電源を切って、ひたすらひきこもっておりました。飲酒三昧。フォアグラ並みの肝臓です(10月にやった健康診断でγ-GTPが148という結果が出ました。女性の平常値は0~32)。


<最近行った色々>
・12/09【鑑賞】パパ・タラフマラ『百年の孤独』@世田谷パブリックシアター
・12/13【鑑賞】ザ・ニュースペーパー第68回公演@こまばエミナース
・12/14【ライブ】PEPPERMINT CAFE 25周年記念ライブパーティー@吉祥寺スターパインズカフェ
・12/15【受講】茂木健一郎×保坂和志@東京芸術大学美術解剖学
・12/17【鑑賞】茂木健一郎×高橋悠治@ICC
・12/17【ライブ】高橋悠治、高橋悠治×渋谷慶一郎@ICC
・12/18【ライブ】池上高志×渋谷慶一郎@ICC
・12/22【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@下北沢 lete
・12/23【テクノ】CHaOS@西麻布 yellow
・12/27【ライブ】Mr.Children@東京ドーム
・12/27【鑑賞】森達也×綿井健陽×鈴木邦男×阿曽山大噴火×篠田博之@ロフトプラスワン


<最近観た映画>
・サム・メンデス『ジャーヘッド』(初)@完成披露試写
・パク・チャヌク『オールドボーイ』(初)
・パク・チャヌク『復讐者に憐れみを』(初)
・エイアル・シヴァン『スペシャリスト』(初)
・イングマール・ベルイマン『叫びとささやき』(初)
・ジャン・ヴィゴ『ニースについて/競泳選手ジャン・タリス』(初)
・ジャン・ヴィゴ『新学期 操行ゼロ』(初)
・ジャン・ヴィゴ『アタラント号』(初)
・パク・チャヌク『JSA』(再)


<最近読んだ本>
・オーシュ卿(G・バタイユ)『眼球譚(初稿)』(初)
・野矢雅彦『猫のほんね』(初)
・中島らも『とらちゃん的日常』(初)
・五木寛之『不安の力』(初)
・森達也、森巣博『ご臨終メディア』(初)
・吉田修一『パーク・ライフ』(初)
・石丸元章『平壌ハイ』(初)
・見沢知廉『七号病室』(初)


 茂木さんの芸大の授業にまたまたお邪魔してきたんですが、保坂和志さんの話し方はけっこうユルくて拍子抜けしました。こういうキャラの方なんですね。授業の内容を聴きたい方はこちら。散文と韻文のくだりがとても興味深い。保坂さんは(当然なんだけど)本当に小説が大好きで、小説のことばかり考えてるんだなあと羨ましく思いました。私も小説が書けるような人間に生まれたかった……。
 授業の後、茂木さんの研究室にオジャマしてお鍋をご馳走になりました。ありがとうございました(茂木さんはたまにここを読んでいらっしゃるようで・笑)。インディペンデントのキュレーター、渡辺真也さん(「もう一つの万博」を作った人)を紹介していただき、色々とオシャベリしました。私の大好きなマリーナ・アブラモビッチと親交が深いそうで、11月にマリーナがグッゲンハイム美術館で行ったパフォーマンス「Seven Easy Pieces」についても色々と聞かせていただきました。真也さんによる詳細レポートはこちら。いいなあ。生で観たかった。

 ICCで行われたATAKによるイベントはもうすごかったのです。茂木さんと、音楽家の高橋悠治さんの対談はここ最近でベストの内容。色々と考えさせらることが多く、いまだに引きずっています。内容を聴きたい方はこちら。これはぜひみなさんも聴いて、考えてほしいです。モノを創ること、批評すること、言語の限界などなど……考えることが多い。
 翌日の池上さん(複雑系研究者で、うちのご近所さん)と音楽家の渋谷慶一郎氏による“第三項音楽”も大変興味深いものでした。非フーリエ的思考によるプログラム(セルオートマトン等)で吐き出された音たちは渋谷氏いわく「(いままでを刺身とすると)生の魚を扱っているようだ」とのこと。その感覚が聴いてる側も非常によくわかる。音が生きてるカンジがして不思議な体験をしました。今後このプロジェクトは色々な方向へ進んでいくようなので注目です。

 映画はイングマール・ベルイマン『叫びとささやき』が図抜けていました。70年代初頭に撮られたこの映画の色はとんでもなく美しい。北欧の森、真紅の部屋、純白と漆黒の衣装、女たちの静かな情動。これらすべてが静寂の中で、まばゆいほどのコントラストを作りあげています。傑作+必見。ベルイマンは天才ですなあ。
 ジャン・ヴィゴ作品はどれも良いです。『ニースについて』がいちばん好きかな。
 アドルフ・アイヒマン(ナチス親衛隊でユダヤ人強制移送の専門家=スペシャリストと呼ばれた)の裁判についてのドキュメンタリー映画、エイアル・シヴァン監督の『スペシャリスト』もすごかった。数百万人をガス室に送ったひとりの男が語る言葉は、あまりにも淡々としていて驚きました。「自分はただ忠実に義務を果たしただけで、組織の歯車として働いた自分に責任はない」と平然と言ってのけるアイヒマン。感情をあらわに激怒する検事長と、アウシュビッツから生還してきた証人たちの生々しい告白、そして冷静にこの裁判の目的(ユダヤ人虐殺について問うのではなくて、強制移送という役目にいたアイヒマンの罪について言及する)へ話の筋を戻そうと心掛ける裁判長。『フォッグ・オブ・ウォー』、『東京裁判』と並んで“人間の本質3部作”と呼びたいような作品。

 読書はえーと……バタイユの『眼球譚』ですね。第二部「暗号」のところを読んで、不覚にも泣きました(あまり泣くような内容じゃないらしいですが・苦笑)。いままで読んだバタイユのなかでいちばん心に響いた作品。これを最初に書いてしまったバタイユは、あとはもう違うアプローチからこれをなぞるしかなかったんじゃないか、と思わせるほどでした。
 石丸元章『平壌ハイ』を読んだら、がぜん北朝鮮ツアーに行きたくなりました。

乙女日記 | Posted by at 1 5, 2006 17:40 | TrackBack (0)