黒川泰孝+馬場兼伸 展示作品

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高松町ガレージ  東京都立川市 2004

外部に対して開くことが必ずしも心地よいわけではない環境下において、内部と外部が漸近した、包容力のある箱を置くことでさまざまな要求を満たしている。建物の外形は単純な箱形であるが、北側壁面を敷地形状に沿って斜めに振ることで、奥行き方向に伸びやかさを与えている。外壁にちりばめられたライトウォールは、昼夜を通じて内外に淡い光の表情を与える。その中に点在する黒い小さな窓は、周辺の雑多な環境を抽象的な風景としてフレーミングし、間仕切りガラスに反射しながら増殖する。そして、はじめから存在していたライトウォールに影響されて計画されたかのように、各スペースの用途と大きさの関係にルーズさを持たせている。

設計 メジロスタジオ  構造 日本大学理工学部/岡田章
敷地面積 118.34㎡  延床面積 158.15㎡  鉄骨造  地上2階


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白州山荘  山梨県北杜市白州町 2004

山々に囲まれた雄大な風景の下、甲斐駒ケ岳を眺めるための居場所をつくることが、施主からの要求であった。屋根を架けるだけで大地を領有するような素朴で力強い状態を意図し、方形屋根の持つ自然体のフォルムで内部空間を確保している。主室の床は隣接する水田の稲穂の高さに合わせられ、オレンジ色の床面がそのまま連続していくことを意図している。主室・ダイニング・キッチンは、それぞれ座位・机座位・立位の状態で目線が一致するように段差が設けられている。こうして、周辺の環境を引き込むフロアレベルと、建築的尺度による段差とが起伏を生み出し、内部空間を特徴づけている。

設計 メジロスタジオ  構造 オーク構造設計/新谷眞人
敷地面積 231.15㎡  延床面積 62.94㎡  木造  地上2階


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熊川の集合住宅  東京都福生市 2007

とらえどころの無い郊外の風景に対し、確かな存在感を纏った建築が求められた。北側の住宅地に対する圧迫感を軽減させるため、上階部分をセットバックさせ、反対に南側へオーバーハングさせている。この周辺環境との調整を意図した極めてシンプルな形態操作は、1階部分に軒下のバッファーゾーンを提供し、2階部分に開放的な幅広の共用廊下を生み出している。各住戸には南北を貫く形で、特定の用途に供することの無い自由度の高い通り土間を配し、リビングルームやベッドルームなどの各室はこの土間空間に面している。そして、外壁に開口部が規則的に配列されることにより、不特定な入居者の生活を抽象化することを意図した。

設計 メジロスタジオ  構造 構造計画プラス・ワン/金田勝徳
敷地面積 824.35㎡  延床面積 370.98㎡  木造  地上2階


井の頭の住宅  東京都三鷹市 2006

公園の裏手に建つ木造2階建て住宅の全面改修計画。バブル末期に建てられた既存住宅に対し、計画・設備・構造のあらゆる面を健全化するとともに、発注・解体・施工といった建設プログラムに施主自らが積極的に参加できることが求められた。設計に当たっては、こういった施主の活動を受け入れる「殻」と「中身」を設定し、施主の思いを受け止めながらも空間全体のバランスを保つことを目指した。具体的には、外壁を全面漆喰塗りとして「殻」の強度を担保しつつ、「中身」では素人仕事との相性を配慮し、既存部材を利用しながら極力単純な納まりとしている。

設計 メジロスタジオ   
敷地面積 62.10㎡  延床面積 88.55㎡  鉄骨造  地上2階


劣化によるメモリーのリレー  映像・音楽制作 2006

<情報化社会において私たちの身の回りにある様々なデータは、劣化せずに完全な状態で保たれていることが優れているとされている。しかしながら、例えば人間が辛い記憶を忘却することで社会生活を円滑に営むことが出来るように、また例えば20年前の色あせた写真にはなんとも言えない独特の雰囲気と連続感があるように、記録や記憶といったデータを劣化させることは必ずしも元の状態から劣ることを意味するものではない。/他者によってデジカメで撮影された風景をディスプレイに映し、それをまたデジカメで撮影すると言うことを数回繰り返し、ノイズを加えて劣化させていった。そのなかに私たちの建築作品や設計作業の風景も同様に劣化させ断片化した記憶としての都市の風景に連続させていった。/これら一連の作業は他者がつくった都市のコンテクストをどのように解釈し、そしていかにして建築を造るか、という設計行為そのものである。>メジロスタジオ

4展示作品 | Posted by satohshinya at 3 29, 2009 7:32


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