カンディンスキーの壁画@strasbourg

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「Musée d'Art Moderne et Contemporain de Strasbourg(ストラスブール近代・現代美術館)」は,世界遺産でもある旧市街に隣接した場所に1998年にオープンした新しい美術館.設計のアドリアン・ファンシルベールはラヴィレットの科学産業博物館が有名で,ここもガラスのアトリウムを持つ大味な建築である.

名前の通り近代美術と現代美術の双方を扱う巨大な美術館である.1階に近代美術のコレクション,2階に現代美術のコレクションが展示されている.それらは近代はブラックやアルプなどの一般的なもので,現代はダニエル・ビュランやニエーレ・トローニなど(ここでコレクションの一部を見ることができる).その周辺のあちこちに企画展示室が散在していて,訪れたときに行われていた企画展は以下のとおり.1階の大きな企画展示室ではアメリカ人作家Christopher Woolの平面による個展.奥にある天井高の低い展示室ではBernard Dufourの個展「Rétrospective en 40 Tableaux」,そのメザニン階ではジョン・ハートフィールド「Photomontages Politiques 1930-1938」展.奥のもう1つの展示室にはギュスターヴ・ドレの作品があり,その一角にJean-Luc Parantのインスタレーション作品が設置されている.2階のプロジェクトルームでは,部屋全体に斜めの床を作り出した大掛かりなDitler Marcelのインスタレーション.このようにさまざまな企画が行われていたが,あまりおもしろいものはなかった.展示室も何れも特徴のない一様な空間で,特筆すべき点のない美術館だった.
唯一その中では,近代美術コレクションの中で展示されていたカンディンスキーがデザインした陶製の壁画が興味深いものであった.これはミース・ファン・デル・ローエに要請され,1931年にベルリンで行われたドイツ建築展の会場の音楽室に設置された作品を再制作したものである.デザインももちろんのこと,セラミックの持つ表情がおもしろいインテリア空間の可能性を改めて示唆している.
ストラスブールには他にも美術館がある.大聖堂の横には,18世紀の古典主義様式による司教館であったパレ・ロアンが,今では「Musée des Beaux-Arts(美術館)」装飾博物館考古学博物館の3つのミュージアムに機能転用されている.2階にある美術館は14〜19世紀のヨーロッパ絵画をコレクションに持つ.その隣にある「Musée de l'Œuvre Norte-Dame(ルーブル・ノートルダム博物館)」は,14世紀と16世紀の建物を機能転用して11〜17世紀の絵画や彫刻をコレクション.一般的に日本語では博物館と訳されているが,美術館と呼べる内容.これらのミュージアムをまとめて紹介しているのがMusées de Strasbourgで,ここでは美術館と博物館の区別は存在しない.
写真はストラスブール駅をガラスキャノピーで覆うという意味不明なプロジェクトの構造.パースを見ると,前面だけが覆われるらしい.何のために?

美術 | Posted by satohshinya at October 3, 2006 9:44


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