丘の上と旧市街@salzburg

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「Museum der Moderne Salzburg(ザルツブルク近代美術館)」には2つの建物がある.丘の上にある新しい建物が「Mönchsberg」,世界遺産でもある旧市街の中にある古い建物が「Rupertinum」

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「Mönchsberg」は,ミュンヘンの建築家Friedrich Hoff Zwink(若い!)がコンペに選ばれて2004年にオープンしたもので,旧市街のさまざまな場所から見上げることができる大変に目立つ場所に建つ美術館.丘の上まではエレベータ(有料)で上がることができ,EVホールに美術館のエントランスが直結している(この断面図参照).最近のミニマルなデザインで,階段部分のスリットで展示空間を分けながら段差のある敷地に対してうまく納めている.床はモルタル,壁はRC打ち放しで,おまけに天井も全てRC打ち放し.よくやっていると呆れる一方で,敷地の関係で高さが抑えられたためか,展示室の天井高さがあまり高くなく,自然光も時折開けられた窓だけで,スリット状の動線空間には光が降り注ぐものの,肝心の展示室はRCの天井に埋め込まれた蛍光灯が並ぶだけでもの足りない.
メインの展示は,「ZERO」展という1960年代にフォンタナやクラインたちが中心となったZEROというムーブメントに関連した作家たちによる作品.その他に,Erwin Wurmという作家の個展「Adorno was wrong with his ideas about art」ZKMでも個展をやったことあり),「Kosmos & Konstruktion」というマレービッチなどのロシア近代美術のささやかな展示が行われていた.
「Rupertinum」は1350年に建てられた宮殿を2004年に美術館に改装したものだが,「Mönchsberg」よりも好感が持てた.元は外部であったと思われる中庭にガラス張りの屋根を架けており,そこを介しながら展示室を廻ってゆく.巨大なスケールの建物ではないので展示空間のボリュームはそれほど大きくないが,むしろ「Mönchsberg」のように横に拡がる展示空間よりは,プロポーションが適切な部屋がいくつかある方がよいのかもしれない.
モーツァルト生誕250周年ということもあって,ザルツブルクに限らずウィーンなどでもモーツァルト関連の展示などが盛んに開かれており,ここで行われていたRobert F. Hammerstielの個展もモーツァルトをテーマとしたものでありながら,現代美術だけあって「Vergiss Mozart(モーツァルトを忘却せよ)」というアイロニカルな内容.実際にモーツァルトが生まれた旧市街に位置する美術館の中で,映像を中心としたコンセプチュアルな作品を展開していた(この個展の全ては「Café Mozart」で観ることができる).その他「Reflexionen」というコレクション展も行われており,「Mönchsberg」ほど派手ではないが,内容のある展示を行っていた.
何れの美術館もザルツブルクの要所に位置していながら,現代美術までを対象とした展示を行っており,しかも2カ所もスペースを持って活動していることに驚く.もしザルツブルクに行くことがあれば,丘の上だけでなく,ぜひ旧市街の近代美術館を訪れてほしい.

美術 | Posted by satohshinya at June 20, 2006 15:59


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