ダークキューブ

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HfGのアトリウムが今度は展示空間として使われ,「Kunst Computer Werke」展が始まった.ZKMのホワイエも会場に使われている.

とは言っても,アトリウムには展示壁面がないのだが,メディア・アートの展示を行うことから,多くの作品がプロジェクタを使用するために暗い空間を必要としていた.その結果,仮設のテント地のようなもので部屋を仕切ってみたり,作品そのものを覆い尽くす巨大な部屋を作ってみたり,大掛かりな仕掛けが必要とされていた(展示作品はこちらを参照).

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例えば『Makroskop』という作品は,吊り下げられたスリット状の壁面に実際は映像がプロジェクトされているのだが,アトリウムのトップライトを覆っているものの,途中階の窓から外光が入ってきたりしていて,日中はほとんど作品として成立していない.メディア・アートにおいては,ある種類の作品では暗い展示空間が必須となってしまうのだが,いつもの光に溢れるアトリウムと比べると,どうも陰鬱な空間に見える.
これらのメディア・アートのための展示空間には,ホワイトキューブならぬダークキューブが常識となりつつあるが,果たしてそれしか方法がないのだろうか? 絵画やインスタレーションなどの現代美術が明るい空間を要請するのに対し,現代美術の多勢を占め始めているメディア・アートは暗い空間を要請しており,多くの展示空間はこの2つを満足させることが必要とされる.その結果,単純に展示室の照明を落とすことから,仮設の壁や天井を作ったり,展示用のボックスを作ったりすることになる.何れにしても仮設的,一時的な対応で,それらを展示するベストな展示空間への解答は得られていない.
作品については,Markus Kisonによる『Roermond-Ecke-Schönhauser』がとても興味深いものだった.詳しくはこちらの動画を見てほしいが,パースが付けられた白い模型の上に,webカメラによるリアルタイムの画像が映し出されるというもの(こちらもまた詳細なアーカイブになっている).その他,Holger Förtererの『Fluidum 1』,Andreas Siefertの『Dropshadows』といったインタラクティブな作品がおもしろかった.
その他,展示構成への工夫として,HfGのアトリウムの床が黒であることから,白いカッティング・シートを用いて作品名が床に表示されていた.それ以外にもライン状のグラフィックなどが会場の床全体に描かれていて効果的であった.

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詳細はよくわからなかったが関連展示として新しいインターフェイスが紹介されていた.大きなスクリーンの前に立って指を指し示すだけで,画面上の情報が選択できるという,『マイノリティ・リポート』でトム・クルーズが使っていたようなインターフェイスを実現していた.他にもオープニングの日にはIchiigaiのコンサートも行われた.

@karlsruhe, 美術 | Posted by satohshinya at June 19, 2006 13:54


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Comments

いつもきになっていたのですが、ドイツは展覧会ごとに消防の検査などは入らないのですか?日本の場合はそれが必要で悩みの種になります。スプリンクラーや煙感知器の位置を気にして間仕切りを考えなければならないですし。

Posted by hy at June 19, 2006 3:32 PM

展覧会ごとの消防の検査はやっていなさそうですね.もちろん,防災面への対応は必須ですが,検査までやっているのかな? 展覧会に関しては,日本ほどシビアではないように思います.
ちなみに,日本でもどの美術館もシビアなのかな? M美術館だったから大変だったのではない?

Posted by satohshinya at June 20, 2006 4:32 PM

防災認定品みたいなのがあってそれを使う感じなのですか?日本は基本的には届け出は必須ですよ。まあ時と場合によっては?な部分はだいぶありますがね(笑)

Posted by hy at June 21, 2006 7:14 PM

あ、そうそうそちらはフリーの展覧会エンジニアみたいな人はいますか?日本だとアーティストによってはアイデアを出してそれを実現するためにエンジニアがいたりします。

Posted by hy at June 21, 2006 7:18 PM

これは素材の話をしているの? それとも平面計画そのものの話? 防災認定品みたいなものがあるかどうかはわかりませんが,おそらくあると思います.
そういえばアートポリスの展示の時ですら,展示台が段ボールだったから,台の近くに消化器が置かれて人がポツポツと立っていた.不燃や難燃処理を段ボールにするととんでもないコストが掛かってしまうから.まあ,届けや検査はなかったと思うけど(県の人がやってくれていたのかな?).
ドイツでもある程度は規制があるんだろうけど,どこまでシビアなのかな? よくわかりません.
フリーの展覧会エンジニアについてもわかりません.少なくともZKMにはテクニカルなことを担当している人が何人もいます.おそらく,基本的には美術館の中でそういう人を抱えているのではないのかな? もちろん,アーティストとコラボレーションするエンジニアはいると思うし,プログラマーなんかもその1人だと思います.

Posted by satohshinya at June 22, 2006 10:40 AM

素材の話でした。僕の予想はヨーロッパは進んでいるからさぞ良い素材があるのだろうと想像していました。アートポリスの時はだぶん市が届出出してくれていたんだと思いますよ。
ZKMお抱えエンジニアですか、よいですね。日本でもM美術館だったらお抱えのエンジニアがいました。その人は面白い人で小林幸子の電飾のサポートとかしたことあるっていってました。日本だと全ての美術館でそのようなエンジニアがいるわけではないのでフリーな人が多いのだと思います。

Posted by hy at June 23, 2006 7:24 AM