『SURVIVE STYLE5+』とonedotzero

 昨日は六本木ヒルズにて、映画『SURVIVE STYLE5+』を観て、そのあと六本木ヒルズの東京シティビューでやってた『onedotzero_nippon 2004 opening events』とやらに行ってきました。

 まず『SURVIVE STYLE5+』。これは人気CMプランナー+ディレクターである多田琢氏と関口現氏がコンビを組んだデビュー作ですね。富士ゼロックス、アコムむじんくん、サントリーDAKARA、富士通FMV、サントリーBOSS etc...を手がけてる人たちが作って、浅野忠信、小泉今日子、阿部寛、岸部一徳、荒川良々が出演……ときたら、なんとなく想像がつく気もするんですが。

 はい、タイヘン楽しかったです。

 もちろん観る前からビールを飲んでゴキゲンだったので、純粋にこの作品の下品さ(もっと下品でもいいと思う)、くだらなさ、ポップさ、キッチュさ、を楽しむ余裕がありました。もうね、こういう作品はストーリーがどうとか、映画の撮り方がどうとか、意味の有無とか、そんなのはどうでも良くて、お酒でも飲んでポップコーンをつまみ、足を投げ出して「くだんねー。こいつらバッカだなー」とウヒャウヒャ笑うカンジでいいんだと思います。楽しんだもの勝ちというか。それにお金を払うかどうかは、観る側の心意気なわけで。真顔で批評するものではないような気がします。そういう映画もあってイイと思うんですけどね。映画フリークには許せないんですかね、こういうのは。

 まあ途中ダレた感は多分にありました。それが残念。こういう映画は客を飽きさせたらいけないと思うので、次から次へとガンガン押していくパワーが欲しかったです。最初の加速してるカンジはすごい良かったんですけどね。前半の阿部寛最高。もうなんか阿部寛は神でした(笑)。後半は岸部一徳が神。『鮫肌男と桃尻女』の岸部さんも最高に好きだったんだけど、今回の岸部さんも素敵。
 そういえばベタ塗りしたみたいな、ロモで撮った写真みたいな、ものすごいビビッドな色味と質感や、音楽の入れ方とかは『鮫肌男と桃尻女』に似ていました。細かいことを言えば、ストーリーの繋げ方が『アモーレス・ぺロス』みたいにスムーズだったらよかったなあと。かなり強引なのでちょっと萎える。

 総評としては、感じるものは何もなかったけど、タイヘン楽しかった。以上(笑)。


 で、映画をみたあとに展望台でやってる『onedotzero_nippon 2004 opening events』へ。イベントそのものは20時半からやってたみたいですが、単に友人がレコードを回すってことで行っただけなのでスルー。
 23時すぎに行ったら……なんだかものすごい人で驚く。すごい人なのにバーカウンターはひとつしかなくて、お酒を買うのも20分待ち、みたいな状況。業界人だらけで、椎名林檎とか岡本健一とか滝見憲司とかモデルさんとか、とにかくテレビや雑誌で見たことのある人がワサワサいました。すごいですね六本木ヒルズは。一般人もなんだかバキバキにオシャレしてました。その帽子どこに売ってんの? っていうようなオサレさんばかりで。

 友人のDJまで時間があったので、フロア(?)に行くと、four tetがライブをしていました。イマイチ。というか、音環境が非常に悪く、使ってるスピーカーとかもうぜんぜんダメで、音圧もなにもあったものではない。
 ので、友人(いつもはミニマルテクノ。この日はKARAFUTOというハウスめの名義で出演)のDJもイマイチ。聞いたところによると、かける曲のカンジとかも大まかに指定されていたようで(まあ田中フミヤにDJの内容を指定するバカがこの世の中にいること自体かなり驚くけど)、あげく即席のDJブースが客と同じレベルでろくな隔たりもないために、なんともやりずらそうにしていました。2面のスクリーン(壁にA3の紙を何枚もベタベタ貼ってるだけ……)に映し出された29970とかいうアーティストのVJも、何がいいのかサッパリわかんない。そもそもなぜ、わざわざ東京の美しい夜景を背中にしてまで、A3の紙がベタベタ貼ってあるスクリーンに映し出される映像を見ないといけないのかと……意味がわかんない。

 そんなこんなでまた憂国ですよ。

 別に期待してたわけでもないけど、こういうイベントは本当にいかがなものかと思います。最近この手の業界人イベントが多いんですが、どれもこれも質が低すぎて呆れる。音楽や映像を発信している人たちが、このレベルのイベントで楽しそうにお酒を飲んでオシャベリしているということが信じられません。「六本木ヒルズの展望台でfour tet呼んどきゃ客来るでしょ。DJはあえてハウス畑から呼ばないで田中フミヤにするってとこがセンスいいね俺たち♪」みたいな。
 特に“レセプション”とかいう名目のクラブイベントは本当にことごとく終わってるわけで、それはここ最近の“セレブ”の安売りとかもそうだけど、ようは選民意識を持った時点で人間は成長しないということですよ。選ばれてるという意識が安心を生み、そのぬくぬくとした狭い世界のなかだけで生きることで危機感を失い、問題意識を持つことがなくなった人間は終了しちゃってるなと(えーと、話がいきなり飛躍していますのでご注意下さい)。吉田松陰先生が『講孟剳記』(必読!)で言ってるように「無知無覚、すなわち目覚めることがなくて、みだりにみずから避け隠れるならば、これは自棄、すなわち自分で自分を投げ棄てるのと同じだと思う」ということですね。

 ……おあとがよろしいようで。

ちーねま | Posted by at 10 1, 2004 16:49 | Comments (3) | TrackBack (0)

『華氏911』

アメリカ合衆国大統領どの 9月10日の夜に、六本木ヒルズの映画館で『華氏911』を観てきました。その日は前日からほとんど寝てないのに、朝9時から夕方6時までヒルズの某企業で研修、という寝不足+疲労という状況だったものの、9月11日の前日ということもあって急きょ観賞。

 しかしヒルズの映画館ってすごいんですね。チケットを買うときに席を選べるので、一度チケットを買っちゃったら上映時間までフラフラできる。ビール、ワイン、シャンパンとかも売ってる。上映まで30分もあったため、童門冬二の『吉田松陰』(←オススメ!)をツマミにビールをぐいぐいいきました。映画が始まるまでにすでに2杯半を平らげていい気分。わりと空いてたので(そういえば外人率が高かった)、前の席のアームレストに足を引っ掛け、そっくり返りながらビールを飲み、映画観賞する女27歳(金曜夜6時半ですでに酔っぱらい)……そんな具合だったので、まあ感受性も豊かになっていて、笑うところは大いに笑い、ちょっとしたところでボロボロと涙を流し、途中10分ほど爆睡し(記憶がストンと抜け落ちてる)、かなり満喫してきました。

 かんじんな内容ですが。きちんとエンターテインメントになっていたのに感心する。まあ途中多少ダレたけど。ドキュメンタリー映画、しかもテーマが重いということで、ドキュメンタリー番組をデカい画面で観てるだけ、という状況に陥りやすいだろうなと思っていたんだけど、あんまりそういうことはなかった。皮肉ったセリフと皮肉った音楽がテンポよく埋め込まれてるからでしょうか。オムニバスの短編諷刺映画を観てるカンジかな。しかしムーアは本当に地道に、自分の足で材料を探してルポルタージュしてる、記者のカガミみたいな人ですね。その労力と情熱は本当にすごいと思う。

header_2.gif 特に(以下ネタバレ注意)、911が起こったちょうどそのとき、フロリダのとある小学校を訪問していたアメリカ合衆国大統領のところにスタッフが寄っていて「アメリカが攻撃を受けています」と耳打ちされたときのアメリカ合衆国大統領の表情。あれはもうなんというか、「あー、これが今のアメリカのトップに立ってる人間なんだ」と諦めにちかい気持ちで見るしかなかった。そのあと7分間(だったかな?)も、そのバカ面をさらしたまま『ペットの小羊ちゃん』という童話を生徒と読んでいたアメリカ合衆国大統領……。もうあの映像を手に入れたところでムーアは素晴らしい仕事をしたと思うんだけど、もっと驚いたのはそのビデオを映してた学校の教師のところへ、それまでに誰も、どのジャーナリストも訪れていないってことで。これはいったいどういうことでしょうか。

 たぶん普通に好奇心のある人間だったら、911の瞬間、アメリカ合衆国大統領はどこで何してたんだろうと思うはずで、フロリダの小学校を訪問してたことくらい簡単にわかるわけ。そしたらテロ攻撃を受けている瞬間、アメリカ合衆国大統領が子供たちと本を読んでたのもたぶんすぐわかるだろうし、その光景をだれかビデオに撮ってるだろう、どんな様子だったか見てみたいなー、という発想は普通に出てくるんじゃないかと思う。ジャーナリストだったらなおさら。それをいままで誰もやってなかったっていうのが不思議でしょうがない。その教師はべつに圧力をかけられて、いままでビデオを隠していたわけでもないのに(だから言ってみればムーアは普通に好奇心と探究心のままに動いて、大ネタを掴んだんですね。ちくしょー、私が先に行っときゃよかった)。
 アメリカのメディアも終わってるんですかね? まあFOXはとっくの昔に終わってると思いますが、他のメディアにはもっとがんばってほしいものです。自由とか独立とかを嫌味なくらい掲げてるアメリカ合衆国なんだからね。

 あとはそうですね、戦争に常につきまとう悲しい話や、目を覆いたくなるくらい下劣で無知なアメリカの兵士のコメントとか、顔に“欲まみれだもんねっ!”って書いてあるんじゃないかコイツってくらい低能の上院議員とか、かなりツライものもいっぱい見ました。最後がアメリカ合衆国大統領の、すばらしい言葉で終わるところも最高! あー、なんかブルーになってきた。

 私は戦争に関して、いまだによくわからないことが多い。実際に体験していないということが大きいわけだけど。それでも戦争というのは絶対にあってはいけないこと、してはいけないことだと思っていました。でもこないだ、某氏がふと呟いたことがすごく心に残っていまして。

 「しなくてはいけない戦争もあると思います。だって、大事な家族を攻撃されたら、守るために戦うしかないでしょ」

 たしかにそうだなと思う。だったら仕掛けなければいいってことで、特に今回のイラク攻撃なんて、大義名分は911だけれども、たしかな裏付けもなく起こっているのはもう明らかで(仕掛けた連中にとってはたしかな裏付けなんてむしろ迷惑なだけだし)。そのへんのところがよくわかる映画でした。

 ようは“無知は罪 ”ってことなんだと思う。これはすべてに言えることですが。無知というのは本当に罪深く、「知らない、わかんない」ですむことってほとんどないんですよね。偉大なる哲学者が“無知の知”から始まると言ってましたが、本当にそうだと思う。考える前にまず自分は知らないということを知らないといけない。そして知ろうとしないといけない。この地球上で今いったい何が起こっているのか、とか。これまでにこの自分が生まれ育っている土地で何が起こってきたのか、とか。

 ……話がわりとカオスになってきたので(苦笑)このへんでやめますが。

 ようするに賛否両論はあるだろうけど、この映画は観たほうがいいと思います。どこぞの誰かのように「政治的に偏っているから見たくない」と言って知ることを放棄するのは本当に愚かしいことだし、逆に「ムーア最高!」と手放しで絶賛することがファッションだと思ってる頭の悪そうなアーティストとかも本当に愚かしいと思う。

 みずから知を欲し、そのために勉強し、自分の頭で考えて、自分のなかで消化することが大事だと思う。そのあとですよ、他者と議論できるのなんて。

ちーねま | Posted by at 9 13, 2004 0:27 | TrackBack (0)