街の美術館@wien

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「Wien Museum(ウィーン・ミュージアム)」は,その名の下に多岐に亘る建物を擁していて,もはや美術館や博物館と一義的に呼ぶことはできそうにない.日本では法律上(博物館法)は博物館の中に美術館が含まれることになるが,それらは明確に異なって意識されている.しかし,美術館も博物館もミュージアムと呼ぶ西欧では,アート・ミュージアムと呼び分けることもあるが,それほど明確な区別をしていないように思える.

その中の1つ,「Wien Museum Karlsplatz(ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ)」に行った.1959年に開館したこの建物は,特に特徴のないいわゆる美術館建築に見える.2000年に中庭だったところにガラス屋根を架けて内部化したらしい.お決まりの張弦梁を使っている.更に今年の4月に改修工事を終えたところで,ロビー周りが新しくなったそうだ.
ここにはクリムトやシーレの作品がいくつか展示してあって,しかも額縁にガラスが入っていないし,監視員もいないし,監視カメラまでなかったかどうかはわからなかったが,とにかくあまりにも無造作に展示してあったので,思わず触ろうとしてしまう.というくらいに名作が何気なく展示してあり,とても好感が持てる.日本みたいに,作品保護のためにガラスが入っているのは仕方ないとして,下手くそなライティングのおかげでガラスに映り込んだ自分の姿ばかりが目立ち,肝心の絵が見えないということもたまにある.おまけに厳重に柵があったり監視員がいたりして,絵を見るどころではない.そんな状況と比べると,美術がとても身近なものに感じられる.
その一方で,アドルフ・ロースのリビング(ロース設計のリビングではなく,ロースが暮らしていたリビング)が移築されていたり,その他にもウィーンに関する美術品やら工芸品が展示されていて,やはり美術館と言うよりは,ウィーンに関する博物館という趣が強い.確かに館内の案内を見ると,1階には紀元前5600年から1500年までのものが展示されていると書いてある.開催されていた企画展「Wien War Anders」もAugust Staudaという写真家による1900年頃のウィーンの街並みを撮影したもので,郷土資料館の展示のようなもの.一方の「Kinetismus」展は,1920年代の動きをモチーフとした作品を集めたもので,地味な内容ながらも美術館らしい展示.

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すぐ近くにあるワグナーの「カールスプラッツ駅」(1899)も「ウィーン・ミュージアム」の一部(同じ建物が向き合って建っていることを訪れるまで知らなかった!).他のワグナー作品では「インペリアル・パヴィリオン」(1898)も同様.ハンス・ホラインがデザインした「Archäologisches Grabungsfeld Michaelerplatz」というローマ時代の遺跡を保存した広場も「ロース・ハウス」の前にある.その他にはモーツァルトの住居など,音楽家に関連した建物を多く所有している.
結局この「カールスプラッツ」は,やはり街の博物館だったのだろう.調べてみると,以前は「Historisches Museum der Wien(ウィーン市歴史博物館)」と呼ばれていたそうだ.

美術 | Posted by satohshinya at July 17, 2006 14:05


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