理想のデザイン

これこそが理想のデザインと思うものがある.祖父江慎氏によるブックデザインだ.もし,祖父江氏を知らない人がいるのならば,まずはこのインタビューのPDF完全版をダウンロードして読んでほしい.
端正で上品な装幀の対極にある,過激で過剰なデザインであるが,これらが本の内容を十分に表現したものであることは,インタビューを読めばわかるはず.ミニマルなデザインが持て囃されている一方で,こんなに豊かなデザインがあることに感嘆する.まあ,「Less is Bore.」ということなのかもしれないけれど,祖父江氏のデザインが本の内容を正確に具現化したものであることを思うと,決してデタラメに脱臼させたものなんかではなく,非常に高等なデザインである.
例えば,僕の手元にしりあがり寿氏の『弥次喜多 in DEEP 廉価版』があるが,これは『弥次喜多 in DEEP』全8巻を4冊にまとめて,廉価版としたものである.この8→4への巻数の変化は,廉価版1巻=旧版1巻,2巻=2巻,3巻=3+4巻,4巻=5+6+7+8巻とすることで対応している.しかも,1巻と2巻は同ページだが,使用している用紙の厚さが異なるので,1→2→3→4と等比級数的に本の厚さが増加している.それだけのことといえば,それだけなのかもしれないが,このことが実際に本を読むという行為にどのくらい影響を与えるのかを想像してほしい.これこそが本当のデザインだと思う.

来月には,ギンザ・グラフィック・ギャラリーで作品展が開かれ,作品集も発売されるらしい.こちらも乞うご期待.

| Posted by satohshinya at October 7, 2005 6:48


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