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コラボレーションという名のエクスキューズ

「アジアン・フィールド」を見た.アントニー・ゴームリー氏による,旧都立高校の体育館を会場とした巨大なインスタレーション作品.教室で使われていたと思しき椅子と机が並べられていて,それが体育館を別の場所に見せてしまう働きを持ってしまい,少し余計な気がした,素焼きの微妙な色の違いを完璧にコントロールした,アーティストによる配置だけで十分な気がする.入口に展示されている,粘土像とその作者の写真もおもしろい.
受付に置いてあった「毎日新聞」(だったと思う)の本展を紹介する記事に,中原佑介氏の文章が用いられていた.《コラボレーションという考え方には,創造する人間があり,その人間によってつくりだされた作品を鑑賞する人間がいるという二極構造の通念を壊す要素が存在していると私は思います.》「芸術の復権の予兆」『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003』(現代企画室)
もちろん,『アジアン・フィールド』は(中国における)壮大なコラボレーションによる作品である.しかし,一方で,コラボレーションが単なるエクスキューズでしかない作品が増えてきていることもまた事実ではないだろうか?

ここまで書いた後に,「テレビ美術館」でアントニー・ゴームリー氏のインタビューが放送されたのを見た.中国での制作風景,日本での展示風景のドキュメントが同時に流された.中国では,地下駐車場や穀物倉庫が展示に使われていた様子.やはり日本の机のように余計なものはなく,ただ大きな空間に並べられているだけ.この方がいい.simonも書いているように,視点が限られていない方がよいのではとも思ったが,やはりこの角度のこの間口(もう少し下がってみられればよかったけど.壁が近すぎる)で見るのが正解だろうと思い直していた.案の定,展示風景を見ると,手前の密度に対して奥の密度はかなり粗い(笑).そりゃそうだ.あそこからしか見えないからこそ,20万体という数が成立している.もちろん,粘土像自体の視線の問題もある.色についてゴームリー氏は,並べる際に「色が共鳴するように」と指示を与えたらしい.そして,完成したものに対して「海」という表現を使っていた.
どこかのエントリに《最終日》云々という記述があったが,本当の最終日は今日(28日)まで.一見の価値はある.撤去のボランティアも募集している.28日〜30日まで.

美術 | Posted by satohshinya at November 28, 2004 1:06 | Comments (3) | TrackBack (0)

全国のサッカーファンへ(もしくは全国の構造ファンへ)

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『スタディオ・オリンピコ』(1960)
ASローマとラツィオのホーム.ローマオリンピックのメインスタジアムとして建設され,ワールドカップ対応として90年に座席と屋根が増築.その屋根の構造をJ&P.ズッカーが担当した(らしい).先端のリング状のケーブルを締めることにより,屋根を保持している.

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『アルテミオ・フランキ』(1932)
フィオレンティーナのホーム.P.L.ネルヴィの処女作.キャンチレバーの屋根もいいが,スタンド裏にあった螺旋階段が美しい.階段自体とそれを支える梁によるダブル・スパイラルという不思議なもの.しかし,スタンドを支える梁も柱も細く,おまけにスタンドの鉄筋が露出しているところも垣間見え……。

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『アリアンツ・アリーナ』(2005)
将来のFCバイエルン・ミュンヘンとTSV1860ミュンヘンのホーム.H&deM設計のワールドカップ用スタジアム.アウトバーンから工事中の様子を遠目に見ただけなのでなんとも言えないが,よくなさそう.フッ素樹脂ETFEフィルムによる膜構造.この膜は日本製なのに,日本では法的に使用できない優れもの.

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『ミュンヘン・オリンピアスタジアム』(1972)
現在のFCバイエルン・ミュンヘンとTSV1860ミュンヘンのホーム.ミュンヘンオリンピックのメインスタジアムとして建設され,74年のワールドカップでも決勝戦に使用.ギュンター・ベーニッシュとフライ・オットーの設計.アクリル屋根による力ずくの造形.ベッケンバウアーが,こんなモダンではないスタジアムは使わないとか言ったとか言わないとかで,アリアンツ・アリーナが建設されることに.敷地内には,J.シュライヒ構造によるスケート場もあり,近所のBMW本社前では,コープ・ヒンメルブラウのBMWミュージアムが建設中.

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『ゴットリープ・ダイムラー・シュタディオン』(1933)
VfBシュトゥットガルトのホーム.74年のワールドカップでも使用.93年にJ.シュライヒによって屋根が増築された.06年ワールドカップでも使用.ローマと同様な構造形式だが,こちらの方が軽快で,屋根より上に外側のリングが出ているところが特長.目の前にUNスタジオの現場(オフィス?)あり.

ちなみに,ぼくは実際にサッカーをスタジアムに見に行ったことがないし,構造の専門家でもありません.あしからず.

建築 | Posted by satohshinya at November 27, 2004 14:32 | Comments (4) | TrackBack (0)

/04

坂本龍一氏のニューアルバム『/04』(スラッシュ・ゼロヨンと読む)がリリース.CM曲,映画音楽や過去の曲など,ベスト版的な内容.ただし,24年も前の曲をピアノ8台分の多重録音で収録するなど(本人曰く,「ピアノ・オーケストラ」),全く新しい作品.sitesakamotoでは,本人による全曲解説あり.

recommendation | Posted by satohshinya at November 24, 2004 6:45 | TrackBack (0)

鉄板

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『キョロロ』写真コンテスト参加.
何れも錆びた鉄板に見える手塚貴晴+手塚由比+池田昌弘3氏の『「森の学校」キョロロ』と遠藤利克氏の『足下の水(200m3)』.誰が考えたのか,これが並んで設置されている.一方は建築作品で,見えている鉄板は外壁であるとともに構造体である(らしい).一方は美術作品で,見えている鉄板の下には容積200m3の水がある(らしい).鉄板が構造体であったり,鉄板の下に水が入っていたりすることがどうやら重要なようだが,見ただけではわからない.もしかすると,構造体になんかなっていなかったり,水なんか入っていないかったりするかもしれない.いや,そうでなければ,構造体であったり水が入っていたりする鉄板が,構造体でもなく水も入っていない鉄板とどのように違うのか? それが問題.

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オマケに川俣正氏の作品『松之山プロジェクト』.『キョロロ』がある場所に作品を展開していたのだが,追い出されるように駐車場内を占拠して再展開.気持ちはよくわかる.

建築, 美術 | Posted by satohshinya at November 17, 2004 5:33 | Comments (8) | TrackBack (2)

舞城最新作?

舞城王太郎の最新刊『みんな元気。』の刊行を記念して,山手線沿線の書店店頭における意味不明なキャンペーンが行われている.「バラバラPOP漫画 on 山手線」というもの.舞城の最新作ということになる.地図上の右の方は見に行けそうだが,左はちょっと遠い.近所に用事があって行った方,舞城作のPOPを写真に撮って送ってください.ご協力お願いします.

| Posted by satohshinya at November 16, 2004 6:40 | Comments (6) | TrackBack (0)

更なるこの美術館が用意する組み合わせ

「COLORS:ファッションと色彩 VIKTOR&ROLF&KCI」「小沢剛:同時に答えろYESとNO!」(森美術館)の2つを見た.相変わらずの森美術館による2つの展示と展望台の抱き合わせ販売だが,今回は更にCOLORSを見ないと小沢が見ることができないシステムに発展.
小沢は期待通りの大個展.趣味に合わない人も多いかもしれないが,1つずつ丹念に見ていくと巧妙な仕掛けが理解できるはず.意外だったのがCOLORS.これがおもしろかった.展示品もともかく,シンプルでありながらもかなり質の高い(お金の掛かった)全体のインスタレーションは見物.これがまた小沢のチープさとあまりにも対照的で笑える.その意味では,今回の2つのセットは観光客たちがどちらか(きっと大人はCOLORS,子どもは小沢)に反応するであろうということでは大成功.一見の価値あり(あまりにも入場料が高いけど).しかし,さすがに今回は展望台には見向きもせずに帰ってきた.
それから,出口への質(たち)の悪いみやげもの屋のような動線には閉口.あれはどうにかなりませんか,森美術館?

美術 | Posted by satohshinya at November 16, 2004 5:59 | Comments (1) | TrackBack (1)

例えば日本語を壊すとすると

三浦基さんの演出による『三人姉妹』を見た.原作はアントン・チェーホフの有名な作品.それは見事に壊れた日本語で演じられていた.簡単に言うと,完成した日本語を壊れた発声により演じることで,日本語を壊している.後は劇評をリンクするのみ.詳しくはそちらを読んでほしい(劇評はいずれも初演のもの).
現代演劇なんか見たことない人,普通の劇場にしか行ったことがない人.そんな人こそ行ってみてください.きっと楽しめると思います.
  劇評1  劇評2

舞台 | Posted by satohshinya at November 12, 2004 0:36 | Comments (6) | TrackBack (0)

Antony Gormley

「アジアン・フィールド」
アントニー・ゴームリーによる,旧都立高校の体育館を会場とした巨大なインスタレーション作品.

recommendation | Posted by satohshinya at November 8, 2004 21:10 | Comments (2) | TrackBack (3)

真下慶治記念美術館

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『真下慶治記念美術館』
設計:高宮眞介,川島茂,佐藤慎也
構造設計:アラン・バーデン,田尾玄秀

recommendation | Posted by satohshinya at November 5, 2004 22:22 | Comments (9) | TrackBack (0)

開館@murayama

今日は山形.真下オープニング.

日記 | Posted by shinya_mobile at November 5, 2004 11:22 | TrackBack (0)

言の問い

上野近辺数カ所で開かれる「サスティナブル・アートプロジェクト2004 言の問い」では,セキスイハイムM1・MRをフィールドとしたプロジェクトが展開.中村政人さんの作品も上野桜木空き地に展示予定.

recommendation | Posted by satohshinya at November 4, 2004 15:44 | TrackBack (1)