美術のための美術館@stuttgart

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「Kunstmuseum Stuttgart(シュトゥットガルト美術館)」は2005年にオープンしたばかりの新しい建物だが,コレクションのスタートは1924年に遡る.ベルリンの建築家であるRainer HascherとSebastian Jehleの設計による建物は,一見して単純なガラスの箱に見えるが,実は基壇の下に広大な展示空間を持つ.

1階と地下が常設展示室だが,特に地下が細長く変な空間だと思っていたら,プランを見てみると両側から道路に挟まれている特異な敷地条件による結果であることがわかった(特設サイトを参照).実際に訪れた限りでは,そのような地下道路の存在は全く窺い知ることができない.その悪条件を解いているということを差し引いたとしても,この地下の展示空間はあまり魅力的ではない.敷地自体が細いのに,吹き抜けを介して上下階に関係を持たせているため,なんだかスカスカの締まりのない展示室となってしまっている.1階も基壇部分にトップライトを嵌め込んでいるのだが,その光の落ちる先は廊下ばかりである(この辺の写真を見るとわかる).展示空間をキチンと作るよりは,どちらかというと建築表現を優先しているように見える.
更に上階のガラスの箱に入るとその傾向は顕著で,2〜4階が企画展示室だが,ガラスが廻るのは廊下状の部分だけで,その中に展示のために壁で覆った空間がある.しかもその空間は固定した壁で仕切られていて,中央には吹き抜けまであったりする.なんとも使いにくそうな展示空間だ.地下も上階も展示空間自体はいわゆるホワイトキューブで,天井は大部分が光天井だが,自然光は入ってこないようだ.
幸か不幸か企画展では「Leuchtende Bauten: Architektur der Nacht」展をやっていて,建築の夜景について,ブルーノ・タウトからはじまりH&deMやらヌーベルやらの模型や写真が並んでいた.コールハースのZKM(コンペ案)の模型を見ることができた以外は,こんなところでこんな展示を見たくなかったというのが正直なところ.一方で,テーマに合わせた暗い展示室を実現するためには,この閉鎖的な建物はピッタリであった.いや,これはほめているのではなくて嫌味です.
常設では,地下にあったレベッカ・ホーンのインスタレーションがよかった.吹き抜けのあるラフな展示空間だったが,これくらい力強い作品だと気にならない.その一角では「Frischzelle_04: Albrecht Schäfer」展という若手作家の展覧会がはじまるところだった.現代美術も視野に入れているのであれば,もう少し展示空間を考えてほしい.
唯一の見所であると期待していったのが,裏側の基壇に設置されたカールステン・ニコライ「Polylit」.ニコライはミュージシャンでもあり,Alva Noto名義で坂本龍一コラボレーションをやっていて,10月には日本ツアーも行われる.もちろんアーティストとしても,昨年にベルリンとYCAMですばらしいインスタレーションを発表したばかり(見てないけど).ということで期待していたが,実際にはインタラクティブな仕掛けがあるようなのだがよくわからず,単なる彫刻にしか見えずにガッカリ.
ちなみにこの美術館,Thomas Mayerという建築写真家(だと思う)が大量の写真をwebに載せている.この人のwebは充実していて,いろいろな建築の写真を見ることができる.驚いたのがこの写真で,他にもこんな写真をはじめとして長期に亘るドキュメントを大量にアップしている.この辺とともにいろいろ検索してみてほしい.しかしこの建物,完成したんだ.ドイツにあるんだよね.行ってみようかな?

美術 | Posted by satohshinya at September 10, 2006 10:14


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