アートそのものが疑われてる

先を越された感があるが,横浜トリエンナーレ2005のディレクター交代問題.このタイトルは,磯崎新氏が,辞任発表4日前に行われたシンポジウムの席上で発言したものとのこと.このシンポジウムは,web上でもさまざまに取り上げられているが,その後の経過も含めて,やはりここに注目.
しかしここでは,「朝日新聞」12月16日の夕刊の大西若人氏による記事が,シンポジウムの状況を整理してくれていることから,大幅な引用となってしまうが紹介する.
磯崎氏の当初のプランは,《「従来の国別展示でも,キュレーターの指名制でもなく,最もまともに美術展を支えている組織」を前面に出す新システムで,国際展の枠組みを再構築する試み》を目指したもの.これに対し,南条史生氏が《「若い作家を選んで,国際舞台に出す」という国際展の機能が果たされない,と指摘.磯崎氏が「そのキュレーターの思い上がりが困りもの」と切り返すと,南条氏も「アーティストのためにやるのではないのか」と反発する場面も》あったり,北川フラム氏は《「そもそも建物の中でやるのが間違っている.横浜市が市民のためにやるなら,町づくりの実績を表に出す『都市展』しか意味がない」と語った》り,岡部あおみ氏が《「小都市でも国際展が開かれるのは,特徴を持つことでグローバリゼーションへのアンチとなるから」と話したが,磯崎氏は「ローカリズムを主張する国際展が多数あるのが,もうグローバリズムの枠内」と異論を呈した》りしたようだ.結局,《ショック療法的な磯崎案だが,「アートは国境を越えるだけでなく,国という単位に依存しない点で,21世紀に大きな力を持つはず.それには,ただ見せるだけの展覧会ではいけない」との指摘は,傾聴に値する》とのこと.磯崎氏がディレクターを務めることから,大変に期待をしていたのだが,これもまた氏がお得意とするアンビルトになったようだ.
新しい国際展の1つの例として,9月に開催された「光州ビエンナーレ2004」での試みが挙げられる.「artscape」の村田真氏のレビューより.《今回のユニークな試みは「観客参加」だ.これは農民や学生,主婦など一般人や美術以外の専門家,社会活動家らの「観客」を事務局が選び,アーティストとコラボレーションしてもらおうという企画.》この企画自体は大変に興味深い.しかし,《これはうまくいけばアーティストにとっても「観客」にとってもメリットがありそうだが,「お見合い」に失敗したりケンカ分かれする可能性もあり,効果はあまり期待できない.大半の作品は「観客参加」によってどこがどう変わったのか,または変わらなかったのかまったくわからないのだ.》結果はともかく,このような試みは更に続いてほしい.まあ,こんな国際展ですら,財団や観客とのコラボレーションが要請されているということか.

美術 | Posted by satohshinya at December 18, 2004 10:21


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