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1年3ヶ月ぶりに死刑執行(4名)

 朝日新聞より転載。

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<死刑執行>4人に 安倍政権で初 1年3カ月ぶり  
12月25日12時7分配信 毎日新聞

 96年に広島県内で女性4人を殺害したとして、強盗殺人と死体遺棄の罪に問われた元タクシー運転手、日高広明死刑囚(44)=広島拘置所収容=ら4人に対して25日、死刑が執行された。法務省は同日、死刑囚の名前などは明らかにせず、執行人数だけを発表した。

 死刑の執行は昨年9月16日以来、1年3カ月ぶり。杉浦正健前法相が死刑執行命令書への署名を拒んだことで、後任の長勢甚遠法相の対応が注目されたが、就任から3カ月で執行を命じた。これで、93年から14年連続の執行となった。一度に4人の執行は97年8月以来。

 他に執行されたのは▽75年に千葉県内で知人を殴り殺したとして、強盗殺人や死体遺棄罪などに問われた秋山芳光(77)=東京拘置所収容▽81年に栃木県内で前妻の親族2人を殺害したとして、強盗殺人罪などに問われた藤波芳夫(75)=同▽78~81年に高知県内で親族ら3人を殺害したとして殺人・死体遺棄罪などに問われた福岡道雄(64)=大阪拘置所収容=の各死刑囚。【森本英彦】

 ◇死刑制度の維持したい法務省の強い意思
 9月末に就任してからまだ日の浅い長勢甚遠法相が25日、一度に4人もの死刑執行を命じたことは、毎年執行の実績を積み重ねることで、死刑制度の維持を確かなものにしたい法務省の強い意向を反映している。杉浦正健前法相が死刑執行命令書への署名を拒否したまま退任したことから、同省としては今月の執行を逃せば14年ぶりに「死刑執行なし」になるという事情があった。

 かつては、90年12月~91年11月に法相を務めた左藤恵氏が署名を拒んだケースがある。左藤氏と杉浦氏はともに真宗大谷派を信仰しており、署名拒否の背景には宗教的信念があった。これに対し、法務省内には「時の法相の信条で、死刑が執行されたり、されなかったりすれば、国民の不信を招き、死刑制度の根幹が揺らぐ」との懸念が広がっていた。
 今回の執行で、法務省は従来通り執行人数を明らかにしただけで、死刑囚の名や執行場所の拘置所を発表していない。杉浦氏も、執行を見送った自らの判断について語っておらず、死刑制度の在り方について論議が深まる契機とはならなかった。

 死刑は人の命を奪う究極の刑罰であり、執行が適正に行われているか国民が判断するためには、もっと積極的な情報公開が求められる。死刑囚が拘置所でどのように処遇されているかも不透明な部分が多い。09年に裁判員制度が始まれば、国民から選ばれた裁判員が死刑を選択するという重い判断を迫られる場面も出てくる。死刑制度の在り方についてもっとオープンな論議が求められている。【森本英彦】
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 就任から3カ月で執行を命じた長勢甚遠法相による死刑観はこちら。いまいち要領も得ないし、なにを言いたいかわからない文章ですが、まあこれくらいのことしか書けないんだろうなあと。しかし驚いたのは『このホームページに死刑執行についてのご意見を非常にたくさん頂きましたが、その大部分は「法務大臣は死刑執行命令書にサインすべきだ」という内容でした』という部分。これが事実であれば、ずいぶん短絡的な世の中になったなあと思う。具体的にその「ご意見」とやらを読んでみたい。

 そもそも無期懲役っていう曖昧なものがあるからいけないわけで。終身刑にして、狭い独房に死ぬまで閉じ込めて、死ぬよりも苦しい思いをすればいいと思うんですけどね、私は。「いつ死刑の日がくるんだろう」って恐怖におののく日々もまあ苦しいかもしれないけど、死刑になったらあっという間にすべて終わりでしょ。そんなの割に合わない。

 にしてもクリスマスに死刑執行するなんてね、小粋ですね、驚きです(とはいえ、クリスマス執行はたしか前もあったと思う)。法相は「(死刑執行命令書にサインするのは)気の重い役目です」と書いてるけど、今日、死刑執行のボタンを押した係員の方たちはどんな思いでクリスマスを過ごしているかとかって考えないんだろうか。
 だいたい死刑執行って未明や早朝に行われるんですが、執行係は執行後に「執行お駄賃」みたいなわずかばかりの臨時ボーナスを手渡されて、午後の業務はナシになるんです。そのもらったお金をどうやって使うか。ひとりで酒を飲んでぜんぶ使う人が多いらしいのですが、その辛さといったら想像もつきません。しかも今日はクリスマス。彼らが少しでも気が楽になるようにとお願いするしかない。ちょうどいまこの時間に、そういった思いをしている人がこの日本にいる、ということを想像してほしい。

 そういうことも想像して「法務大臣は死刑執行命令書にサインすべきだ」って意見を投稿しているんだろうか。みんな(遺族の方たちを除いて)、あともう一歩、もう少しだけ想像力を働かせてほしいものです。投稿する前にせめて村野薫著『死刑はこうして執行される』くらいは読まないと。

乙女日記 | Posted by at 12 25, 2006 14:10 | TrackBack (0)

備忘録 061204

 ごぶさたしていました。転職でバタバタしていたら、あっというまに12月。いやはや、時間の流れが速すぎてどうにもこうにもなりません。新しい職場はとても楽しいんですが、モーレツに忙しいです。

 そいえば先日、高宮先生の退官本についての打ち合わせで久々に大学を訪れました。善さんや創順さん、吉岡君、ナカジさんなど、なつかしいみなさんにお会いできて楽しい時間を過ごせました。5号館の製図室も懐かしかったなあ。なんかもうだいぶ遠い昔の記憶になってしまったんだけど、その場に戻ると一瞬にしてあの頃に引き戻されますね。場の持つ力ってすごいなと実感。また遊びに行きたいです。

<行った色々>
・9/15【観賞】梅田宏明、鈴木ユキオ、遠田誠(まことクラヴ)『Three men's Choreography』@吉祥寺シアター
・9/16【観賞】渋谷慶一郎×池上高志『filmachine』@山口YCAM
・9/16【観賞】渋谷慶一郎×evala×maria×クリストフ・シャルル×逢坂芳郎『musimissile』@山口YCAM
・9/19【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@渋谷CAMP
・9/21【鑑賞】渋谷時代 vol.24“伊藤啓太 NO! PROJECT”@公園通りクラシックス
・9/29【社会科見学】目黒寄生虫館
・9/29【社会科見学】蕎麦の会@西麻布某蕎麦屋
・10/08【鑑賞】nino trinca@上野水上音楽堂
・10/10【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@渋谷 7th floor
・10/14【鑑賞】唐組『透明人間』@ジブリの森記念館横
・10/20【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@横浜ファイブスターレコード
・10/22【取材】miroque“映画『ストロベリーショートケイクス』を巡る音の旅”@UPLINK
・10/22【鑑賞】ダンストリエンナーレ(上村なおか「最後の星」、カンパニー7273「Simple proposition」)@スパイラルホール
・10/29【鑑賞】ダンストリエンナーレ(斉藤美音子「整形」、トンミ・キッティ&カンパニー 「Pasos Nuevos, second movement」)@スパイラルホール
・11/04【鑑賞】ダンストリエンナーレ(ル・カルデロンブ「Dous pour corps et instruments」、まことクラヴ「むつかしはなし」)@青山円形劇場
・11/14【ライブ出演】角森隆浩withダイナミックオーシャンズ@赤坂グラフィティ
・11/19【鑑賞】ダンストリエンナーレ(美加理×種子田郷、マシモ・モリコーネ 「「#06 & #07.2006 skin-fatman/ littlebastard」)@スパイラルホール
・11/25【鑑賞】大駱駝艦『天体のズー』@壺中天
・11/25【取材】op.disc showcase hub@代官山UNIT
・11/26【鑑賞】フィリップ・ドゥクフレ『SOLO』@天王洲銀河劇場

<観た映画>
・フーベルト・ザウパー『ダーウィンの悪夢』@映画美学校(試写)
・ハンス・カノーサ『カンバセーションズ』@松竹試写室(試写)
・山海塾『卵熱』
・デイヴィス・グッゲンハイム『不都合な真実』(試写)

<読んだ本>
・阿部和重『ニッポニアニッポン』
・金子達仁、戸塚啓、中西哲生『魂の叫び』
・オスカー・ワイルド『獄中記』
・筒井康隆『笑うな』
・新潮45『殺ったのはおまえだ―修羅となりし者たち、宿命の9事件』
・新潮45『その時、殺しの手が動く―引き寄せた災、必然の9事件』
・Jeffrey Kipnis『Perfect Acts of Architecture』
・フォークナー『フォークナー短編集』
・『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ3 交遊』
・『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』


 えーと、まあ色々あるんだけど今回はふたつだけ。『ダーウィンの悪夢』と『不都合な真実』について。

 まず『ダーウィンの悪夢』。これはもうすぐシネマライズで公開しますね。ぜひ見てください。以下感想。ネタバレもあるかも!?

 インタビューや話がひとつひとつ短くて、しかもポンポン飛ぶので映画としてはかなり観辛かった。全部観てから「なるほどなあ」と頭の中で整理する必要がある。この監督、編集はあまり上手くないんじゃないかな。
 しかしながら、ここで綴られているドキュメントはそれぞれ壮絶で、まったく救いようがないし、はっきり言って手立てはナイと思う。たまたまこれはタンザニアの“巨大魚が放されて産業形態が激変した”という特異なドラマがあるために映画になったんだろうけど、アフリカ各地ではなんのドラマのないところでもこの救いようのなさっていうのは、それこそ宿命のように散らばってるんだろうなあと思うと本当に恐ろしい。

 そしてもちろんそれはアフリカを蹂躙し続けてきたヨーロッパ諸国の問題でもあって、さらには日本の問題でもある、というのを意識しないといけないなと。私もナイルパーチを口にしている可能性だって大いにあるわけで。(※ちなみにナイルパーチとは、2003年までは“白スズキ”という名で日本では流通しており、現在では“ナイルパーチ”と表記されている。外食産業や給食などの白身魚フライによく使われるほか、スーパーで味噌漬け、西京漬けなどとして並ぶこともある。だって)

 で、まあ私は偽善者みたいなことは言いたくないので、「だからこれからは白身魚は口にしない」とかはまったく思わないけれど、自覚して食べるようにはなると思う。たとえばファミレスとかで白身魚を口にしたとすると、この映画のことを思い出すだろうなと。というか、それくらいのことしか想像がつかないくらい、本当にアフリカ大陸は悪夢で覆われているんだなあと再認識しました。キビシかった。


 一方『不都合な真実』。これももうすぐ公開でしょうかね?

 これも重かった。なんかもう人類が滅びればぜんぶ解決するじゃーん、と思った(苦笑)。ちょうど試写を観たときに、私の精神がかなり不安定だったっていうこともあって、いろいろと考えたり、危機感を持ったり、心配したりするの面倒だから早く滅びちゃえばいいじゃん、とけっこう真顔で思ってしまいました。それくらい現実を突きつけられる、重い映画です。

 まあでもこの映画はエンドロールで興醒めしましたが。「あー、けっきょくアメリカさんが作るのってこういう映画だよね」みたいな。アル・ゴアのやってることはまったく間違ってないし、あの時本当に大統領になっていたらなあと思うけど。それにしてもどうかと思います、この映画のスタンスは。でもこういうのがみんな好きなんだろうなあというのは容易に想像できる。

 ……と、臭わすだけ臭わせておいてすいませんが、興味のある方はぜひ映画館へ。

 試写はだんぜん『不都合な真実』のほうが入ってたけど(すでにものすごい人気)、私は『ダーウィンの悪夢』のほうが説得力あるし、誠実だと思った。


 久々にフォークナーを読み直したら、その秀逸さにあらためて脱帽しました。おもしろいなあフォークナー。

乙女日記 | Posted by at 12 4, 2006 1:05 | TrackBack (0)