素材の良さ

デビッド・シルヴィアンのライブを見た.「Fire in The Forest Tour 2004」の日本公演.弟のスティーヴ・ジャンセンと高木正勝の3人しか出演しないシンプルな構成.正確に書くと,高木はVJなので,演奏は兄弟2人だけ.おまけに『ブレミッシュ』からの曲がほとんどで,黙々とライブは進んでいく.ライブ自体は,もう少し過去の曲もやってくれればいいのにという感想はあるが,それよりも何よりも高木の映像が素晴らしかった.
高木正勝を最初に見たのは,東京都現代美術館での「MOTアニュアル2003 おだやかな日々」で,アニエス・ベーのためにつくった『world is so beautiful』だった.どのようにつくられているのかはわからないが,美しく画像が処理されたビデオインスタレーションだった.その時は,現代美術の展示でよくあるように延々とビデオ作品が流されていただけで,十分に時間を割くことができず,チラリとしか見ることができなかった.しかし,かなり強い印象を持っていたので,DVDで販売されたときにすぐに買った.結局,高木の作品は,映写される空間性が重要なわけではなく,自宅のテレビで見たって十分楽しめた.
つまり,動き,編集といった映像そのものに力がある.それどころか,その1カットを取り出して,高木自身のライブのフライヤーに使ったりするのだが,これがまた1枚の絵として気持ちよい.そういった画像処理の質もまた持ち合わせている.
今回のライブで使われた映像は,『world is so beautiful』の延長として,子どもたちの映像が多く使われている.その1部は,新作としてDVDが発売されるらしい.そして,『World Citizen』では,アンコールであったこともあって,おそらく『world is so beautiful』や新作用の,ほとんど画像処理をしていない生のデジタルビデオ映像を編集したものが使われた.子どもたちが楽しそうに走り回っている映像が繋ぎ合わされた映像だった.これを見て思ったのだが,画像処理をしていなくとも,生の素材を編集しただけでも十分に高木の作品となっていた.画像処理の質の高さだけでなく,この生の素材の良さが,高木が他の映像作家から抜きん出ている理由だと思う.
高木の作品はホームページでも少しだけ見ることができる.ネット上の粗い画面でも十分に魅力的な作品を見れば,僕が書いたことが少しはわかるのではないだろうか?

美術 |Posted by satohshinya at April 29, 2004 06:46 AM | TrackBack(0)
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