3331 Arts Chiyoda

2010年6月
アートセンター〈改修設計〉

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融通の効いたハードとしての場所
東京都千代田区の廃校となった旧練成中学校を再活用し、2010年6月にオープンしたアートセンター。元の校舎は秋葉原に隣接する地域に位置し、狭隘な校地に建てられたため、各機能が立体的に組み合わされた都市的な特徴を持つ。2008年にアートセンターの事業計画と改修プランを求めたプロポーザルが区によって行われ、アーティスト中村政人氏が率いるコマンドAが運営団体として選出された。
改修費の大部分を区が負担し、その後の運営費をコマンドAが負担する、PPP(Public Private Partnership)方式により事業が進められたため、改修工事では運営内容と合致したアートセンターを理想的に実現することができた。その設計では、建築的な作法による空間づくりを極力避け、アーティストが運営する施設にふさわしい性能を確保することを主眼に置き、活動に応じた極端な改修方法を採用している。本格的な展覧会を行うギャラリーでは、完全なホワイトキューブと呼ぶべき徹底した改修を行う一方で、国内外のアーティストやクリエータの活動を支援する活動スペースでは、学校が持っていた記憶をそのまま残した最小限の改修に留めている。それらは空間を視覚的にデザインすることとは異なり、表面に必ずしも現れないストラクチャーをデザインすることを目指したもので、場所と呼ぶべき抽象的なものをデザインする作業であった。そして、カフェや活動スペースのインテリアデザインは各利用者に委ねられ、さまざまな建築家やインテリアデザイナーが参画し、多様な空間をつくり出している。
また、南側に隣接する練成公園が同時に再整備されるにあたり、地元住民を中心とした協議会に加わり、中心に立つクスノキの巨木を象徴的に残した開放的な明るい公園を提案した。改修前は、中学校の昇降口が東側道路に面し、校舎の裏側と公園はフェンスを隔てて隣り合っていた。そこで、裏を表として再計画するために、構造軀体を移設してコミュニティスペースやギャラリーへの通路を確保し、公園へ向けた巨大な開口部を設けることで、内部から外部へと連続する計画を実現している。それにより、このアートセンターが人々とアートを結びつける場所として有効に機能することを期待している。

2010年度, 作品, 建築 | Posted by satohshinya at 6 26, 2010 0:00


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