« 2005年07月 | Main | 2005年11月 »

貴族の家

_050925_saltinbanque.gif

■金曜日の夜、
友人に誘われてFETE(ホームパーティー)に行った。
場所はパリ16区の高級住宅街。
気軽に行った僕は唖然。
ものすごい豪邸に、オシャレした男女が150人くらい集って、
飲んで、歌って、喋っていた。
圧倒的な雰囲気に頭を掻き回されつつ、僕も喋って飲んで朝4時頃に帰宅。
後で聞いてみると、主催者の中に貴族がいて、その方の家で行われそうです。
貴重な体験だったのに、写真一枚取れなかったことが悔やまれる。

FETEでは、建築・デザイン関係以外の人ともお話させていただいた。
そこで、一般の人たちが建築や都市の「近代化に伴う場所性の消滅」というような主題に対して
自分の意見をしっかり持っていることに再度関心。
さすが、歴史を積み重ねた都市や建築の中で生きるパリの人々。
空間に対する意識が一般の人々に、高いレベルで浸透している。

戦後、大部分が白紙の状態から作られた現在の東京は
物理的に「歴史を積み重ねた」と言うには難しい状況。
歴史や文化の断絶など、様々な背景も違うから直接比較はできない。
でも少なからず「物が残ってるかいなか」と言うことは
意識に大きな違いを与えている。
現在、マスメディアによる「流行」というかたちで「空間の意識」が浸透しつつありますが
この過渡期の向こう側に、成熟した日本人の意識が開ければ良いなと思っています。

■土曜
Centre pompidou前にチョーク画家を発見しました。
荒いアスファルトの中から、人が浮かび上がってくるかのようです。
美術館の中でキャンバスにしっかり据えられている絵も良いけど
町の中に溶解している状態の絵と言うのも素晴らしい。
構えていないときに、突然後ろからプスとさされたような感じで
心に入ってきた。

Art / 美術, Dialy / 日常, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 26, 2005 7:36 | TrackBack (0)

JOURNEES DU PATRIMOINE

9月17、18日はJORNEES EROPEENNES DE PATRIMOINEだった。
これは、フランス国内の美術館や市庁舎をはじめとする公共施設が一般公開されるというもの。

僕は風邪気味と言うこともあり、CREDIT MUNICIPAL DE PARISと
LES BATIMENT DU CENTRE HISTORIQUE DES ARCHIVES NATIONALESを
同僚のPILIPPEとパパっと見た。
前者は巴里の質屋。後者は18世紀の貴族の館を現在歴史博物館として使っている。

LES BATIMENT DU CENTRE HISTORIQUE DES ARCHIVES NATIONALESでは
この施設の改修設計競技があったらしく、その結果報告展示会が行われていた。
今回は人が多くて並びもしなかった。
今度また出かけてみよう。

Event Lecture / イベント, Paris / パリ, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 19, 2005 7:00 | TrackBack (0)

国際指名設計競技の結果

前に日記で、国際指名設計競技に参加したことを書きましたが
その結果がARCSPACE.COMに記載されています。
結果はすいぶん前に知っていたんだけれども、一般メディアに発表されたので
これで堂々と書けます。

ベルギーのKnokke-Heist市が施主。
Knokke-Heistにあるカジノを、近くに建つホテルと関連付けて改修するというも。
カジノは『Magritteの部屋』という、彼のフレスコ画がある部屋を内包している。
参加者は
STEVEN HOLL Architects(アメリカ合衆国)
ZAHA HADID Architects (イギリス)
Neutelings-Riedijk (オランダ王国)
Jakob+Mcfarlane(フランス共和国)

他の3社はEl Croquisで作品集が出るような、既に世界トップクラスの事務所。
その中で、うちはよくやったと思う。一方でJakob+Mcfarlaneの案では勝てないだろうと思ってもいた。

今回は得意の湾曲ボリュームに精神性が足りていなかった。
言い換えれば、形態遊戯に終始してしまったところがある。
いつも改修設計競技だと、既存のある要素を抽象化し、新築部分にそのリズムを導入するんだけれども、
今回は既存のカジノに対してあまり配慮されていない。

4案をざっくり分類すると、『塊型』のZAHA、JAK+MAK案 / 『タワー型』のHOLL、N+R案。
ARCSPACE.COMにあるように、結果は勝者STEVEN HOLL Architects。

敷地の眼前に広がる水平線。これに拮抗するように建つSTEVEN HOLLのタワー。
敷地周辺にある既存6,7階から、海へ抜ける眺望に削られるように形態が決められているらしい。
でも、これは修辞的な説明で少し胡散臭い。
タワーがこれだけ特殊な形態をしているなら、堂々とモニュメントとしての正当性を言ったほうが良いのに。
市だって、このタワーを『新しい観光地のシンボルになりうるもの』と捉え、選んでいるはず。
Tower/Porosity/既存の3つを、全く異なる「建築形態・表面群」で構成したのかは気になるところ。
例えば、既存のホテルとカジノをつなぐ導線的建築部分が、なぜ Porosityなのかとか。
もしかしたら『ノリ』だけかもしれないけど。

設計競技は結果的に負けてしまったけど、 こんな人たちと戦えて良い経験になった。
次はそんなに緊張せづに戦えそうだ。

個人的な話としては、週末、風邪でダウンしてます。

Architecture Space / 建築 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 19, 2005 5:05 | TrackBack (0)

北欧の報告-その2

Swedenの後Finlandへ。
主な目的はAlvar Aaltoを見ること。
通り過ぎるように見たものも含めると、4日間で10件強の建物を見た。
Aalto建築の特徴でもある『要素の分割』と『連続する縦線』。
Finlandを訪れてみて、彼の原風景であるFinlandの自然=白樺林の影響を改めて感じた。

_0500908-finland01.gif


印象に残った建物を幾つか。
『Hlshinki工科大学のオーディトリアム』、『夏の家(実験住宅)』そして『Mairea邸』

■『Hlshinki工科大学のオーディトリアム』

_0500908-finland05.gif_0500908-finland06.gif

内部に入ってすぐ、空間『やわらかさ』が体に染み込んでくる。
それは白い空間に投影される『柔らかな陰影』と包み込むような『大きなスケール』によるものだろう。

連続した『湾曲トップライト』は、そのカーブによって、
空間の中にグラデーションのように融解していく影を作る。
大きなスケール感覚を作り出しているのは、『ルーバー』と『トップライト』の関係だろう。
構造体を這うように連続する『ルーバー』は、空間の中で定規の目盛と化し
空間の大きさを僕らに計測させる。
湾曲した『トップライト』は構造体上で、重なり合うように上方に伸び上がる。
重なり合うことで壁面の終点である窓枠を隠し、視線をその表面上で滑らせる。
つまり、境界のない空間、つまり『終わりのない空間』を作り上げている。

構成要素によって空間計測の可/不可を緻密に切り分けることで、
大きな羽根のような『やわらかくつつみこむ』空間把握を演出していた。

■『夏の家(実験住宅)』

_0500908-finland02.gif

ここは何と言っても外部空間が素晴らしい。
『実験住宅』というサブタイトルのように、
半中庭の壁面・床面はレンガやタイルを始めとした素材の実験場となっている。

各面は様々な形態、大きさに分割され、各素材たちが、
様々な『操作』を伴って貼り付けられている。
『面分割』と分割された面内の『肌理の操作』は、
彼のライフワークである抽象絵画と共通点があるんじゃないかな。

(名作と呼ばれるものは少なからず)、彼の『建築形態』と『表面操作』は一体化している。
しかし、この住宅では『表面』は『形態』からはがされた状態で置かれている。
つまり、白いキャンバスの上で、様々なタッチが検討され、用意され、置かれる場所を待っている。
建築の諸条件に直面した時、Aaltoは多様なタッチをもってこれを形態化・建築化していたのだろう。

現在はAalto遺族の別荘として使われながら、一般公開されている。
世界遺産の分類で言うと「文化遺産」というよりも「自然遺産」に近いこの『環境』。
資金や観光地化の問題も含め、この『環境』をどのように公開/保存していくかが
アアルト財団にとって非常に難しい検案であるとのことでした。

■ 『Mairea邸』

_0500908-finland04.gif

今回の旅行でもっとも衝撃を受けた建築が『Mairea邸』だった。
建築要素が執拗に、そして周到に分割され、粒子化していた。
分割よりも分解、いや『溶解』と呼ぶべきなのかもしれない。
そこに存在する全ての要素が様々な方向や大きさに分割されている。

全ての要素が溶解しあいながら、階段やテラス、柱、壁といった建築要素として成立している。
溶解は建築と呼ばれる『もの』にとどまらず、敷地を取り囲む白樺林のとも関係を結んでいた。

内部、外部、敷地、環境・・・。
僕らが意識しているこれらの境界は、この『融解』によってあからさまに乗り越えられている。


曲面、マッピング、細分化、白と色・・・・・
Alvar Aaltoの建築言語は、コンピュータの設計ツールによる現在の[3D architects]と
同じものとして分類できるだろう。
しかし、そこには明らかに異なる精神性が見られ、
ある意味で [3D architects]の先を行っている気がした。

■ ミュールマキ教会・教区センター/ Juha Leviska

_0500908-finland03.gif

この教会は凡庸な外部空間比べ、内部空間が素晴らしい。
面の「細分化」、「連続」・「不連続」・・・といった操作。
ここでも周辺環境の白樺林が効いていて、内観の垂直連続線と融解した空間そこにあった。

長く垂れた照明群は、ボリュームの中に打たれた「座標点」のようで
空間を「何もない部分」から「何かに満たされている部分」に変換している。

あと、使われている素材が一般的なのが印象的。
無理せず、良い空間が作られていることに脱帽した。


Finlandで見た建築
■Alvar Aalto
・Hlshinki工科大学
    オーディトリアム/図書館/寄宿舎/プラント
・Paimioのサナトリウム
・Mairea邸
・Alvar Aalto美術館
・ユベスキュラ工科大学
   (フィンランド語の特殊文字が表記不可能。Jyvaskylaに似た綴り)
・サユナットサロの村役場
   (フィンランド語の特殊文字が表記不可能。Saynatsaloに似た綴り)
・夏の家(実験住宅)
・Voksenniska教会

■ その他
・Dipoli学生センター / Raili & Reima Pietila
・ミュールマキ教会・教区センター/ ユハ・レビスカ(Juha Leviska)
   (フィンランド語の特殊文字が表記不可能。Myyrmaki/Juha Leviskaに似た綴り)

Architecture Space / 建築, Travel / 旅行 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 12, 2005 5:35 | TrackBack (1)

北欧の報告-その1

北欧に行ってきました。

古典的な建築様式と近代建築の過渡期を生き抜き、
北欧の近代建築の道を切り開いたEric Gunner Asplund
いち早く近代建築を自分の道具の中に融解させ、
形態操作としての『近代建築』を乗り越えようとしたAlvar Aalto
この二人の作品を中心にSwedenとFinlandを巡ってきた。

先ずはSwedeのEric Gunner Asplund。
・森の火葬場
・映画館「Skandia」
・Bredenbergs百貨店(だと思われる)
・Stokholm市立図書館
をみた。
その中で良いと思ったのは『森の火葬場』と『Stokholm市立図書館』。

■『森の火葬場』のはSigurd Lewerentzとの共作で
ランドスケープと建築の融合が評価されている作品。
公園のような場所にいくつもの建物が建っていて
移動と共に移り変わる視界が 周到に計画されている。

_0500904-asplund04.gif

この場所については僕が改めて何か書くことはないと思いつつも、一言。
高台になっている広場から『復活の礼拝堂』までの経路は
圧倒的な凄みを持っていた。
歩いていくと

視界が開けた芝生の空間

移動によって小さい葉の塊がチラチラする空間

列柱のように高く林立する空間

壁のように生い茂った木が威圧感をもって連続する空間

『復活の礼拝堂』

とつながっていく。
樹種の変化でここまで空間の質が劇的に変わっていくのかと関心。
地面の上に粒子のように広がっていく墓達が、
実はただ芝の上に直接打ち込まれただけであることにも驚く。

_0500904-asplund01.gif

『聖十字礼拝堂』内部では、表面に対する濃密な操作が行われていた。
中心に据えられた「棺置き場兼火葬装置入り口」に向かって
床の石版が吸い込まれていくように面割されている。
その石版の表面にはドットが打たれていて、
棺への テクスチャーとしての流れを示している。
建築の内部形態としては棺に向かって微妙な傾斜が付けられているんだけれども
形態と言うよりも、執拗なまでの表面操作が空間に流動性を与えていた。

_0500904-asplund02.gif

祭壇前のフレスコ画も面白い。
おわんの一部のように湾曲し、空間を包み込むような壁面が額となっている。
そこには全方向に向かって、複数の消失点を持つ絵があった。
線遠近法ではなく、環境視としてのリアルな視覚システムが意識されている表現だった気がする。

■『Stokholm市立図書館』
見所は中心にある円形の大空間のダイナミズムだろう。
空間の表面素材と化した「群本」と、雲のように上部に連続的に広がる白い壁面の「起伏」。
この要素が、屋内としては突出している空間の大きさを確実に観察者に計測させる。
あと、一見、建築家の欲望だけで構成されたかのようなこの建築が
非常に機能的に作られていることに感心した。

_0500904-asplund03.gif

Eric Gunner Asplundについては、最近写真集兼開設本が発売されたようなので
興味のある方はそちらを見ていただけると良いと思います。

■『聖MARK教会』
森の教会の共作者Sigurd Lewerentzの『聖MARK教会』。
この建築もとても面白かった。
主な素材はレンガなんだけれども、そのレンガの可能性を徹底的に追求している建築。
壁面のレンガは、スケール操作、空隙、異素材との関係、定規としてのレンガ・・・・・・・
といった様々な視点で実験的な操作が行われている。
レンガの一つ一つが、大きな解像度で強い印象を形成しているようで、
本当に印象派のボテッとしたタッチのように扱われていた。
LewerenztはAsplundの影に置かれてしまう傾向があるが、
もっと評価されて良い建築家だと思う。

_0500904-lewerent01.gif

■『Stokholm近代美術館・建築博物館
『Stokholm近代美術館・建築博物館』では前からすきだった『Lars Englund』の展覧会が。
迷わず高価な作品集を買う。
この偶然のおかげでその夜は美味しいビールが飲めました。

_0500904-sweden.gif

Finlandについてはまた次回に。

-Swedenで見た建築--------------------------------
・森の火葬場 / Eric Gunner Asplund, Sigurd Lewerent
・映画館「Skandia」/ Eric Gunner Asplund
・Bredenbergs百貨店/ Eric Gunner Asplund
・Stokholm市立図書館/ Eric Gunner Asplund
・聖MARK教会 / Sigurd Lewerent
・コンサートホール / Ivar Tengbom, Andres Tengbom
・Stokholm市庁舎 / Ragnar Ostberg
・Stokholm近代美術館・建築博物館/ Rafael Moneo
・王宮、その他観光地


Architecture Space / 建築, Travel / 旅行 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 9 4, 2005 7:18 | TrackBack (0)