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古谷誠章氏来仏

・24日
建築家で僕の恩師でもある古谷誠章氏がUNESCO/UIA会議出席のため、来仏なさった。
これを機に古谷研究室のパリ会が開かれた。
というのも現在、
−AJN勤務なさっていて最近母親になられた山添なおりさん
−坂茂パリ事務所に勤務する岡田大海さん。
ラビレット建築大学に交換留学している伊藤玲央くん。
−僕
の早稲田大学古谷研出身者・在籍者4人がパリにいるからだ。

古谷さん自身がスイスで修行されているんだけれども、それが理由なのか
うちの研究室は毎年一人の割合で海外に就職する人がいる。
そして現在、なぜかその人々がパリに集中している。

デザインにおいて、最近あまり元気がないフランスだが
やはり「パリはヨーロッパの中心」ということなのかもしれない。

Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 29, 2004 1:25 | Comments (2) | TrackBack (0)

BECHERの写真

news-beaujolais.gif

・18日
毎年11月の第三木曜日に解禁されるワイン・ボジョレーヌーボー(Beaujolais nouveau)を飲む。
日本のように大騒ぎにはなっていないが、レストランや惣菜屋に行くと
店員さんがさりげなく勧めてくれる。
僕も平日の昼食にこれをさりげなく飲む。
このさりげなさ。さすが、ワイン文化が充実している。

日本でのボジョレーやスターバックスの熱狂は、
ワイン文化やカフェ文化の成熟度の違いを表している気がする。
それを証拠に、元々カフェ文化があるパリでは、スターバックが入り込む余地が無く
観光客エリアに二店舗しかない。

・20日
Center pompiduで行われているBERND ET HILLA BECHER展へ。
時代、国籍、文脈が異なる一つの『工業建築・設備』を同じ視点で撮影し、
即物的な『もの』でさえも、それを取り囲む時代や状況によって
様々に変化するということをあらわにするタイポロジー(Typology)。
BERND ET HILLA BECHERはこの技法で有名なドイツ人写真家。

今回の展覧会では下記の10作品が展示されていた。
給水塔(Chateaux d’ eau)
冷却塔(Tours de refrigeration)
ガスタンク(Gazometres)
縦坑(Chevalements)
加工工場(Usine de traitement)
砂利倉庫(Gravieres)
炉(Fours a chaux)
穀物サイロ(Silos a cereales)
石炭サイロ(Silos a charbon)
溶鉱炉(Hauts fourneaux)
パイプ群の詳細(Details)
生産工場(Halles de production)

光が均等に当たる曇りを選んで撮影された写真群からは、
正面のアングルとも相まって
グラフィックデザインのような二次元的印象を強く受けた。
被写体は形態が似ているのにも関わらず、
そこに張り付く「素材」や「スケール」が様々に変化しているので
まるで3Dグラフィックのマッピングスタディーを見ているよう。

「特定の素材が連続していく」という『工業建築・設備』に特有の『表面』構成は、
一般的な「建築」のデザインに適用できる十分な魅力を持っている。
(※写真は展覧会カタログの写真)

Architecture Space / 建築, Art / 美術, Event Lecture / イベント, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 29, 2004 0:56 | Comments (3) | TrackBack (0)

Centre de communication pour RENAULT

renault_chantier.gif

仕事でCentre de communication pour RENAULTの現場へ。

フランスの自動車会社ルノー(RENAULT)が展示・会議・その他催し物を行う施設。
設計競技によって獲得した仕事で、元々あるルノーの工場を改修することで作られます。

既に世界中の建築本や雑誌に取り上げられているので
ご存知の方も多いかもしれません。

我々の計画は、工場の『ノコギリ採光天井』が持つ魅力を最大限に生かし
改修後に作られる諸室群全てを、この『ノコギリ表面』の拡張形態として構成すること。

規模や性質によって、『ノコギリ表面』と各諸室の関係性は変化し
これによって多様性のある空間群の構成を可能としている。
中央の『ガランドウ』空間では、工場が元々持っていた
ダイナミックなスケールを体感することができる。

完成は12月末の予定です。

敷地はパリの外れにある、ルノー地帯と呼ばれるルノーの施設が集まる場所。
その地域は現在、パリの一大文化再開発地区になろうとしていて、
すぐ近くには日本人建築家・安藤忠雄さんの美術館などが建設予定。

元々高級住宅地のであるこの一帯ですが、
この開発によってさらに地価が上がったらしいです。

Architecture Space / 建築, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 18, 2004 23:10 | TrackBack (0)

Tom productsのHPが更新しました。

菅原大輔が参加するTom productsのHPが新しくなりました。

商品写真や。TOKYO DESIGNERS BLOCKのディスプレー
販売店舗一覧などを見ることが出来ます。

ぜひ、覗いてみて下さい。

News / 新着情報, Product / プロダクト | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 16, 2004 22:29 | TrackBack (0)

かみのけんちく

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リクエストにお答えして・・・・・・・・・坂茂さんの事務所情報を。

外観はこんな感じです。
ガラス越しだから上手く撮れませんでした。

場所はレストラン「george」と最上階の展示室をつなぐ廊下に面した
中庭に設置されています。

内観は・・・・・ごめんなさい。プライベートスペースなので記載できません。。

Architecture Space / 建築, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 15, 2004 22:34 | Comments (7) | TrackBack (0)

「紙」と「お寿司」と「浮世絵」と

musee_branly.gif

・ 10日
坂茂パリ事務所の岡田君に誘われて坂事務所見学へ。
Center pompiduの最上階にはjakob+macfarlane設計のレストラン「George」が。
それを横目に進んでいくと仮設テントとして設けられた事務所が見えてくる。
建物は坂茂さんの「ブランドロゴ」となった紙管による構造。
断熱材に薄い発泡スチロールを使っていて、夜になると光が透けてとてもきれい。
「設置場所」も、「日本人による紙建築」であるということも含め
この建築自体が展示物と化していました。
さすがポンピドーセンター。色々なことがかなり戦略的です。

・ 14日
事務所のみんなを招待して、手巻き寿司パーティー。
早朝に市に買出しに行った甲斐あってかなり好評。

・ 15日
Galeries Nationales du Grand Palaisで行われている「Images du monde flottant」展へ。
Images du monde flottantとは、絵・世・浮。つまり日本の浮世絵の展示です。
フランスで見る日本の展示は何か不思議。
展示よりもフランス人の反応に興味が向いてしまう。

すごい量の浮世絵をまとめて見るのは今回が初めて。
西洋絵画は、あるテーマ(例えば「受胎告知」)に沿って全ての要素が構成されている。
それは絵画の中に一つの(「時間」とも呼べる)物語が存在している。
一方、(特に多人数が描かれた)浮世絵の画面では、ある者は歌い・踊り、ある者は決闘し
そしてあるものは寝ていたりする。
つまり、画面の様々な部分にそれぞれの物語(「時間」)が流れている。

表現方法としては、物の大小関係・位置関係、記号的表現など、
やはり西洋的絵画とはかなり違ていることを再々確認。
とくに、勝川春潮が描いた「EDOcho dans quartier de YOSHIKAWA(江戸よしかわ地区/正式名称不明)」
が興味深い。
道沿った幾つかの建物があって、全ての建物はそれぞれの消失点をもった遠近法で、
道をまたぐ門はアクソノメトリックで描かれている。
先日見た歌舞伎の舞台装置にもった感想と同じで、遠近感が曖昧に設定されているから
見かたによって遠近関係がかなり変化してくる。
無自覚にこの操作を行っているんだろうけど、ホルバインの絵よりやってることが面白い。

そういえば浮世絵も歌舞伎も江戸時代に起源を持つものですね。
この表現は時代によって共通に埋め込まれた表現形式だったのかも知れない。

写真は自宅近くで建設が続くJean Nouvel設計のmusee du quai branly
散歩中に撮影したもの。
壁面の植物が異様で魅力的。

Architecture Space / 建築, Art / 美術, Event Lecture / イベント, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 14, 2004 23:10 | Comments (2) | TrackBack (0)

「1984年」の「言語」と「思考」

ジョージ・オーエル(Gorge Orwell)の代表作「1984年(1984)」(新庄哲夫訳/ハヤカワ文庫)を読む。

生活の全てが監視される全体主義社会の中で話が繰り広げられる。
色々な切り口で楽しめる内容でした。
特に興味深かったのは「思考」と「言語」の関係を描いている点。

「独裁者(=偉大な兄弟)」は自分達の独裁支配を延命させるために
様々な方法で国民を支配しようとする。
その中で、もっとも恐るべきかつ完璧な方法が「ニュースピーク(new speak)」
と呼ばれる統一言語の導入。
書き言葉、話し言葉を含めた<全ての言葉>を単純化、合理化し
単語数を圧倒的に減らしていく。
これによって人間の<思想範囲>は縮小され、
最終的には思想犯罪(自由や革命を求める思考)自体をも
不可能にしてしまうというもの。

なぜ、「思考」と「言語」の関係に興味を持ったかと言うと
外国で仕事をしている僕にとって「作る行為(思考)」と「言語」の関係は
常に目の前をちらついている問題だからです。

例えば、建築の設計における<空間>と<空間>の境界の話。
<空間>と<空間>の「曖昧」な<境界設定>は、
中間的な・言い切らない日本語の「言語表現」によって複数の人に共有され、
その<設定>によって設計を進めていく事が可能となる。
一方で、言い切ることで成り立っている英語やフランス語などの言語では
「曖昧であること」は、「決定していないこと」と等しい。
つまり、「曖昧である」という<設定>自体が<設定>として成立しないこととなります。

同僚とのデザインの話をしていても、
僕は「自分の把握できる日本語」という<フレーム>の中でしか思考できないし、
その<フレーム>の中でしか英語やフランス語の表現を行うことが出来ない。
つまり、僕の「日本語の能力」自体が、僕の全ての表現を決定しているという事実。
(外国語自体、そんなに話せないことをこっそりと告白しておきますが。)

哲学者・ヴィトゲンシュタインの名言、「世界が私の世界であるということは、
私が理解する唯一の言語の限界が私の限界をいみすることに示されている。」

「1984年(1984)」は、この言葉を肌身に感じさせ、僕の思考を
少し整理してくれた本でした。

| Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 9, 2004 7:32 | TrackBack (0)

「Biennale Venezia」という「形式」

biennale.gif

9th Biennale Veneziaにいってきました。
ギャラリー間の相川さんと坂茂事務所の岡田君とベニスにて待ち合わせる。

「I Giardini Della Biennale」と「Arsenale」の2会場があって
これを二日に分けて見学。

「I Giardini Della Biennale」は
カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa)による
ベネゼーラ(Venezuela)館のディテールとテクスチャー、
スウェーデン、ノルウェイ、フィンランド(Svezia, Norvegia, Finlandia)館の
土木的ダイナミックさと、光の繊細さに心を奪われました。

我等が日本(Giappone)館は漫画によるオタクの氾濫。
日本の「まんが・オタク」が、世界規模で起こったヒッピーのような流行の
次世代的なものであって、「日本から初めて発信するワールドカルチャーである。」
といわれたら、そうかもしれないと思います。
でも、見ていて不健康で気持ちよくないというのが僕の感想です。
最先端の思想をインプットするまたとないチャンスだったのに
これを逃してしまったのかもしれない。もったいないことをしました。

「Arsenale」は、海軍倉庫の一部が会場として開放され
そこにものすごい量の作品が、分類・編集され、展示されていました。
我々JAKOB+MACFARLANEの作品もここに展示してありました。

Biennale全体の感想は言うと、新しいものは全く感じられませんでした。
次世代の運動や方向性を示すはずのBiennale Veneziaですが
その役割を演じ切れてない印象を受ける。

メディアが発達し、世界中に建築・デザインの情報が駆け巡る現在において
旧来から続く、サロン的な展示方法は次世代を標榜するにはあまりにも
効力を失効した形式なのかもしれないと感じる展示でした。

Architecture Space / 建築, Event Lecture / イベント, Travel / 旅行, Urbanism_City / 都市 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 1, 2004 10:30 | TrackBack (0)

「曖昧さ」と「多様さ」

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10月17日、Theatre National de Chaillotに歌舞伎を見に行きました。

開演前に片岡市蔵さんの楽屋にお邪魔する。
色々聞きたいことがあるのに鋭い質問が出てこない
出てくるのは平凡な質問ばかり。
「何でも聞いてください。」との言葉に逆に緊張して
ただただ、メークの工程を眺めていた。
またとないチャンスだったのにと後悔し、自分の勉強不足を痛感する。

歌舞伎は非常に楽しませていただきました。
面白かったのは舞台装置による「遠近関係」の表現。
建物や背後の風景の部分部分が、
・大小関係があったり、無かったり
・ パースがかかっていたり、無かったり
する状態で同時に、同次元で舞台上に配されているので
それ単体では「距離感」が把握できない。

このように、あらかじめ「距離感の曖昧さ=多様性」を設定して置くことで
話の流れや、演者の配置によって自由に「距離感」を変更することができる。

「距離感」が明確に設定されている西洋舞台装置には
このような「距離感」の把握はあるのだろうか?
今思い起こしても、非常に不思議な体験でした。

その他にも発見が多くありました。
日本の文化はやはり注目すべき点が多い。

Architecture Space / 建築, Event Lecture / イベント, 映画・演劇 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 1, 2004 10:26 | TrackBack (0)

「演じること」/「観察すること」

巴里で10月9日から22日にかけて
「市川海老蔵」の襲名公演が行われました。
それにあわせて多くの歌舞伎役者さん、スタッフの方々が
日本からいらっしゃったんですが、
今回、片岡市蔵さんをアテンドするという機会に恵まれました。

僕が参加するプロダクトレーベル「TOM products」からその大役を授かったのですが
実は「片岡市蔵襲名記念品」を「TOM products」が手掛けていたりしている。

アテンドさせていただいて感じたのは、非常に鋭い洞察力の持ち主であること。
僕の解説に対してそれをより発展させるようなご質問を常にいただいたことです。

さすが「芸を極めている方」。
「演じること」とは、つまり「演じる対象を鋭く観察する」ことに他ならない。

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Paris / パリ, 映画・演劇 | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 1, 2004 10:17 | TrackBack (0)

坂口恭平さんとお会いする

美術家の坂口恭平さんとお会いする。
坂口さん自体自分の職業が何であるのかわからないというので
とりあえず「美術家」と呼ばせていただくことにする。

彼の代表作は
東京の浮浪者の家をガンガン撮影し続けた写真集「0円ハウス」
貯水タンクの中で生活する彼自身を撮影し続けた「貯水タンクに棲む」
などがある。

sakaguchi_0yen.gif

彼は早稲田大学建築学科石山研究室の卒業生なのですが
高校時代から建築に対する情熱が物凄く、石山修武に会うために
早稲田に入ったという人物。

お話をしていて「建築を愛する」と言う情熱を物凄く感じました。

現在、彼は「建築ど真ん中」というよりも、「建築の周縁」の活動を行っている。
建築を愛しすぎるがゆえに、その中心に触れることに対する恐怖が
彼を「建築の周縁」へと向かわせている気がします。
彼は否定していましたが。

そんな彼もいつか建築を作りたいらしい。
そのお手伝いができれば、大きな刺激を与えてもらえる気がしました。

建築のどのような「周縁」をついてくるのか?
次の作品が楽しみです。

Art / 美術, Paris / パリ | Posted by SUGAWARADAISUKE | 菅原大輔 at 11 1, 2004 1:30 | TrackBack (0)