今日の中国都市計画
[10+1] 特集 都市の危機/都市の再生 ―アーバニズムは可能か? INAX出版
「今日の中国都市計画」(P87ー94)の翻訳校正を担当しました。
都市の視点から見た中国的状況に関する概要になっていると思います。
個人的な感覚ではありますが、今日まで中国へ視線を向ける動機付けがあまり無かったように思います。しかしながら、新規性に溢れ、あらゆる限界を拡大し続ける状況を迎えているのは確かなようです。例えば、急速な都市化、日本の外貨貯蓄高越え、増え続ける人口、日本海を越えた環境汚染、独自の宇宙開発…。中国に関する情報を無視できなくなった。すなわち、中国に対する解釈と実践が必然の時代となったと言えます。
95年から始めた長江流域地帯のリサーチ。建設が進んでいる北京のCCTV。最近では深圳の証券取引所のコンペにも勝利したOMA。中国的状況を利用した上で建築家としての興味を突き進めているレムの解釈を以下に抜粋。
中国に関して、誤解があるように思います。中国は何のためらいもなく、資本主義国家になろうとしているというのは誤解です。実際には、中国は独自のシステムも維持しようとしています。これまでのシステムの長所と新しいシステムとをどのように統合すべきか、模索していると思います。
また、建築に関わる事情として、世界の中で見れば建築家の数が極端に少なく、圧倒的に建設量が多いということも指摘しています。一方で、先進国のような建築をつくる際の社会的、経済的、文化的な相互制御能力がない。つまり建築が簡単につくられすぎる。という警笛も鳴らしています。
手っ取り早く今の中国を説明するとすれば、70年代前半まで10年ほど続いた文化大革命によって引き起こしてしまった歴史の切断。それ以降、アジア的と言える経済成長を前提にした都市の発展傾向の中で、世界の中で見ても最も規模が大きく、最も速度が速い状況を迎合している中国が、21世紀的国家の体格を身につけようという流れの中、08'北京オリンピック、10'上海万博の開催が待ち遠しいというが今の気運と言えようか。中国語のウェブサイトではありますが1978-2002 中国25年流行全記録の中にあるイメージを見るだけでもその流れが伝わるような気がします。
なぜ、文化革命以降を意識するのかという点を補足するならば、日本における言説空間の中でよく指摘される歴史的な分水嶺として、戦争による文化の切断からの再起動がある。その後、日本でも64'東京オリンピック、70'大阪万博によって誘引された都市化、以後の都市膨張、バブルの崩壊に至るまでの一連の流れ。その中で孕んできた現代化のエネルギーをさらに圧縮した状態が、今の中国的状況に近いものがあるかもしれない。同じアジアにおいて、そのような見方で一旦見比べる価値はあると思う。そう言った視点の一つとして、オリンピックを迎える前年63'に亡くなった小津安二郎監督作品全集を、今、見ている。すなわち、オリンピック時に行われた首都高などの都市改造を受ける前の東京とその近郊が舞台となった映画の中の世界を見ながら、今の北京との現状の差異を見定めたいなんて思っている。
ともかく中国に対する解釈を必要としているタイミングに、中国の都市計画についての簡単な概要をまとめる機会を得ることができました。
以下、翻訳した内容の中から。
・2005から 10年は中国の第11次「国民経済と社会発展」の5カ年計画の期間である。今期から、元の「五年計划(jì huà)」から「五年規划(guī huà)」に変わり、一字の違いだけではあるが中央政府が市場化を推し進める決意を具体的に示したと言える。
・50年代、中国の人口は5億人程度であったが、2000年には13億人にまで達し、2030年頃には16億人に到達する見込みである。(ちなみに、文化革命時に人口が2億人増えたとユン・チアン著のワイルドスワンには書いてあった。)
・「都市化(大都市の発展を重点とする)」と「城鎮化(小さな都市と街の発展を重点とする)」をめぐる論争の中で)「都市化」という言い方に断固として反対する意見もある。都市化と言えば必ず「二次元構造」、すなわち都市と農村の分断といった、従来と同じ問題を繰り返すこととなり、これは地域格差をさらに広げ、都市部と農村部の対立を引き起こし、都市インフラ施設の不足、都市部への農民の過度な流入、都市環境汚染などの難題が起こり、それらに応対するのが困難であるからだ。さまざまな議論の結果「城鎮化」に対する賛成のほうが多かった。*城鎮(chéng zhèn)=都市より規模が小さい町の略称
・もともと土地の所有権および使用権は国のものだった。土地使用権改革は所有権と使用権を分け、土地使用を有償とした。その資金を元手に、都市の更新やインフラ整備に多額の投資が可能となった。また、土地の価値と資本の配分によって都市構造の調整を導き、都市の新陳代謝をより合理化、高度化させる。 ~現在の体制では、土地の収益は税収を除き都市政府の二番目の財政源であり、政府収入30-60パーセントをも占めている。このような制度下では、都市政府は都市開発の当事者となり、政府と開発業者は実質上の利益享受の共同体である。政府は土地収益を上げ、開発業者は不動産収益を上げる。都市政府は利益ある開発グループのひとつとなった。 ~多くの都市(特に首長)は不動産を利用して、GDP成長を牽引することを望み、様々なレベルの都市政府は「都市経営」に努める。
など。
*追記
この番組見たいです。
まんぷく::日記 BS特集「民衆が語る中国・激動の時代~文化大革命を乗り越えて」、明日+あさって再放送
2月1日(木)
1. 19:10~20:00 (1)紅衛兵誕生へ(Gコード7908739)
2. 20:10~21:00 (2)造反有理の嵐(Gコード8538265)
2月2日(金)
1. 19:10~20:00 (3)下放若者大移動(Gコード7968111)
2. 20:10~21:00 (4)改革開放への胎動(Gコード8505937)