建築学生が思いめぐらすインターネット時代の知的生産のツールの可能性

議論が盛り上がっているブログ論(ブログのPage Viewについて以降のエントリー、ブログとは‐はあちゅう騒動から考えるトップブロガーには覚悟が必要など、サイドーバーにある*UPDATED ENTRIESに、更新順で並んでいるので状況が追える)を読みながら思ったこと。以前のエントリーで書いたが、COMZINEのバックナンバーにあるこれからの社会情報論に関する対談の中で「インターネットが登場してきたことで、個人がばらばらになっていた状態が改善された。」という一説があった。当時の読後感としては、体験出来てはいなかったものの、感覚的には説得力のある話だと思っていた。しかし、いまのところ渦中にいるからか、実感がもてない。

梅田望夫さんのBlog論2005年バージョン(2)を借りて、建築学生の身体に置き換えてみる。

「専門家における日米の気質の違い」 日米の専門家を比較して思うのは、日本の専門家はおそろしく物知りで、その代わりアウトプットが少ない。もう公知のことだから自分が語るまでもなかろうという自制が働く。米国の専門家はあんまりモノを知らないが、どんどんアウトプットを出してくる。玉石混交だがどんどんボールを投げてくる。そんな対比をすごく感じる。

課題で建築学生が提案する「なかみ」は、建築界がかかえてる流れや問題の縮図である。なんて、内藤廣さんがどこかで言っていたが、梅田さんの文章を読んで、シリコンバレーの専門家の日米比較によって明らかになった、コミュニケーションレベルでの違いというのは、建築学生間の会話にも言えると思った。皮肉たっぷりに言うと、おそろしく物知りかどうかはわからないが、口にしない。自己主張しない。というのが大枠の流れ。たまにむかつく時さえある。従って、どちらかというと僕はあんまりモノを知らないが、どんどん出す方に近いなぁと思った。一人で考えている時よりも、会話の緊張感の中でのほうが、発見と進展の実感が得られるからだ。どちらが良いというのは分からないが、そういう違った気質の中で共有できるテーブルを見つけられずにいて、最近困る事が多い。まぁ、共有できるところに出て行けばいいという話もわかるんだが、草の根レベルでそれだとやっぱり全体としては、ずれてしまうのではないかという感覚が働くので、切り捨てはできない。

「 裏切られた期待」 日本のIT産業界の超一流の個人が肉声や本音や仮説をどんどんBlogを通して語ってくれるようにはならないものか、という期待であった。〜 大組織に属する超一流の技術者や経営者が本気でBlogを書くということも、どうも日本では起こりそうもない。磯崎さんのBlogのような質の高いものが、ありとあらゆる分野で、これでもかこれでもかと溢れるようになればいいのだが、そういう方向を目指すBlogは相変わらずほんのわずか。日本のBlogは、そちらに向かっては進化していないように思える。残念ながら今のところ、僕の期待は裏切られたのだな、というのが正直な感想なのである。

まだ、日本の建築家の超一流がどんどんBlog(日記)を利用するまではいかない。難波和彦さんや石山修武さんの日記のカミングアウトによって余波が起きることがあっても、僕には議論のためというよりは、自分の戦略のためという色合いに見えている。より研ぎ澄ます方が、一人の建築家の流れとしては当然なんだろうけど…。安藤忠雄さんなんかは、最近では政府の諮問会議なんかで意見を言ったりしているが、もっと市民レベルで話題が共有される必要性があると思う。トラックバックなどで簡単にリンクが貼れるなど、いわゆる計算外を期待できるメディアとして、blogには可能性がある。だから、僕らの世代がやることに十分な意味を感じる。

blogの可能性を感じる一説として。

肉声に耳を傾ける勉強法という意味で、
・1980年代後半から1990年代半ばのインターネット登場まで
・インターネット登場からBlog登場まで
・Blog登場から現在
と三期に分ければ、インターネット登場よりもBlog登場のインパクトのほうが圧倒的に大きかった。つまり2002年後半くらいから、僕の勉強法における「知的生産性」は著しく向上したのである。だって皆が肉声で語り始めたんだものね。

*UPDATED ENTRIESについて=上から10番目までは、技術的な問題で、更新状況が反映されにくくなっているものが並んでいる。11番目以降がリアルタイムに、順番が変わる。中には、趣味的なトラップもあるけど(笑)

blog | at April 28, 2005 7:40


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Posted by itachoko at October 26, 2006 4:41 PM