野沢さんと鶴橋さん

野沢尚さんが亡くなってから,DVDに焼いたまま見る気がせずに放ってあった『砦なき者』(2004年)を見た.何もドイツで見なくともと思ったが,ワールドカップが終わったヨーロッパの長い夜にはちょうどよかった.
続きを考えていて結局書かなかった野沢作品の紹介は,本当であれば演出家の鶴橋康夫さんとの単発ドラマたちに続くはずであった.この『砦なき者』も演出は鶴橋さん.正直言って,以前の鶴橋作品と比べると乱暴さが足りない演出が物足りなくもあったが,その一方で脚本はよくできていた.しかし,このドラマを野沢さんの自死の後に見ていると,どうしても作家と作品を直結させるような見方をせざるを得なくなってしまう.そんな気分をもっと正確に(正直に?)書いているコラムを見つけた.放送から自殺まで3ヶ月くらい.その間に見ておけばよかったと少し後悔している.
今や野沢さんは脚本家よりも小説家として有名かも知れないが,小説はほとんど読んだことがない.日本に帰ったら,少し読んでみよう.

鶴橋康夫さんとの協働作品は以下の通り.ほとんどが鶴橋さんがよみうりテレビ在籍中に「木曜ゴールデンドラマ」などの長時間ドラマ枠で放映されたもので,もちろんDVD化はほとんどされていない.いつかまたこの世に登場することがあるのかな?

殺して,あなた…(1985) 大原麗子,小林薫,阿藤海
夢のあとさき(1985) 浅丘ルリ子,風間杜夫,川谷拓三
風の家(1985) いしだあゆみ,小林薫,原田美枝子
夫婦関係(1986) 浅丘ルリ子,原田大二郎,岡田英次
手枕さげて(1987) 大竹しのぶ,風間杜夫,高樹澪
喝采(1988) 桃井かおり,小林桂樹,すまけい
最後の恋(1988) 浅丘ルリ子,津川雅彦,長門裕之
密写された女(1989) いしだあゆみ,風間杜夫,泉谷しげる
愛(めぐむ)の世界(1990) 大竹しのぶ,役所広司,小林稔侍
乾いた夏(1990) 浅丘ルリ子,樋口可南子,風間杜夫
朝日のあたる家(1991) 役所広司,名取裕子
小指の思い出(1991) 浅丘ルリ子,柴田恭兵,山城新伍
東京ららばい(1991) 大竹しのぶ,風間杜夫,斉木しげる
性的黙示録(1992) 真田広之,樋口可南子,津川雅彦
雀色時(すずめいろどき)(1992) 浅丘ルリ子,役所広司,赤井英和
リミット もしも,わが子が…(2000) 安田成美,佐藤浩市,田中美佐子(連続ドラマ)
砦なき者(2004) 役所広司,妻夫木聡,鈴木京香

TV | Posted by satohshinya at July 13, 2006 6:55 | Comments (4) | TrackBack (1)

セカチューと超愛してる。

明日から『世界の中心で,愛をさけぶ』の再放送をやるそうなので,その話題.ご存じのとおり,小説があって,映画になって,ドラマになった.ここでの話題は,最後のドラマ版.映画は見ていないし,小説も読んでいない.しかし,ドラマには久々にハマってしまった.
『セカチュー』は,映画の脚本家たちがおもしろいことに「潤色」としてクレジットされている.映画は,今や日本映画を背負って立つ勢いの行定勲氏が監督し,脚本も書き,坂元裕二氏も脚本に参加している.しかも,急逝した名カメラマン篠田昇氏の遺作となってしまったので,ぜひ映画館で見たいと思っていたが,結局まだ見ていない.
映画はともかく,ドラマの話.ドラマは,その映画の潤色を元に構成されている.その後の主人公の視点というものが映画で加えられたらしい.テレビにもその視点が加えられている.その意味でこのドラマは,小説ではなく,映画を原作としている.そのため,小説や映画は知らないが,ドラマの舞台は80年代になっている.まさに主人公たちの生まれた年は僕とほとんど同じ.それも個人的にハマった理由の1つ.
演出は堤幸彦氏が中心.堤氏は,『ケイゾク』や『TRICK』で有名だが,不安定なカメラワークと特異な編集で,少し日常とずれる演出が見所.ちょっとデビット・リンチみたい(ほめすぎ?).実は堤氏の映画監督デビューは,『バカヤロー! 私,怒ってます』の1本.これは森田芳光氏のプロデュースによるものだが,さすがに先見の明があった.
その堤氏が,初めてと言ってよいくらいに正攻法の演出を見せたのが『セカチュー』.こういう演出もできるのかと感心する.特に,ほぼ全編に亘る松崎町のロケでの丁寧な演出がよい.ちなみに映画では庵治町がロケ地.これがあるところ.
しかし,このドラマの不思議なところは,主人公の女の子が最後に死ぬという前提で話が進んでいくところ.最後にどのような結末が待っているのか? という期待や裏切りはなく,間違いなく主人公は死ぬ.難病の女子高生ものなんて,それはもちろん,誰でも無理矢理感動させることになるだろう.そう考えるとひどい話だ.だからこそ,そんな難しい前提でありながら,正攻法で丁寧につくるドラマには好感が持てた.
というわけなので,おそらく原作の小説を読むことはないだろう.それを読むくらいだったら,同じ難病女の子ものの,舞城王太郎氏『好き好き大好き超愛してる。』を読む方がよい.明らかに『セカチュー』のパロディであるこの小説は,かなりの傑作.最後のオチは,やっぱり舞城か.まあ,いいか.

TV | Posted by satohshinya at April 3, 2005 8:08 | Comments (1) | TrackBack (2)

第2世代より

アニメネタ.あの『AKIRA』で作画監督をやっていた天才アニメーター(であった)なかむらたかし氏が,ひそかに監督・脚本をやっていた『ファンタジックチルドレン』が来週終わる.なかむら氏については語ると長くなるので,こういうところを参照してもらうとして,作品としては,せめて『幻魔大戦』(新宿で主人公東丈がベガに襲われるあたりと,N.Y.でのソニーの銃撃戦あたりを担当)を見てほしい.おそらく大勢の人が『風の谷のナウシカ』(アスベルが空中戦をやるあたりを担当)は見ていると思うけど,あれはなかむら氏の中ではイマイチの作品.『AKIRA』も作画監督だったので,原画はほとんど担当していないので,大友克洋氏の監督作であれば,『迷宮物語』中の「工事中止命令」が必見.(作画監督と原画とどのように違うかも面倒なので書かない.詳しくは『アキラ・アーカイヴ』を参照.)
話は『ファンタジック』に戻る.今週はなかむら氏が絵コンテも担当.さすがに今までとは異なる画面構成を堪能.1〜3話の絵コンテも担当したようだが未見.DVDも発売された模様.物語自体は途中から見始めたためか,それほど興味が持てず,監督をやっているんだからいつかは原画も担当するのではないかと,淡い期待を持ちながら見続けていた.しかし,公式HPによれば,遂に最終回には絵コンテとともに原画も担当するらしい.実は,『AKIRA』以降はあまりまじめにアニメを見てこなかったので,なかむら氏の作画を見るのはそれ以来ということになる.楽しみ.
ちなみに,『ファンタジック』の後番組には,『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の監督をやった河森正治氏の『創聖のアクエリオン』が始まるとのこと.見てみよう.
更に,来週のNHKBS2の『BSアニメ夜話』では『新世紀エヴァンゲリオン』が放送.これもまた必見.

TV | Posted by satohshinya at March 25, 2005 8:19 | Comments (1) | TrackBack (0)

追悼 野沢尚 連続ドラマ編

脚本家の野沢尚さんが自殺した.僕がテレビドラマを見る場合,ほとんどが脚本家で選ぶことになる.よく考えると,彼の書いたドラマはほとんど見ているように思う.死んでからこんなことを書くのも何だけれど,彼の作品を紹介してみる.
元々は映画の脚本家であった.僕が見た映画は,1989年の『その男,凶暴につき』(監督:北野武)『ラッフルズホテル』(監督:村上龍)くらい.『ラッフルズホテル』は東京国際映画祭で上映されたのだが,それを見たときに客席に野沢さんを見かけたのを覚えている.1990年から95年頃までには,「シナリオ」という雑誌にエッセイを連載していて(『映画館に,日本映画があった頃』という本にまとまっているらしい),毎月おもしろく読んでいた.
1992年に初めての連続ドラマ『親愛なる者へ』を書く.浅野ゆう子,柳葉敏郎,佐藤浩市が主演,主題歌は中島みゆき『浅い眠り』.中島みゆきはゲスト出演もしていた.続いて93年が『素晴らしきかな人生』.浅野温子,織田裕二,佐藤浩市,富田靖子が主演,主題歌は井上陽水『Make-up Shadow』.デビューしたばかりのともさかりえも出演.94年が『この愛に生きて』.安田成美,岸谷五朗が主演,主題歌は橘いずみ『永遠のパズル』.このドラマはあまり記憶がないのだけれど,とにかく悲惨な話だった印象がある.ここまでが夫婦純愛三部作と言われるもの.どれも今までのドラマとは違うものを書こうという意欲は感じられて,それなりにおもしろかった.
そして,1995年が『恋人よ』.鈴木保奈美,岸谷五朗,鈴木京香,佐藤浩市が主演,主題歌はセリーヌ・ディオンwithクライスラーカンパニー『TO LOVE YOU MORE』.このときには小説を最初に書き,それからドラマのシナリオを書いていた.それだけに全体のバランスがよく,野沢作品のベストだと思う.
1996年『おいしい関係』(主演:中山美穂,唐沢寿明)は途中まで書いて降板というお粗末なもの.97年が『青い鳥』.豊川悦司,夏川結衣,鈴木杏,山田麻衣子が主演.2部構成となっていて,夏川結衣が死ぬまでの前半は最高におもしろかった.この作品で夏川結衣の大ファンになり,これが終わったら興味をなくしてしまったくらい.98年が『眠れる森』.中山美穂,木村拓哉が主演.話題になったが,映像を堂々と使ってミス・リーディングさせる手口に辟易.これでも江戸川乱歩賞受賞作家か? と思った.99年が『氷の世界』.松島菜々子,竹野内豊.これも最悪.
2000年の『リミット もしも,わが子が…』は,滅茶苦茶な話だったが,結構おもしろかった.安田成美,佐藤浩市,田中美佐子が主演,演出は鶴橋康夫も担当していた.01年が『水曜日の情事』.天海祐紀,本木雅弘,石田ひかりが主演.まあ普通.02年が『眠れぬ夜を抱いて』.財前直見,仲村トオルが主演.実はこれ,途中で見るのをやめてしまった.しかし,結局これが最後の連続ドラマとなった.(続く)

TV | Posted by satohshinya at June 30, 2004 8:08 | TrackBack (1)

スリムにすることにより美しくなるという発想

マルチリモコンというものをもらった.テレビにビデオにDVDが1つのリモコンで扱えるようになり,「シンプルにすることでインテリアの質と操作性を向上させる」というものだ.リアル・フリートAMADANAというブランドのものなのだが,デザインはそれっぽいし,値段も安いものではない.ホームページを見てわかったが,これは「美しいカデン」をコンセプトとしたブランドで,インテンショナリーズの鄭秀和がプロダクトディレクション,タイクーングラフィックスがアートディレクションとグラフィックデザインをやっている.なるほど,と思う.
しかし…….我が家の状況は,テレビはSONY,ビデオはPSXのHDレコーダー機能を仕様,DVDもPSXを兼用.Victorのビデオもあるが,DVDへとダビングするときしか使わない.おまけにテレビは,電波障害の問題があるためにCATVに入っており,TOSHIBAのホームターミナルを介さないと見られない.つまり,現在のリモコン状況は,ホームターミナル用1台とPSX用1台.PSXリモコンにもテレビやビデオを使えるマルチリモコン機能があるが,このホームターミナルはそれに対応していない.更にPSXリモコンにはホームボタンというのがあって,これを用いることでテレビやHDやDVDや様々な役割を切り替えることができる重要な機能のため,このボタンが使用できないと非常に困る.もらったマルチリモコンは,ホームターミナルにも対応しないし,もちろんホームボタンもない.というわけで…….

リモコンをいただいた方々には本当に申しわけありませんが,このような事情で使用できておりません.せめての事と思い,「美しいカデン」を紹介することとします.

TV | Posted by satohshinya at May 2, 2004 8:17 | TrackBack (0)

アップデート

昨年12月の発売以来2度目となる,PSXのネットワークによるアップデートを行った.インターネットに接続可能なイーサーネットケーブルを,本体にダイレクトに差し込むことでアップデートが行える.前回のアップデートでは,2倍,10倍,120倍速の再生に30倍速が加わり,HDDに録画したもののリストが名前順に並び替え可能となった.今回は,1.3倍速の早見再生(音声付)が可能になった.もちろん,それ以外の機能も更新されている.PCを考えれば,このアップデートの感覚は当たり前のことなのだが,PSXをゲーム機,もしくは家電(PSXは家電売場で売っている)というイメージでとらえると不思議な感覚がする.もちろん,PSXはHDDが内蔵されていて,DVDを見る/焼くことができ,CDを聴くことができ,デジカメから写真を取り込むことができ,ゲームもできる.後は,テレビチューナーが付いているくらいで,ほとんどがPCの機能の一部を紹介しているようなものだ.ちなみに,PSXには別売キーボードもあって,それを接続すると見た目もデスクトップのPCと変わらない.PCの機能を特化して家電にすり替えただけだと言われると確かにそれまでだが,これを機能がアップデートする家電だと考えると,PSXはおもしろい(iPodも同様).

3度目のアップグレードが,8月3日よりダウンロード可能になる.今回は,DVDのタイトルメニュー作成(無かったのがおかしいのだが)と,HDDからDVDへの録画モードの切り替えが可能になる.何れも,とても必要としていた機能なので,とてもうれしい.しかし,どこまでが本体の性能に依存し,どこからがOSの性能に依存するのかよくわからないが,無料でこんなに進化していくのだから,本当にうれしい限りだ.(04.06.25.追記)

TV | Posted by satohshinya at April 1, 2004 6:58 | TrackBack (1)