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通信と建築と映画と世界文化と応用美術@frankfurt

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「Museum für Kommunikation Frankfurt(フランクフルト通信博物館)」は郵便や電話などのコミュニケーションをテーマにした博物館で,展示室の大部分が地下にあり,平面に円形を用いた展示空間が拡がっている.

展示室を進むと,天井の高さが低い小部屋にアートコレクションが展示されている.そこは円形プランとは無関係で,ボイスクリストのコミュニケーションをテーマに扱った作品が並んでいる.実はここの敷地内にも邸宅が建っており,その建物も博物館の一部として事務機能などに使用されていて,地下の基壇部分を展示室に再活用していたのだった(写真は地下からガラス屋根を通した邸宅).元々この博物館は,邸宅だけを用いて1958年にオープンし,その後90年にギュンター・ベーニッシュ設計によって増築が行われた.邸宅と展示室の関係は展示を回っているだけではよくわからなかったし,展示目的で訪問する観客には邸宅はあまり気付かれない存在である.それらの関係を理解して見るとおもしろくはあるのだが,もう少しその関係がわかりやすいものであったらよかっただろう.そして,その結果に得られた展示室がおもしろいものであれば尚更よいのだが,残念ながらそれほどではない.(参考リンク:展示紹介建築紹介

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入口脇には馬の銅像があり,そこにはパイクの作品も置かれているのだが,残念ながら修復中のために写真が展示してあった.博物館内部も改修中のためか館内に足場が組まれていた.ベーニッシュのデザインには足場があってもそれほど違和感を感じないのがおかしかった.そして,このパイクの写真を支持するためにもごていねいに足場が組まれていた.
その並びには「Deutsches Architektur Museum(ドイツ建築博物館)」があり,ここもO.M.ウンガース設計の邸宅改修により1984年にオープンしている.(参考リンク
更に隣には「Deutsches Filmmuseum(ドイツ映画博物館)」があって,Helge Bofinger設計により同じ84年にオープンしている.ここも邸宅を改修して使用しているようで,常設展示として映画の歴史や技術を紹介している.企画展示は81年のウォルフガング・ペーターゼン監督作品『Das Boot(U・ボート)』を紹介する「Das Boot Revisited」展を開催中で,撮影に使われたUボートの模型をはじめとして,さまざまな資料やインタビュー映像など,充実した内容による展示が行われていた(展示室写真).25年も前のたった1本の映画だけで,これほどしっかりした展示を行っていることに驚く.日本ではあり得ないだろう.(参考リンク
続いて3棟の邸宅を利用している「Museum der Weltkulturen(世界文化博物館)」がある.3棟がどのように使われているのかはわからないが,右端の1棟を裏口から入ると「Galerie 37(ギャラリー37)」が地下にある.ここでは「Leben mit Le Corbusier」展と題した,カメラマンBärbel Högnerによるチャンディガールを撮影した作品を展示していた.チャンディガールはル・コルビジュエが都市計画を行ったことで有名だが,完成から40年後の街と人々の日常的な様子を紹介している.
更にその並びには「Museum für Angewandte Kunst Frankfurt(フランクフルト応用美術博物館)」があり,リチャード・マイヤー設計の増築が1985年に完成している.(参考リンク

美術 | Posted by satohshinya at January 19, 2007 17:05 | TrackBack (0)

対称@frankfurt

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「Liebieghaus Skulpturensammlung(リービークハウス彫刻コレクション)」は古代彫刻を展示する美術館なのだが,興味深い2種類の展示室を持っていた.ここも1896年に邸宅として建てられた建物を1909年から美術館として使用している.

エントランスホールに入ると左側に開館時に増築された展示室があり,そこにはフローリングの床に木で作られた彫刻だけが並んでいる.右側には,最初の展示室とシンメトリーな関係に1990年にScheffler & Warschauer設計によって増築された展示室があり,そこには石貼りの床に石で作られた彫刻だけが並んでいる.何れの展示室も壁は真っ白く,天井からは自然光が入り,そんな空間に無造作にいくつもの作品が並んでいる様は,まるで現代美術のインスタレーションにすら見える.
やや短絡的なアイディアではあるし,たまたまシンメトリーに建てられる敷地があったということかもしれないが,おもしろい展示空間だった.林立する作品群が鑑賞する場としてふさわしいかどうかはわからないし,同じ素材の作品だけが並ぶことがよいのかどうかもわからないが,このような彫刻を展示する美術館としては非常におもしろいのではないだろうか.企画展は「Die phantastischen Köpfe des Franz Xaver Messerschmidt」展を開催中(作品・展示室写真英文プレスリリース).

美術 | Posted by satohshinya at January 17, 2007 13:31 | TrackBack (0)

普通の邸宅@frankfurt

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まさに邸宅をそのまま美術館に改装している「Museum Giersch(ギエルシュ美術館)」は,それほど特徴のない美術館だった.

1910年頃に建てられた邸宅を用い,2000年に開館した比較的新しい美術館.ライン・マイン地域のアートを対象としているだけあって,展示してある作品も地元作家によるものといった風情で,特筆すべきところがない.1階は邸宅をそのまま使っているようで(パーティーに貸し出していたりもする),2階から4階までの企画展示室はさすがに床がフローリング,それ以外は真っ白な展示室となっているのだが,なんだかきれいすぎて素っ気ない.おまけに展示照明は人感センサーに反応して点灯するようになっていたりする.「Marie-Louise von Motesiczky」展を開催中.作品を保護するためか窓にはシャッターが閉まっていたり,そういったことも含めて,元の空間を生かした展示空間となってはいない.古い邸宅を改装すればどんなものでもよい美術館になる,というわけではないようだ.

美術 | Posted by satohshinya at January 14, 2007 16:01 | TrackBack (0)

中央に位置する不思議な展示室@frankfurt

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フランクフルトにはマイン川沿いにミュージアム通りと呼ばれる通りがあって,10館もの美術館・博物館が並んでいる.その中で最も大きなものが「Städelsches Kunstinstitut und Städtische Galerie(シュテーデル美術館・市立美術館)」である.

クラシカルでシンメトリーな外観の建物に,やはりシンメトリーな展示室が拡がっている.2階に19,20世紀の作品,3階に14〜18世紀の作品とさまざまな年代の作品が展示されている.1817年設立,78年に現在の位置に移転したが,第二次世界大戦の被害に遭い,1963年にJohannes Krahn設計によって再建された.その意味では特別に古い建物というわけではない.展示室はフローリングまたは黒い石,壁はさまざまな色に塗られているヨーロッパでは典型的な美術館.中央の階段を上がると,真っ青に塗られた壁に絵が架けられており,展示室とも思える不思議なスペースに入り,そこから各展示室へと分かれていく(階段室写真).美術館の後方側面にはグスタフ・パイヒルにより1990年に増築された企画展示室が増築され,2階の展示室で接続しているのだが,展示替えのために使用されていなかった(おそらく増築部分の展示室写真).写真は裏庭で,右が本館,正面が増築.(参考リンク

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2つの企画展が常設展示に挟み込まれるように行われていた.「Fokus auf Jan van Eyck: Lucca-Madonna」展は,アイクのただ1点の絵にフォーカスを当てたもの(作品・展示室写真).「Martin Kippenberger: Arbeiten bis alles geklärt ist - Bilder 1984/85」展は,97年に夭折し,近年テート・モダンで回顧展が開かれるなど注目されているKippenbergerの個展(作品・展示室写真).といっても展示されていたのは84,85年に描かれた数点の作品だけで,あまりおもしろいものではなかった.Kuppelsaalと呼ばれるドーム状のトップライトを持つ中央の展示室で行われていたのだが,ここもまた円形に下へ吹き抜けているロビーのような空間であった.そのためか作品に集中しにくく.展示室としてはちょっと不思議なスペースだった.
この美術館の裏にはStaatliche Hochschule für Bildende Künsteという芸術学校があって,かつでピーター・クックが教鞭を執っていた際に設計したガラス張りの学食があるらしい.現在は,ベン・ファン・ベルケルが学科長のようだ.

美術 | Posted by satohshinya at January 14, 2007 0:32 | TrackBack (0)

おいしいデザート@heidelberg

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「Heidelberger Kunstverein(ハイデルベルク・クンストフェライン)」はDieter Quast設計により,1990年に「Kurpfälzischen Museums(クアプファルツ博物館)」と一体の建物として作られた.旧市街の中央通りに面した元邸宅,現博物館の入口を潜り,中庭を通り抜けた先に建つ建物の左部分がクンストフェラインである.

博物館と共通のエントランスを通り,受付カウンターも含まれるHalleと呼ばれるメインの展示空間に入る.ここでは「Politsche Wahrheiten」展(フライヤー)が開催中.Halleのロフト状の2階からブリッジで渡るPlattformという小型スペースでは,「100 Tage=100 Videos」展(フライヤー)と題して100日間で100本のビデオ作品を日替わりで上映していた.地下にもStudioという展示空間があるが,展示替え中で入ることができなかった.70年代的と思えるようなデザインの展示空間は,天井や壁面にもガラスを多用している.自然光が降り注ぎ,天井の高さも高い現代美術向きの空間ではあるのだが,サッシが太く,ブリッジのデザインも野暮ったい.Plattformという小展示スペースもおもしろい試みだが,スペースのデザインに工夫がほしい.中庭の雰囲気はとてもよいのだが,展示室のガラス壁面は外部と特に関係を持っていない.つまりはあまり感心しない美術館だったが,中庭にあるレストラン(のデザート)はとてもおいしい.(参考リンク:図面レストラン紹介
ちなみにクアプファルツ博物館は,考古学の展示とともに絵画の展示も行う美術館とも呼ぶべき場所である.写真はハイデルベルク城.

美術 | Posted by satohshinya at January 11, 2007 19:01 | TrackBack (0)

ジャコメッティ兄弟@paris

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10年以上前にはじめてパリへ行ったとき,マレ地区を散歩していて「Musée National Picasso(ピカソ国立美術館)」に出くわした.何の予備知識もなく,ガイドブックも持たずにパリへ来ていたため,こんな辺鄙なところにもピカソの美術館があるなんて,さすがにパリだなと感心したことがある.更に館内に入り,展示されていた作品のすばらしさに圧倒されてしまった.帰国してから,それがパリでも有名な美術館であることを知った.

ここも17世紀の館を機能転用しており,ロラン・シムネの改修により1985年にオープンした.2階から入り,展示室内のスロープを上がった3階が企画展示室.「Picasso / Berggruen Une collection particulière」展を開催中で,コレクターHeinz Berggruenのコレクションを紹介していた.下階は常設展示で,制作順にピカソの名作が並んでいる.順路は2階からはじまり,いかにも邸宅の居室といった雰囲気の展示室(第4室)に初期の作品が並ぶ.続く1階はやや天井の低い展示室(第9室)があって,中庭のようなスペースにガラス屋根を架けた大きな展示室(第12室)に出る.1階でも企画展「Picasso Xrays」展を開催中で,タイトル通りピカソの立体作品のX線写真を展示していた.企画展示室を含め,部分的に壁面が艶ありの白色であったことが印象的だった.床に艶がある美術館は少なくないが,壁に艶があるのはおもしろい.
しかし,この美術館の一番の見所は地下にある.ヴォールト天井を持つ石の壁に囲まれた展示室(第16室)に,中期から後期の作品が並んでいる.最初の訪問の記憶でも,この展示室のことだけははっきり覚えている.天井は高いどころかむしろ低く,部屋の中央に柱が何本も立っていて,まったく展示室には向いていないように思えるのだが,なぜか印象深い展示室が成立している.どんな作品にも似合うわけではないだろうが,自然光もなく(多少入っているが),巨大なボリュームもなく,ホワイトキューブでもない展示室の1つの可能性を示しているように思える.(参考リンク:平・断面図常設展示室の全パノラマ,美術館紹介照明の解説
ふと常設展示室に吊されている照明が気になった.線で構成された彫刻のような照明が非常によいと思っていたら,これがジャコメッティの作品であった.開館の際に,イスやテーブルとともにジャコメッティが設えたらしい.ここでまたも勘違いをしていたのだが,ジャコメッティという名前を見て,てっきりアルベルト・ジャコメッティだと思っていたら,後からよく調べてみると弟のディエゴ・ジャコメッティの作品であることがわかった.兄の助手やモデルを務めるとともに,家具の製作者でもあったらしい.10数年前と同様に,またもや無知であったというところか.

美術 | Posted by satohshinya at January 11, 2007 0:26 | Comments (2) | TrackBack (0)

がんばれ!図工の時間

図画工作科の授業は,2002年度に年間70時間から50時間(小学校高学年)に削減されたそうです.「がんばれ!図工の時間!!フォーラム」では,「図工の時間」の維持・拡大を目指し,図画工作科の授業時数を増やすことに賛成する署名運動を行っています.

recommendation | Posted by satohshinya at January 7, 2007 22:34 | TrackBack (0)