科学博物館@linz

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アルス・エレクトロニカは世界的に有名なメディア・アートのフェスティバル.1979年から開催されており,87年からは「アルス・エレクトロニカ賞」も制定され,日本人では坂本龍一+岩井俊雄が『Music Plays Images X Images Play Music』で受賞している.そして96年に「Ars Electronica Center(アルス・エレクトロニカ・センター)」がオープンした.

そんな背景を持つセンターだから期待していたのだが,実際は美術館というよりも,どちらかというと科学博物館の様相を呈したものだった.メディア・アートが元々そういった展示となる可能性を秘めていることは理解できるが,少しゲームとしてのフォーマットが強すぎる気がした.使い方をていねいに教えてくれるトレーナーたちの存在が,より子ども向けのイメージを強めている.本当はアルス・エレクトロニカで発表された作品をコレクションする美術館を想像していたのだが…….
フェスティバルからはじまりセンター建設に至る道筋が,いわゆる箱もの美術館とは一線を画すものとして評価されており,この建物も機能転用などではなく,Walter MichlとKlaus Leitnerというオーストリア建築家によって新築されたもののようだ.しかし,この建築がひどい代物であり,それがまた追い打ちを掛ける.正直言って何を考えて設計しているのかよくわからない.
もちろんZKMでも子ども向けのプログラムには力を入れており,メディア・アートに限らずあらゆる美術館において子どもを対象としたプログラムを持つことは必須であろう.しかし,それらの美術館も子ども専用に展示を行うわけではなく,展示を子ども向けにわかりやすく解説しているといった場合が多い.そうでなければチルドレン・ミュージアムまで専門化すべきだろう.
それよりも,ここで問題となっているのはメディア・アートの持つゲーム的側面だろうか? もう少していねいに考えなければいけないことかもしれない.例えば岩井俊雄の作品を思い出してみると,ほとんどゲームのようなものがほとんどだけれども,一方でアートと呼べるような部分を必ず持っている.「アルス・エレクトロニカ」の作品がアートになっていないというと大げさだけど,結果的に建物とインテリアデザインによる空間が異なったものに思わせているのかもしれない.もちろんアートだからと,いかにも大事なもののように扱う必要はないけれども,科学博物館のようなフォーマットに押し込んでしまうと,その作品が訴えかける可能性を狭めてしまうように思える.老若男女がゲームのように楽しむことで,メディア・テクノロジーへの造詣を深めることは結構なことだが,もう少し別な作品との関わり方があるのではないだろうかと思っただけのことである.
ちなみに今年のフェスティバルのチラシには小沢剛の『ベジタブル・ウェポン』が表紙に使われていて,テーマは「Simplicity」.なぜ小沢剛?

美術 | Posted by satohshinya at August 2, 2006 0:20


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